西村登志男 他30名 様
守 監 委 第6号
平成18年1月25日
守山市監査委員 西村 利數
守山市監査委員 木村 勝吉

住民監査請求に係る監査の結果について(通知)

 地方自治法第242条第1項の規定に基づき、平成17年11月21日付けで提出された住民監査請求について、監査した結果は下記のとおりであったので、地方自治法第242条第4項の規定により通知します。

第1 請求の受付
1 請求人   住 所   (省略)
        氏 名   西村登志男 他30名
2 請求の受付日
          平成17年11月21日
3 請求の要旨(原文のとおり)
 「平安女学院大学」に係る補助金の返還に関する措置請求

 守山市長に対し、@学校法人平安女学院大学「びわこ守山キャンバス」の閉校・高槻キャンパスへの統合に伴い、守山市が平安女学院大学に支出した補助金を学校法人から守山市に返還させるための必要な措置、およびA滋賀県が平安女学院大学に支出した補助金を守山市が学校法人に肩代りして滋賀県に支払うことを停止するための必要な措置、B守山市が平安女学院大学から返還(寄付)を受けたキャンバスを学校法人立命館に無償で譲渡することを取り止める(譲渡契約を取り消す)ための必要な措置を講ずるよう勧告することを求める。

(1)監査請求の対象行為
 守山市は、学校法人平安女学院大学(以下「平女」という)の誘致、開設に対して覚え書きを交わし25.6億円(滋賀県は8億円)を補助した。守山市は、当初、平女の17年度閉校、高槻キャンパスへの統合に対して訴訟も辞さないと補助金の返達を求めてきた(市議会および市民に対して明確に表明していた)が、平成17年4月、学校法人立命館(以下「立命館」という)の守山市進出に伴い、@平女に支出した補助金の返還を求めないと表明した。これは、市の財産(公金の返還請求権)の一方的な放棄、市の損害であり、平女に対する補助金返還の免罪(公有財産の不当な民間法人への無償譲渡)であり、きわめて不当であり、かつ市長の裁量の範囲を大きく逸脱し、市の財産を一方的に損害させるものである。しかもそのうえ、A滋賀県が平女に支払った補助金を守山市が(平女に代わって)滋賀県に返還する事とした。これは何ら合理的理由もなく、不法な市の公金の支出である。さらにはB平女から返還(寄付)を受けた平女キャンバスを無償で立命館に譲渡することとした(11月1日譲渡した)。これは、市の財産を無償で処分することになるから違法である。

(2)補助金返還を求めない、市の財産の無償譲渡の不正・不当性
 守山市は、平女の閉校と高槻キャンパス統合に対し、びわこ守山キャンパスでの継続を求めるとともに、閉校の場合には補助金の返還を求めて訴訟も含めた対応を行う方針であった。ところが、守山市長は平成17年4月突然、@学校法人立命館に対し、守山市立守山女子高校(以下「守女」という)を無償で譲渡し、平女の土地建物を平女から無償譲渡(寄付)を受けた上でその土地建物を立命館に無償譲渡する、A平女に対して補助金の返還を求めない、B滋賀県が平女に補助した8億円のうち6億2千万円を平女に代わって守山市が滋賀県に返還すると表明した。守山市議会は、それを追認する「市会議員の決議」を可決、守山市は、Bに関しては8月23日の臨時市議会において、@及びAに関しては9月市議会において案件を審議、可決した(守女の土地・建物は無償貸与に変更、平女守山キャンパスは11月1日、立命館に無償譲渡された)。
 平女の土地建物は補助金返還に関する担保物件の一部に相当するものであり、補助金返還を担保するものである。平女が、その土地建物を守山市に寄付するという形式を介して、立命館に無償で譲渡することは、担保物件の消失となり、市の財産を無償で処分することになるから違法である。守山市はそれを是認し、その一方で、平女に対して守山市が補助した補助金の返還を求めることが極めて正当な措置であるにもかかわらず、平女にこの補助金の返選を求めないとした。これは市長の裁量の範囲を大きく逸脱し、守山市および市民の財産を一方的、不当に損害させる行為である。さらにまた、平女が返還すべき滋賀県からの補助金を、守山市が肩代りして滋賀県に返運するということは、肩代りする正当な理由を全く欠いた、不当、不法な守山市の財産の処理である。
 なお、平女には、びわこ守山キャンパス開設時にすでに21億円の借金があり、経営的に危機的な状況にあって、立命館は必要な財政支援や経営への助言などを行ってきている。平女のびわこ守山キャンパスを守山市を介して立命館に無償譲渡する事は、平女から立命館への(財政的な支援に対する)見返りであり、市の財産を一方的に平女から立命館に譲渡することである。守山市は、びわこ守山キャンパスを平女から無償譲渡(寄付)を受けて立命館に無償譲渡するという形で介在することによって、この違法な市の財産処分に正当性を付与せしめようと作為した。この作為と市の財産の処分は、不正、不当であり、市長の裁量の範囲を逸脱したものである。(補充資料として、資料1、2、3を添付)
(3) 求める措置内容

