守山市の財産処分と市立女子高校の立命館無償譲渡の差し止めを求めて
(出版社より承諾を得て掲載)

『ねっとわーく京都』No.206(2006年3月)より

守山市の財産処分と市立女子高校の立命館無償譲渡の差し止めを求めて

「市の財産(守女)を考える会」
代表 西村 登志男

1 経過

 〇五年二月ニ一日、守山市の監査委員に対して、「市の財産(守女)を考える会」は、平安女学院(以下「平女」)、立命館、守山市の三者に関わる市の財産の無償譲渡および市の補助金等の処分について、その差し止めを求める監査請求をしました。昨年一二月一二日には意見陳述が行われ、本号が店頭に並ぶ時期には結果がでていると思います。

 昨年三月末、突然、「平女への補助金返還免除と守山市立守山女子高校(以下「守女」) の立命館への無償譲渡」などの守山市の財産処分計画が、朝日新聞によって明らかになりました。(註1)

(註1)
 (守山市の財産処分計画)ー藹(守山女子高校)が立命館に無償譲渡・移管され、立命館高校になる、∧申(平安女学院)は、市からの補助金二五・六億円の返還が免除され、県に返還すべき補助金六・二億円を市が肩代わりして支払う、J申は、平女守山キャンパスを守山市に寄付する(守山市が立命館に無償譲渡することを前提に)、ぜ藥鎧圓亙申守山キャンパスをそつくり立命館に無償譲渡し、立命館守山高校を移転、中学部を併設する、というもの。この市の財産処分の理由としては、守女の財政負担が五億円、入学生が減ってきて今後の経営・運営の展望がない、などでした。

 平女理事会は守山に開設して五年目の〇四年四月、入学生の減少による経営の困難を理由に、誘致した守山市や県と相談もなく一方的に守山キャンパスの閉鎖、高槻キャンパスへの移転を発表しました。
 この問題をめぐり、市議会においては市長の答弁を含めて平女の存続と平女学生への同情、平女理事会への不信が噴き出るなかで、補助金返還の訴訟も視野に入れて平女学生と保護者も参加した「公の協議の場」の設定を求める方向になっていました。平女の学生においては存続を求める署名活動などが市民の中にも広がり、学生の就学権保障を求めて、学生が平女理事会を訴えていました。そういった状況下での「市の財産処分」発表でした。
 高校全県一学区制を強行する滋賀県と守女の立命館移管(私学の滋賀県進出)−計画された時期、内容などすべてにおいて不自然、作為が感じられますし、あまりにタイミングが良すぎます。
 高教組の教師のみなさんや「守女の存続を求める会」からも情報をいただき、昨年四月三〇日、守山市民による「市の財産(守女)を考える会」を立ち上げました。
 「市議会で慎重な審議」を求める駅頭でのビラまきを始めると、市長と市議会が一気に仕掛けてきました。ビラまきから一週間にも満たない五月一二日、臨時市議会を開いて計画全面賛成(共産党議員二名反対) の決議を可決し、その五日後の一七日、守山市と立命館が「守女の立命館移管(無償譲渡)」の覚書に調印し、九月市議会で可決、一〇月に市の財産を処分しました。
 生徒や保護者からの守女存続の声に対しては一方的な説明に終始。それでも存続を求める守女の生徒は、署名を添えて市長や議員に要望し、駅でビラをまきました。すると突然、「政治生命をかけてこの財産処分をやり遂げる」と市長が権力をむき出しにしてきました。突然の計画発表と前後の状況、その後のプロセスの異常さなど、市の財産処分には不可解さと不自然さ、強権的、直線的な市長の対応がむき出しです。
 他方で覚書調印の前後に立命館と平女が密約、との情報も伝わってきました。私たちは市の財産処分には大きな闇の世界があり、市長と立命館、平女、(一部県会議員等も?)による不可解な動きがあるとの疑いを強め、監査請求に向けて動き出しました。
             ◇
 九月市議会が始まる前の八月、立命館では大きな変動が起きていました。突然立命館理事会から私に内容証明付きの文書が送られてきました。立命館教職員組合の機関誌や理事会文書が手に入り、調べていた密約の内容が「立命館から平女に一〇億円の支援」、密約の日が守山市と立命館の調印の前日であることもはっきりしました。(註2)

