日本私大教連主催 第14回全国私立大学教育研究集会(2003.8/2〜4)

 

第14回全国私立大学教育研究集会についての報告

(レポート)「鹿児島三教授を支援する全国連絡会」事務局

(8月2日)午後2時より開会集会

開会集会は,日本私大教連委員長 高橋哲也氏の主催者あいさつ,メッセージ・祝電の紹介,争議組合の紹介から始まり,その後,基調報告「大学の自治に新たな息吹を」,記念講演「二つのグローバリゼーションと日本国憲法の現在」が行われた。
全国連絡会としては,集会開会前の午後1時より受付の横に小さな机を置き,また壁等に「不当解雇を絶対許しません」のポスターを貼って,参加者にパンフを配布(この日は,160部ほど参加者に配布)した。反応は,非常にいいものでした。

(8月3日)各セッションに分かれての討議

権利侵害問題を扱うセッション12(セッション名「大学教職員・組合の権利確立の取り組み」)のみ報告。

セッション12の参加者は延べ40名。
報告は7本。報告順は以下の通りでした(1件あたり,質問も含めて持ち時間は約1時間)。

1.富士大学解雇事件
2.東亜大学整理解雇事件
3.鹿児島国際大学懲戒解雇事件
4.秀明大学不当労働行為事件
5.湘南工科大学不当労働行為・解雇事件
6.大阪芸術大学不当労働行為(配転)事件
7.鈴鹿医療科学大学就業規則不利益変更事件

これら7本のうち,解雇など直接,権利侵害を受けている当事者の報告は,鹿児島国際大学と鈴鹿医療科学大学を除く,5大学(鈴鹿医大は教職員全員オープンキャンパスで参加不可)。したがって,当事者自らの報告がずらっと並んだということから,極めて迫力のある報告会であった。
また,報告者以外の参加者の中には,四天王寺仏教大学解雇事件の関係者と思われる方,また大垣女子短大解雇事件の当事者堀江氏等もおられた。

(各報告の概略は以下の通り)

1.富士大学解雇事件

7月15日の仮処分裁判において,全面勝利を勝ち取ったことを報告。
内容は仮処分判決全文を配布して,不当配転から解雇事件にいたる経緯,および仮処分判決の意義等を報告。

2.東亜大学整理解雇事件

2001年度から発生した希望退職募集,人権侵害(不当配転)の実態を報告。
2003年3月末,約20名の教員の退職勧奨とそれを拒否した4名に対する解雇事件が発生し,4月17日,解雇された4名は山口地裁に地位保全等を求めた仮処分申請。
報告では,整理解雇の4条件をめぐって学園側と組合側の主張を詳しく説明された。

3.鹿児島国際大学懲戒解雇事件
教員採用をめぐる事件の経緯,大学の学部新設,学則改定,人事選考手続きの再編等を説明し,これら学内改革ともからんで,懲戒解雇事件が発生したことを報告。

4.秀明大学不当労働行為事件
1999年に発生した組合員の不当解雇事件から始まり,2002年から今日まで続く,組合員に対する数々の不当労働行為(授業妨害,再解雇予告,自宅研修許可取り消し,授業はずし,長期海外出張命令,非常勤行為不許可等)を報告。2002年12月13日に,千葉地方労働委員会に不当労働行為の救済申立を行った。

5.湘南工科大学不当労働行為・解雇事件
1986年3月,教授会の教授昇格に際して組合3名が任命されなかったことから事件が発生。以後,不当労働行為救済のために,神奈川地労委→中労委→東京地裁→東京高裁→東京地裁の緊急命令→東京高裁の命令取消申立と係争が続いた。その間,2002年8月に,組合員2名が学園当局から懲戒解雇された。
すさまじい一連の事件経過が生々しく報告された。ただし,この経過を簡単に述べることは不可能。

6.大阪芸術大学不当労働行為(配転)事件
1998年を境に,理事長が変わり,大学教学への介入,組合を無視した就業規則変更等々が発生,これに批判的な教職員組合を弾圧してきた経緯を報告。
2003年新学期に,組合三役と主要執行委員に対し,教授会・学科会議を諮ることなく不当な配転を実施。また,団体交渉も拒否。現在,組合は地労委への申立,裁判準備を行うとともに,団体交渉で自主解決を目指して奮闘している。

7.鈴鹿医療科学大学就業規則不利益変更事件
この事件は,退職金支払において,学園が規程を変更(不利益変更)して減額支給した事案に対して,裁判で争われたものである。報告では,裁判で全面勝利した旨,および判決の意義について述べられた。

(セッション12の全体感想)

@現在,主に裁判で闘われている全国の権利侵害事件をかなり網羅した報告会であり,特に事件当事者からの報告であったので,非常にリアルで迫力があるものであった。
Aただし,全体としては,各大学の個別報告のみに終始し,中央組織である日本私大教連が,全国的な闘争を展開するうえでどのような課題があるのか等,議論の総括をすべきであった。この点,参加者は7時間ほどの報告を受けたが,最後の全体議論が全くなかったのは,非常に残念であった。

以上,関連事項のみ報告。