4 請求の要件審査
 本件請求については、平成17年11月21日付けで請求人より提出された請求書を収受し、要件審査に付し措置請求書の不備な箇所を補正させ、平成17年12月5日これを受理した。

第2 監査の実施
 本件の請求について、地方自治法第242条第4項の規定に基づき、次のように監査を実施した。

1 監査対象事項
 請求書及び陳述の内容から、本件の監査対象を次の4点とした。
(1)学校法人平安女学院の誘致のために支出した25億6,000万円の補助金について、高槻キャンバスへの統合に伴い補助金の返還を求めたのちに、土地、建物の寄附と引き換えに返還を求めないとしたのは、市長の裁量権の範囲を逸脱し、市の財産を不当に損害させる行為であることから、守山市長に対して学校法人平安女学院に補助金の返還を求めるための必要な措置を講じるよう勧告することを求めているものである。
(2)滋賀県が学校法人平安女学院に支払った補助金8億円のうちの6億2,000万円を守山市が学校法人平安女学院に代わって滋賀県に返還することは、合理的な理由がなく、不当、不法であることから、守山市長に対して滋賀県に支払うことを停止するための必要な措置を講じるよう勧告することを求めているものである。
(3)学校法人平安女学院から寄附を受けたびわ湖守山キャンパス跡地を学校法人立命館に無償譲渡することは、市の財産の無償処分で違法であり、市長の裁量権の範囲を逸脱していることから、守山市長に対して譲渡契約を取り消すための必要な措置を講じるよう勧告することを求めているものである。
(4)守山市がびわ湖守山キャンパス跡地を学校法人立命館に無償譲渡することは、学校法人立命館の学校法人平安女学院への財政的支援の見返りであることから、守山市長に対して学校法人双方の支援関係を調査し、明らかにするための必要な措置を講じるよう勧告することを求めているものである。

2 請求人の証拠の提出及び陳述
 地方自治法第242条第6項の規定に基づき、請求人に対して、平成17年12月12日に証拠の提出および陳述の機会を与えたところ、新たな証拠の提出があり、請求人代表が請求の趣旨を補足する意見陳述を行った。
【新たに提出された事実を証する書面】
  22 平安女学院大学の開設と守山市立守山女子高校との連携的な教育実践の模索(補足説明資料)
  23 平成17年6月発行「市の財産(守女)を考える会」チラシ(写し)
  24 平成17年11月発行「市の財産(守女)を考える会」チラシ(写し)

 守山市長に対し、(1)平女に対して守山市が補助した25、6億円の補助金の返還を求める、(2)平女が滋賀県に返還すべき6、2億円を、守山市が肩代りして滋賀県に返還しない、(3)平女から無償譲渡(寄付)を受けたびわこ守山キャンパスを立命館に無償譲渡しない(譲渡契約の取り消し)、(4)立命館と平女の財政的な支援関係を調査し明らかにする、そのための必要な措置を講ずるよう勧告することを求める。