(註2)
(密約「立命館から平女への支援」)仝什漾∧唇遜学院が京丹後市に所有する郊外型セミナーハウスを七億円で購入し(時価五〇〇〇万円以下)、平安女学院を財政支援するとともに、本学(立命館)の学生援助施設を充実する(利用できる利便性なし)。→(購入を寄付に変更)∧唇遜学院の校舎の改修費用などに、無利子有担保一〇年期限で三億円を貸し付ける。J唇遜学院高校を提携校として、RU (立命館大学京都キャンパス、草津キャンパス) およびAPU(アジア太平洋大学=大分県)との間に三〇名の推薦枠を設定する。に楹悗、平安女学院へ教職員の派遣を行う。
 *カツコ内は筆者

 理事会は平女への一〇億円の支援が表面化したことで、その対応を巡って混乱した事態に陥っていること、私宛の理事会文書がそうした状況の中で出されたことも分かりました。
 さらに立命館は守女の移管を受けて高校、中学部を開設して事業を拡大することと平女を支援することが一連のことであり、私学である平女を支援することは当然のこととして開き直っています。平女高校から立命館系列の大学入試の推薦枠(三〇名) の設定や拡大は平女の経営を助け、立命館系列の大学生の確保にもなり両学校法の利益にかなうことも、理事会文書によってはっきりしました。
 守女の無償譲渡、移管について立命館は「守女に関する財政事情から守山市が維持していくのは困難であり、守女の同窓会や社会的な批判を考えると有力な私学に移管することがよいと、市長と市議会が判断して立命館に相談を持ちかけてきた。立命館は引き受けるためには経営上、一二〇〇名規模の土地と建物が必要と伝えたところ、守山市は『平女と相談するように』と立命館に頼んだ」と、経緯を説明しています。
 守山キャンパスの閉鎖や補助金の返還で立ち往生している事態の解決と立命館の学校用地の確保策を、市長が立命館と平女にお願いしたというのです。守山市(または市長)の了解のもとで、「一〇億円支援と平女守山キャンパスを立命館へ」という平女と立命館の取引関係ができあがったということになります。

