答弁書(2003年6月2日付)

 

 

平成15年(ワ)第357号
 原   告  学校法人 津 曲 学 園
 被   告  八 尾 信 光 外1名

答 弁 書


                      平成15年6月2日


鹿児島地方裁判所 御 中

         鹿児島市照国町17番14号
        エクセレント照国301号(送達場所)
              電話番号 099−225−1441
   FAX番号 099−224−2892
   上記被告八尾信光代理人
   弁護士 増  田   博
         福岡市中央区大名2丁目10番43号 宮原ビル3階
               同     林      健一郎
         鹿児島市山下町9番31号 第一ボクエイビル
同 井 之 脇  寿  一
同市金生町4番4号 藤武ビル5階
               同     森     雅  美
          同市照国町17番14号 エクセレント照国301号
               同     小  堀  清  直

第1 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の被告八尾に対する請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。


第2 請求の原因に対する答弁

1 請求原因第一項の事実中、
1は認める。
2のうち、 「被告株式会社南日本新聞社は日刊新聞の発行等を日的とする株式会社である」こと、 「1881年『鹿児島新聞社』の設立に始まり、新聞の自由と編集権の確立を基本とする古い歴史を有する」こと、 「被告八尾が鹿児島国際大学の経済学部数授である」こと、 「2002年3月31日付で懲戒退職処分を受けた」こと、 「御庁民事第1部において原告を被告として外2名の教授らとともに解雇無効、地位確認の請求等を求めて提訴している」ことは認め、その余は否認する。
なお、被告八尾は現在国際大学経済学部教授であり、上記訴訟で裁判所に救済を求めている外2名の者も現在同じく経済学部教授である。
2 同第二項(その1)の事実は、被告南日本新聞社に関するものであるから、認否は同社のそれを援用する。
3(1) 同第二項(その2)の事実中、 1の「被告八尾が被告南日本新聞社が発行する2003年(平成15年)2月17日付南日本新聞の朝刊において『私の論議 かごしま新世紀』」 という欄に『商店街の再生− [ボラン・システム]活用を』と題した論稿を発表した」こと、「その際、被告八尾の肩書きとして南日本新聞に『鹿児島国際大学経済学部教授』と冒頭に記載された」ことは認め、その余は争う。
  (2) 同2は争う。
(3) 同3のうち、「原告が内容証明郵便で、被告両名に対し、謝罪等を求めた」こと、 「同書面は2月28日に配達されている」こと、「被告八尾からは何らの回答も得られなかった」こと、「原告が被告両名に対し、4月7日付の最終通告書を配達した」ことは認め、その余は争う。
(4) 同第三項については争う。


第3 被告八尾の主張

1 被告八尾は鹿児島国際大学経済学部教授として、南日本新聞朝刊の「私の論議−かごしま新世紀」という欄に投稿し、ボラン・システムの活用によって商店街と地域社会を再生することを提案した。ところが、原告は、被告八尾が同稿掲載に際し「鹿児島国際大学教授」の肩書きを用いたことをもって経歴詐称であると断定し、そればかりか、これを名誉毀損であるとして損害賠償と謝罪広告まで求めている。
しかし、原告が自己の肩書きを用いたことが何故に経歴詐称(原告は肩書詐称とも述べている)にあたるのか、どうして原告の名誉を毀損することになるのか全く理解できない。原告の本件主張は、正常な市民感覚から乖離した驚くべきものといわなければならない。
2 ところで、原告は、原告大学経済学部の公募採用人事で、教員選考委員会候補者10人の中から国立大学の教授を適任と判断して推薦したことに対し不適格者を推薦したなどと一方的に決めつけ、委員のうち2名の教授を懲戒解雇に処した。そればかりか、被告八尾が教授会の議長として選考委員会から推薦された候補者の採用の適否について十分な論議を経て最終的に採決したことを理由に、被告八尾も懲戒解雇に処した。これは、教授会の判断を一方的に誤りと断定して学者生命を絶つ恐怖ともいえる処分であり、これらの処分がいかに異常なものであるかは誰の目にも明らかであった。この原告人事の異常性は、本件提訴によってなお一層明白になったといってよい。
3 被告八尾は、懲戒解雇処分が違法なものであることを理由に、他の2名の教授らと共に御庁に地位保全の仮処分申請(平成14年(ヨ)第84号)をなした。御庁は平成14年9月30日、懲戒解雇すべき事実はなく、「本件懲戒解雇は無効である」として、被告八尾らが雇用契約上の権利を有する地位にあること等を認める仮処分決定をなした。
こうしたことから、被告八尾は裁判所により地位が保全されているもので、同人が社会生活において従来の職務上の肩書きを用いることはむしろ当然のことである。
原告も裁判所の決定に従い、被告八尾らに対し従来通りの職務を与え、その地位を尊重しなければならない義務がある。ところが、原告は未だに裁判所の決定を遵守しようとせず、平然とこれを犯し続けている。法秩序を守るべきは原告自身であるのにこれを蹂躙し、裁判所の決定に従って行動している被告八尾に対し慰謝料や謝罪広告を求めるなど、著しく信義に反する。
本件訴訟は明らかに訴権の濫用であり、直ちに棄却されるべきである。


第4 求釈明
1 被告八尾が、地位保全の仮処分決定に従って職務上の肩書きを用いることが何故に違法であるのか、その根拠を明らかにされたい。
2 裁判所の決定に従ったことが名誉毀損になる理由及び名誉の内容について明らかにされたい。