【請求の要旨に添付された事実を証する書面】
1 平安女学院、立命館、守山市(市長)−その3者の動きと背景(補足説明資料)
2 お金とものの流れ(補足説明資料)
3 立命館当局の動きと3者による共同不法行為(補足説明資料)
4 No.86平成17年8月3日付け立命館大学教職員組合ニュース(写し)
5 平成17年9月4日付け学校法人立命館常任理事会資料(写し)
6−1 立命館の事業展開(補足説明資料):平成9年4月8日付け毎日新聞夕刊(抜粋)
6−2 平成9年2月3日発行の別府市長あて「無償譲渡についての市民投票」条例制定請求書(写し)
7−1「守山女子高等学校40周年記念誌(平成11年11月発行)」、「守山市誌教育編(平成9年3月刊行)」、「平成2年度守山市教育研究奨励事業報告(平成3年発行)」(抜粋)
7−2「守山市誌教育編(平成9年3月刊行)、「守山女子高等学校40周年記念誌(平成11年11月発行)」(抜粋)
8 平成17年7月28日付け平安女学院大学びわ湖守山キャンパス就学権確認訴訟を支援する大学人の会会議資料(写し)
9 平成17年2月1日発行広報もりやま市議会だより(写し)
10 平成17年9月1日、15日発行広報もりやま(写し)
11 平成17年5月26日付け滋賀報知新聞記事(写し)
12 平成17年5月12日付け毎日新聞記事(写し)
13 平成17年11月1日発行広報もりやま(写し)
14 平成17年6月15日、同年5月15日発行広報もりやま(写し)
15 平成17年6月1日発行広報もりやま(写し)
16 平成17年6月3日付け市の財産(守女)を考える会要望書(写し)
17 平成17年3月30日付け朝日新聞夕刊記事(写し)
18 平成17年5月12日付け朝刊(京都、朝日、読売)、同年5月13日付け朝刊(毎日、読売)、同年5月14日付け朝刊(毎日)新聞記事(写し)
19 平成17年7月4日付け毎日新聞記事(写し)
20 平成17年5月24日付け毎日新聞記事(写し)
21「守山女子高等学校40周年記念誌(平成11年11月発行)」(抜粋)
25 平成14年第1回守山市議会定例会会議録(第2日)(写し)
26 平成17年11月26日付け毎日新聞記事(写し)
27 平成17年12月9日付け京都新聞記事、同年7月9日付け毎日新聞記事(写し)
28 平成17年11月26日付け京都新聞記事(写し)

3 監査委員の監査
 平成17年12月12日から平成18年1月10日にわたり、総務部みらい政策課および総務部女子高校移管対策室から関係書類を取り寄せ、調査を実施し、平成17年12月27日には、地方自治法第199条第8項の規定に基づき、守山市助役、政策監および女子高校移管対策室長から個々に事情を聴取した。

第3 監査の結果

1 事実関係の確認
 監査は、上記記載の各監査対象事項を確認調査し、それに基づき、次のとおり事実および経過を認定した。
 なお、監査対象事項(4)についての学校法人立命館と学校法人平安女学院との支援関係は、守山女子高等学校の学校法人立命館への移管問題が起因していることから、守山女子高等学校に関する事実および経過を認定した。

(1) 監査対象事項(1)に係る事実と経過
ア 学校法人平安女学院大学びわ湖守山キャンパスの経緯
 学校法人平安女学院は、もと京都市に高等学校、中学校及び2年制短期大学等を設置されていたが、昭和62年4月、大阪府高槻市にある高槻キャンパスに短期 大学を移転し、平成12年4月、滋賀県守山市三宅町にびわ湖守山キャンバスとして平安女学院大学(4年制)現代文化学部(国際コミュニケーション学科、現代福祉学科)を設置された。さらに、平成14年4月には、高槻キャンパスに平安女学院大学生活環境学部(生活環境学科)を設置された。
 開学5年目の平成16年4月7日、学校法人平安女学院の常務理事会において、平成17年4月からびわ湖守山キャンパスを高槻キャンバスに統合することを決定し、翌日、守山市に理事長より申し出がなされている。

イ 学校法人平安女学院大学びわ湖守山キャンパスの施設整備費
 学校法人平安女学院大学びわ湖守山キャンパスの施設整備に要した経費は、大学用地取得造成事業として用地取得費17億931万4,737円、補償費2,027万3,337円、工事費1億9,991万3,600円、諸費3,887万34円、事務費2,114万2,933円で計19億8,951万4,641円、また施設等整備事業として建物22億6,475万4,871円、外構工事4,892万129円、設計監理料7,980万円、備品3億9,000万円、図書1億円で計28億8,347万5千円、総額48億7,298万9,641円となっている。

ウ 学校法人に対して補助をできる旨の法律の規定
 私立学校法(昭和24年法律第270号)第59条には、国又は地方公共団体は、教育の振興上必要があると認める場合には、別に法律で定めるところにより、学校法人に対し、私立学校教育に閲し必要な助成をすることができる旨規定されている。
 また、上記規定を受けて、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)第10条には、国又は地方公共団体は、学校法人に対し、補助金を支出し、又は通常の条件よりも有利な条件で、貸付金をし、その他の財産を譲渡し、若しくは貸し付けることができる旨規定されている。
 これらの規定により、学校法人平安女学院に対して守山市が補助金を交付することができることについて、その法的根拠が示されている。