2 財産処分の背景

 市当局においても市議会においても、守女に関して質疑や協議、検討もされた形跡はまったくありません。市議会文教委員会でも守女の財政問題を含めて何一つ協議されていませんし、審議会の設置もありません。一五、一六年度の議会に置いて市議会の議事録を詳細に見てもー言も触れられていません。平女守山キャンパス閉鎖を巡っての質疑応答だけであり、守山キャンパスの維持、平女学生の就学権保障への共感、平女(理事会、山岡理事長)への不信、平女と共にめざした街づくりへの質問が中心でした。
 市長は議員の指摘に同意しつつ平女学生の心情を理解し、その思いを受け止めることも含めて繰り返し 「公の協議の場」を設けていきたいと答弁していました。財産処分計画が明らかになる少し前の二月市議会では、引き続き平女守山キャンパスの存続を求め、訴訟も視野に入れて補助金の返還を求める旨の答弁をしています。平女学生の就学権訴訟に触れ「その思いが通じることになれば」と温かく好意的に見守る態度を示しています。その一方で数十億円の財源不足の見込み(〇六年度一二〇億円程度?)、施策の優先度、費用対効果の検証による抜本的な見直しを行うと答弁しています。「守女運営の見通しがたたない」ということは、作られたものと考えざるを得ません。
             ◇
 守山女子高校について、平成一四年度第一回議会において教育長が明快に答弁しています。
 「守女は県下ただ一つの公立女子高校として四三年の伝統を持ち、九六七一人の……卒業生はあらゆる分野で活躍……守山市の女子教育に対する熱意や姿勢を県内外に…広く認められ、守女は県内高等学校の枠組みの中、確固たる地位と重要な役割を果たしている。…今後ますます充実、発展させ、維持してまいりたい」 − これが守山市の立場、極めて明快です。
 守女の生徒数の減少、市内から通学する生徒が少ないとの問題が指摘されています。県内各地域に県立高校ができ、守山市内にも二つの県立高校が出来ました。私立高校も増えてきて、その上、交通機関の利便性は飛躍的に高まって京阪神を含めて通学圏は大きく広がりました。しかも今日の「少子化」の時代です。
 それでも依然として二〇〇名近い生徒が毎年入学し「減少」という状況ではありません。また守女は出発時点から広く県内各地から生徒が集まってきていましたし、寄宿舎もあった時代も経験しています。公立の女子高校としては県下に守女のみであり、守女が公立高校として守山町(後に市)が受け止めたのは、県下の女性が新しい時代、社会の中で自立した社会人として豊かな女性の能力の開花を「教育の町」守山市が高らかに国や県にうたいあげたからに他なりません。平成一一年度の守女の教育改革は新たな国際化、地域福祉の時代、女性の社会進出と男女共同参画社会を踏まえた、極めて先進的な教育の方向を提示しました。
 「守女を立命館に移管」を含む市の財産処分は、市の行政、市議会の諸状況からはまったく想定されそうにもない内容であり、策謀としか思えません。そして一つのイメージ、疑惑の構図が鮮明になってきました。

3 三者それぞれの思惑

 (申は補助金の返還の免除と立命館から一〇億円の支援を受けて、五四・六億円の負債は一〇億円になり、平女高校から立命館系列への三〇名の進学枠によって高校のグレードはアップ、長期的安定的に平女の経営を助け、平女の負債は限りなくゼロに近づく。
 ⇔命館は守女を無償譲渡で手に入れて立命館守山高校を開設、滋賀県進出の基盤を手に入れた上に平女キャンパス (五四・六億円相当)の無償譲渡を受けて高校を移転し中学部も開設する。さらに平女高校からの進学生三〇名を確保できる (立命館守山高校生の二〇%が立命館系列大学に進学=立命館の想定目標値)。このことで立命館は事業の拡大、大学の運営にとって大きな財産を手にします。
 守女は前述´△瞭阿の中で、利用されるかたちで廃校になります。
 ぜ藥鎧圓浪燭鮗蠅貌れたか。守山市は平女に補助した二五・六億円を失い、県が平女に出した補助金のうち六・二億円を肩代わりして県に支払い、守女と守山の教育の柱を失いました。何を手に入れたかといえば 「街づくり協定」 だけです。

4 まとめ

 これらをまとめてみると、ー藥鎧圓箸凌頼関係を破壊して平安キャンパスを閉鎖、高槻キャンパスに移転した平女に補助金の返還を免除し財政危機まで救って、平女の負債ゼロに向けて限りない支援の仕組みをつくる、学校法人 「立命館」 の滋賀県進出、事業拡大に全面的に協力する(市の財産を使って)、その結果、二つの学校法人と守山市は守女と平安の生徒・学生の教育の権利と学ぶ場、教職員の職場、先取に富んだ守山の教育の内実と背骨を侵害して奪い取ったといえます。
 これが立命館、平女、守山市長の三者によって仕組まれた内容です。平女の財政的な危機の救済と立命館の事業拡大のために、守山市の財産が全面的に利用されると、私たちは監査請求において指摘しました。近く出される「監査」というものが、ここまで及ぶものかどうか定かではありませんが、私たちの思いが通じるか否か、とても注目しています。

 西村登志男/守山市在住。山口県出身、64歳。滋賀県職員として福祉関連業務に就き、定年退職後も障害者作業所・就労支援等の活動に従事しながら、暮らす町守山の歴史や文化の掘り起こしに努めている。