2 争点2(5年の期間経過をもって本件雇用契約関係が終了したといえるか否か)について
前記1のとおり、債権者と債務者間において雇用期間を5年とする雇用契約が成立したと認められるのであるが、この5年という期間の定めが、労働契約について1年を超える期間について締結してはならないと定めた労働基準法14条との関係で、どのように解すべきかが問題となる。なお、本件雇用契約は、「大学の教員等の任期に関する法律」(平成9年法律第82号、平成9年8月25日施行)が施行される前に締結されたものであるから、同法の適用がないことはいうまでもない。
労働基準法14条は、労働者が長期にわたって不当に拘束されることを防止する趣旨に出たものであることからすれば、前記本件雇用契約についてその雇用期間を5年と定めた部分は、同条及び同法13条に照らして期間1年に短縮され、右1年の期間経過後は、期間の定めのない雇用契約となると解するのが相当である。
債務者は、この点について、右5年の期間は債務者からの解雇が制限されるいわゆる身分保障期間として効力を有するから、5年の満了によって当然に雇用契約関係も終了する旨主張する。しかしながら、身分保障期間と雇用期間とは論理的に別個のものであるから、身分保障期間の満了をもって当然に雇用契約関係が終了すると解することはできない。したがって、債務者の右主張については採用しない。
以上からすれば、本件契約締結時から5年間が経過した平成12年3月31日をもって、債権者と債務者との間の本件雇用契約関係が終了したということはできず、債権者と債務者との雇用契約関係は、現在においても期間の定めのないものとして継続していると一応認められる。