エ 守山市平安女学院大学創設費補助金の概要
 守山市は、学校法人平安女学院と平成9年8月8日に覚書を締結し、続いて同年12月1日に基本協定を締結している。基本協定書第1条では、学校法人平安女学院と守山市が協力して、学校法人平安女学院が予定する大学の早期設置を積極的に推進し、もって地域の振興と教育文化の向上を図ることを目的とするとされ、第6条では、守山市は、学校法人平安女学院に対して、大学の用地、校舎、施設設備等の創設費として、別に協議して定めるところにより補助するとなっている。
 この基本協定書第6条の規定に基づき、学校法人平安女学院と守山市は、平成10年1月 23日に平安女学院大学(仮称)創設費補助金交付に関する協定を締結している。
 守山市が学校法人平安女学院に交付している守山市平安女学院大学創設費補助金については、守山市補助金等交付規則(昭和53年守山市規則第1号、以下「交付規則」という。)の規定に基づく守山市平安女学院大学創設費補助金交付要綱(平成10年1月23日制定、以下「補助要綱」という。)に定められている。
 補助要綱によれば、平安女学院大学創設費補助金は、大学用地取得造成事業および大学施設整備事業を補助の対象とし、その補助額については、予算に定める額の範囲内で交付するとされている。
 更に、守山市と学校法人平安女学院は、平成12年3月15日に大学を核としたまちづくりを推進するためのまちづくり連携協定書を締結している。

オ 学校法人平安女学院への助成
 守山市の学校法人平安女学院への補助金の交付は、大学用地取得造成事業について平成10年1月23日付けで18億3,600万円の交付決定を通知し、その後、平成11年3月19日付けで18億1,537万7千円の変更交付決定を通知している。また、大学施設整備事業について、平成10年10月23日付けで7億5,000万円の交付決定を通知している。
 支出状況は、大学用地取得造成事業が、平成9年度に13億5,100万円、平成10年度に4億6,437万7千円(繰越明許分1億800万円を含む)、大学施設整備事業が、平成10年度に1億2,200万円、平成11年度に6億2,800万円がそれぞれ交付されている。

力 学校法人平安女学院に対する法的規制等

条  項
条 文
守山市補助金等交付規則第14条第1項 市長は、補助事業者等が、補助金等を他の用途に使用し、その他補助事業等に関して補助金の交付の決定内容またはこれに付した条件に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取消すことができる
同交付規則第15条第1項 市長は、補助金等の交付の決定を取消した場合において、補助事業等の当該取消しに係る部分に閲し、既に補助金等が交付されているときは、期限を定めて当該補助金等の返還を命ずるものとする
守山市平安女学院大学創設費補助金交付要綱第10条 規則第14条の規定は、補助対象事業について交付すべき補助金の額の確定があった後においても適用があるものとする
同交付要綱第12条 学校法人は、補助対象事業により取得し、または効用の増加した財産を、市長の承認を受けないで、補助金の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、または担保に供してはならない

キ 議会での発言要旨

年 月 日
発言者
定例会・全員協議会別
発 言 内 容
平成16年4月20日
市長
全員協議会 平安女学院大学守山キャンバスの高槻統合の申し出を受け、厳しい状況だが、財産保全とあとをどうするか指示している
平成16年6月3日
市長
平成16年第2回守山市議会定例会第1日提案理由の説明 大学機能が残るよう滋賀県とも連携し て粘り強く大学に対して要請をしていく
平成16年6月11日
市長
平成16年第2回守山市議会定例会答弁 法的な手続きも背景に置きつつ、大学との協議の場を積極的に設定して、粘り強く大学の存続を要請していく
平成16年6月22日
市長
全員協議会 財産保全や補助金の返遠を求める状態にないので、双方が協議の場を持つよう法に訴えていく
平成16年9月10日
市長
平成16年第3回守山市議会定例会第1日提案理由の説明 折衝を重ね、協議の場を設けるなかでよりよい解決策を見出していく
平成16年9月24日
市長
平成16年第3回守山市議会定例会答弁 今後、十分な説明がないままに、キヤンパスが統合されることになると補助金の返還を求めていくべきと考えている
平成16年10月5日
政策監
全員協議会 4月以降、補助金の返還を求めるという姿勢を示すことが抑止力になる
平成16年12月3日
市長
平成16年第4回守山市議会定例会第1日提案理由の説明 大学の存続を第一としつつも、今後の状況をしっかり見極め誤りのない対応に努めていく
平成16年12月14日
市長
平成16年第4回守山市議会定例会答弁 一定の要件が備わった段階で行動を起こすと考えている
平成17年3月1日
市長
平成17年第1回守山市議会定例会第1日提案理由の説明 このままでは補助金の返還を求める手続きに踏み込まざるを得ない
平成17年3月11日
市長
平成17年第1回守山市議会定例会答弁 補助金の取り扱いについて適切な措置を進めることが責務である
平成17年3月31日
政策監
全員協議会 守山女子高校の学校法人立命館への移管に関わって守山市の立命館守山高校の校地確保の協力方法として、平安女学院大学びわ湖守山キャンバス跡地が守山市の所有になれば、学校法人立命館に無償譲渡する。それは学校法人平安女学院からの補助金に代わる代物弁済返納
平成17年5月12日
市長
平成17年第2回守山市議会臨時会提案理由の説明 守山女子高校の学校法人立命館への移管に関わって、去る3月末に学校法人平安女学院から、立命館が利用されるなら、びわ湖守山キャンパスの土地・建物を守山市に無償譲渡し、補助金返還にかえる意向であると学校法人立命館などを通じて聞き及び、このことは補助金返還に見合う効果がある
平成17年5月20日
政策監
全員協議会 平安女学院大学びわ湖守山キャンパス跡地の財産価値は、滋賀県と守山市の補助金相当額を超えている
平成17年6月6日
市長
平成17年第3回守山市議会定例会提案理由の説明 守山女子高校の学校法人立命館への移管に関わって、去る5月17日に、学校法人平安女学院理事長から、補助金返還に替え、びわ湖守山キャンパスの土地と建物を一式、守山市に無償譲渡する旨の申し出を受けた
平成17年6月24
女子高校移管対策室長
全員協議会 平安女学院大学びわ湖守山キャンパス跡地の寄附は、無償譲渡で議決案件でない
平成17年8月17日
女子高校移管対策室長
全員協議会 平安女学院大学びわ湖守山キャンバスの土地・建物の土地建物鑑定評価額が約33億円である

ク 事実経過

年 月 日
経        過
平成16年4月8日 学校法人平安女学院の事務長、総務課長が来庁し、2004年4月8日付け「学院改革説明会の開催について」の文書にて、びわ湖守山キャンパスの高槻キャンパス統合を通知
平成16年5月19日 学校法人平安女学院に対し、大学創設費補助金が高槻キャンパス統合により学園機能がなくなり基本協定の目的が達成できなくなるので補助金返還を視野に入れた協議が必要である旨の申出書を提出
平成16年5月31日 学校法人平安女学院から、平成16年5月19日付け申出書に対し、学園機能が完全になくならないので、補助金返還の意思がない旨の回答が提出
平成16年6月24日 守み第128号で守山市から学校法人平安女学院へ、平安女学院大学びわ湖守山キャンバスに対する考え方(内容:びわ湖守山キャンパス存続、補助金の交付決定取消し示唆、財産の処分制限、協議の場の設定)を通知
平成16年7月21日 守み第146号で守山市から学校法人平安女学院へ、「守山キャンパスの存続を守ろう会」の署名簿提出を受け、平安女学院大学びわ湖守山キャンパスの存続を要請
平成17年1月6日 守み政第3号で守山市から学校法人平安女学院へ、チラシの一方的な新聞折込みへの抗議とあわせ、平安女学院大学びわ湖守山キャンパスに対する考え方(内容:びわ潮守山キャンバス存続、補助金の交付決定取消し示唆、財産の処分制限)を通知
平成17年3月15日 守山市において、びわ湖守山キャンパスの土地・建物の不動産鑑定(評価時点平成17年3月1日)を株式会社夏原不動産鑑定所に依頼
平成17年5月17日 平女院法発第0501号で学校法人平安女学院から守山市へ平安女学院大学びわ湖守山キャンバスの無償譲渡の申し出(内容:守山市平安女学院大学創設費補助金の返還免除)が提出
平成17年8月24日 守女移第5号で守山市から学校法人平安女学院へ平安女学院大学びわ湖守山キャンバスにかかる申し出の承諾(内容:一括無償譲渡、滋賀県の債務継承、守山市平安女学院大学創設費補助金の返還免除)を通知
平成17年8月24日 平女院法発第 05050号で学校法人平安女学院から守山市へ寄付申出書(内容:土地4筆38,554平方メートル、建物7棟、設備一式)が提出
平成17年8月24日 学校法人平安女学院から守山市へ土地、建物の所有権が移転
平成17年8月30日 施設引継ぎのための検査を実施
平成17年8月31日 引渡し

ケ 不動産鑑定評価の経過

(ア)平成17年3月15日付けで、近隣の金森区画整理組合並びに市道道路改良事業で鑑定実績のある株式会社夏原不動産鑑定所に土地および建物の不動産鑑定の依頼を行っている。
(イ)平成17年3月31日付け鑑第05112号で、株式会社夏原不動産鑑定所から鑑定評価書を徴取している。
(ウ)鑑定評価書によると、土地11億1,035万5千円(平方メートルあたり28,800円)、建物21億9,545万3千円となっている。

(2) 監査対象事項(2)に係る事実と経過

ア 学校法人に対して補助をできる旨の法律の規定
 上記の私立学校法、私立学校振興助成法の規定により、学校法人平安女学院に対して滋賀県が補助金を交付することができることについて、その法的根拠が示されている。

イ 滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金の概要
 滋賀県が学校法人平安女学院に交付している滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金については、滋賀県補助金等交付規則(昭和48年滋賀県規則第9号、以下「交付規則」という。)の規定に基づく滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金交付要綱(以下「補助要綱」という。)に定められている。
 補助要綱によれば、滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金は、施設設備の整備事業を補助の対象とし、その補助額については、補助対象経費の3分の1以内の額とし、予算の範囲内で交付するとされている。

ウ 学校法人平安女学院への助成
 滋賀県の学校法人平安女学院への補助金の交付は、平成10年9月30日付けで8億円の交付決定を通知している。
 支出状況は、平成10年度に1億3,000万円、平成11年度に6億7,000万円がそれぞれ交付されている。


エ 学校法人平安女学院に対する法的規制等

条  項
条         文
滋賀県補助金等交付規則第16条第1項 知事は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金の交付の決定の内容又はこれに付した条件その他の法令等またはこれに基く知事の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる
同交付規則第17条第1項 知事は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の当該取消に係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、期限を定めて、当該補助金等の返還を命ずるものとする
同交付規則第19条 補助事業者等は、補助事業により取得し、または効用の増加した財産を、知事の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、または担保に供してはならない。ただし、知事が別に定める場合は、この限りでない
平成10年9月30日付け滋地振第378号の交付決定通知の交付条件(以下、「交付条件」という。)3(4) 補助事業により、取得したまたは効用の増加した財産については、処分制限期間(「補助事業者等が補助事業等により取得した財産のうち処分を制限する財産及び補助事業等により取得した財産の処分制限期間」(昭和60年文部省告示第28号)に規定する処分制限期間とする。)を経過するまで、この補助金の交付目的に反して使用し、譲渡し、貸し付けまたは担保に供しようとするときは、知事の承認を得なければならない
交付条件3(5) 知事の承認を受けて財産を処分することにより収入があった場合には、その収入の全部または一部を県に納付させることがある
交付条件3(6) 事業に係る収入および支出を明らかにした帳簿を備え、当該収入および支出について証拠書類を整理し、かつ当該帳簿および証拠書類を事業完了後5年間保管しておかなければならない

オ 議会手続きの経過

(ア)滋賀県への納付金については、平成17年第5回守山市議会臨時会(議案第60号「平成17年度守山市一般会計補正予算(第5号)」)に平成17年8月23日提出し、補正額6億1,747万9千円の同日議決を得ている。

(イ)議会での発言要旨


年 月 日
発言者
定例会・全員協議会別
発 言 内 容
平成17年3月31日
政策監
全員協議会 守山女子高校の学校法人立命館への移管に関わって平安女学院大学びわ湖守山キャンパス跡地が守山市に一括無償譲渡し、滋賀県の補助金相当分の返達債務を守山市が継承する
平成17年5月12日
市長
平成17年第2回守山市議会疎時会提案理由の説明 守山女子高校の学校法人立命館への移管に関わって、滋賀県は学校法人平安女学院の債務を守山市が継承することを前提に学校法人平安女学院の申し出を承認する考えが示された
平成17年5月20日
政策監
全員協議会 平安女学院大学びわ湖守山キャンパス跡地の財産価値は、滋賀県と守山市の補助金相当額を超えている
平成17年6月6日
市長
平成17年第3回守山市議会定例会提案理由の説明 守山女子高校の学校法人立命館への移管に関わって、滋賀県の債務を負担することに議会の承認を得たのちに学校法人平安女学院の申し出を承諾していく
平成17年6月16日
市長
平成17年第3回守山市議会定例会答弁 県の補助金は、立命館大学を誘致することになっても返還の必要性がなくなるものでない
平成17年6月24日
女子高校移管対策室長
全員協議会 直接の債務者は、学校法人平安女学院であるが、学校法人立命館を含め三者協議で守山市が債務を引き受けすることになり、さらに滋賀県の補助金相当分が減額なるよう滋賀県に対し努力していく
平成17年8月17日
女子高校移管対策室長
全員協議会 債務を引き受ける理由は、県補助金の対象としている財産を含め、平安女学院大学びわ湖守山キャンパスの土地・建物を一括で無償譲渡を受けるためである

カ 事実経過

年 月 日
経        過
平成17年5月17日 平女院法発第0502号で学校法人平安女学院から滋賀県へ滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金に係る財産処分について申請(内容:守山市へ一括無償譲渡)が提出
平成17年8月10日 滋企調第483号で滋賀県から学校法人平安女学院へ滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金に係る財産処分の承認(内容:処分制限財産の残存価額に対する補助金相当額6億1,747万8,493円)が通知
平成17年8月23日 学校法人平安女学院、守山市連名から滋賀県へ滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金に係る財産処分に伴う処分制限財産の残存価額に対する補助金相当額6億1,747万8,493円の債務引受の申出書が提出
平成17年8月24日 滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金に係る財産処分承認における債務引受に関する協定(守山市が滋賀県に対する学校法人平安女学院の納付金6億1,747万8,493円の債務引受)を滋賀県、学校法人平安女学院及び守山市の三者で締結
平成17年8月24日 滋企調第513号で滋賀県から学校法人平安女学院、守山市に滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金に係る財産処分に伴う処分制限財産の残存価額に対する補助金相当額6億1,747万8,493円の債務引受の承諾書が提出

キ 監査の要否

 地方自治法第242条第1項が、財務会計行為について、「当該行為がなされることが相当の確実性をもって予測される場合」には、これを対象として監査請求をすることができるとしている。本件の補助金相当額6億1,747万8,493円の納付金については、平成17年度一般会計補正予算の調整、守山市議会臨時会への提出、同市議会の議決の手続きが行われ、守山市長に本件納付金の支出権限が付与された後、平成17年8月24日、滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金に係る財産処分承認における債務引受に関する協定に滋賀県、学校法人平安女学院及び守山市の三者で調印したことが認められる。協定書によると納付期限を平成18年3月31日と定めていることから、協定の調印時点において、本件納付金の支出が相当の確実性をもって予測されるに至ったと解するのが相当である。

(3) 監査対象事項(3)に係る事実と経過

ア 学校法人立命館の概要
 立命館は、近代日本の代表的国際人である学祖西園寺公望が、激動の明治維新の最中、1869(明治2)年に、20歳で私塾「立命館」を京都御苑に創設したことに始まるとされている。西園寺は、「自由主義」と「国際主義」を標模し、日本が世界の一員として十全な役割を発揮することをめざし、そして人類が歴史的に創りあげ継承してきた普遍的な価値をわが国に根付かせることを生涯の課題とされた。
 1900(明治33)年、西園寺の精神を引き継いだ中川小十郎が、勤労者のための夜学校「京都法政学校」を開き、1913(大正2)年に、西園寺の許諾を得て「私立立命館大学」と改称された。戦後は、戦乱と戦火に苦しんだ国民の総意としての「平和と民主主義」を教学理念として掲げ、現在に至っている。学校法人立命館のもと、北海道、滋賀、、京都、大分にキャンパスをもち、二大学、三附属高校、三附属中学校、学生・生徒総数4万3千人を擁する、個性と国際性の豊かな水準の高い総合学園となっている。卒業生は、立命館大学約26万人、立命館アジア大平洋大学485人、各附属校では7万4千人であるとされている。

イ 学校法人に対して譲渡できる旨の法律の規定
 私立学校振興助成法第10条には、国又は地方公共団体は、学校法人に対し、補助金を支出し、又は通常の条件よりも有利な条件で、貸付金をし、その他の財産を譲渡し、若しくは貸し付けることができる旨規定されている。

ウ 議会手続きの法律の規定
 地方自治法第96条第1項第6号には、議決事項として、「条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること」とされている。
 また、地方自治法第237条第2項には、「第238条の4第1項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない」とされている。

エ 議会手続きの経過
(ア)平成17年5月12日平成17年第2回守山市議会臨時会では、守山女子高校の学校法人立命館への移管に関し、びわ湖守山キャンバス跡地の利用が教育の場として継承されるなら、補助金問題をはじめとする諸課題の解決や地権者の意向に応えるとして、守山女子高校の学校法人立命館への移管に賛同の決議がなされている。

(イ)地方自治法第237条第2項及び同法第96条第1項の規定に基づき、平成17年第6回守山市議会定例会(議案第 86号「財産の無償譲渡につき議決を求めることについて」)に平成17年9月16日提出し、同年10月13日議決を得ている。

(ウ)議会での発言要旨


年 月 日
発言者
定例会・全員協議会別
発 言 内 容
平成17年3月31日
政策監
全員協議会 守山女子高校の学校法人立命館への移管に関わって守山市の立命館守山高校の校地確保の協力方法として、平安女学院大学びわ湖守山キャンパス跡地が守山市の所有になれば、学校法人立命館に無償譲渡する
平成17年5月12日
市長
平成17年第2回守山市議会臨時会提案理由の説明 守山女子高校の学校法人立命館への移管に関わって、びわ湖守山キャンパスが本来の学校用地として利用され、大学を含めた学校教育活動が展開されることがまちの発展に寄与する
平成17年6月6日
市長
平成17年第3回守山市議会定例会提案理由の説明 守山女子高校の学校法人立命館への移管に関わって、びわ湖守山キャンパスが守山市の財産となった場合に、改めて立命館高等学校の校地、校舎として活用していただく計画をしている
平成17年6月24日
女子高校移管対策室長
全員協議会 学校法人立命館への無償譲渡は、普通財産の譲渡になるので議決案件である
平成17年8月17日
市長
全員協議会 平安女学院大学びわ湖守山キャンパス跡地が、補助金返達の裁判で放置されるよりも、学校法人立命館に代わることで、跡地が教育施設として継続されることが判断基準であった

オ 事実経過
年 月 日
経        過
平成17年5月17日 覚書(内容:守山女子高校の校地の無償譲渡、平安女学院大学びわ湖守山キャンパスが守山市に移転になった場合に無償譲渡はか)を守山市と学校法人立命館で締結
平成17年9月1日 覚書の一部変更の覚書(内容:守山女子高校の校地の無償貸与、平安女学院大学びわ湖守山キャンバスの無償譲渡ほか)を守山市と学校法人立命館で締結
平成17年9月1日 土地・建物譲渡(仮)契約書(内容:土地4筆38,554平方メートル、建物7棟、設備一式)を守山市と学校法人立命館で締結
平成17年9月14日 覚書に基づき、まちづくり協定書(守山市のまちづくりの発展に寄与する諸事業)を守山市と学校法人立命館で締結
平成17年10月13日 土地・建物譲渡(仮)契約書(内容:土地4筆38,554Tポ、建物7棟、設備一式)が議会議決をもって本契約となる
平成17年11月1日 守山市から学校法人立命館へ土地、建物の所有権が移転
平成17年11月1日 学校法人立命館から守山市に施設引渡し書が交わされ、学校法人立命館から守山市に受領書が提出

(4) 監査対象事項(4)に係る事実と経過

ア 守山女子高等学校への意見の事実経過

経        過
平成8年第1回守山市議会定例会 守山市在住の生徒数が4分の1を割っている現状から市の財政負担が大きく抱えていくだけの実力があるのか、広く多面から検討を深めるべきとの質問に対し、当時の甲斐道清市長が「今後、議会を含め、関係者の方々と協議を重ねさせていただくなかで方策を定めていく」と答弁されている
平成10年4月28日付け 平成10年2月5日、守山市立守山女子高等学校教育改善審議会に諮問し、守山市立守山女子高等学校の教育改善について(答申)が出され、「市立高等学校として経営を継続していくことについて了承します」とされている
平成14年第1回守山市議会定例会 守山市からの生徒数は151人で、全校生徒数の4分の1にとどまっていることから守山市が多額の負担をして高校経営を続ける必要があるのかとの質問に対し、教育長が「市内在住生徒の増加への取り組みや定員確保に努めていく」と答弁されている
平成15年3月守山女子高校の将来構想プロジェクトチーム最終報告書 「引き続き5クラスの学校規模を継続し、当該規模の適正な教育環境を整備する」とされている
平成15年12月25日付け守山市事務事業外部評価委員会の事務事業外部評価に関する報告書 守山女子高校・学校総務管理事業への意見として、「なぜ、市として女子高を設置する必要があるのか、市民に理解が得られるような説明が必要である。少子化が進み、財源も不足していく中で、維持する必要があるとは思えない」とされている
平成17年6月発行の教育要覧 守山市教育基本方針では、「時代の要請に応える特色ある学校経営の充実に努め、社会の変化に主体的に対応できる自己教育力の育成を目指します」とされている

イ 守山女子高等学校の生徒および経費の推移
  平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度
定員充足率 98.7% 97.8% 95.7% 94.5%
全入学生徒に占める市内生徒の割合 20.0% 24.5% 25.0% 21.5%
経費における一般財源負担額 4億1930万円 4億628万9000円 3億9962万3000円
-
一般会計に占める女子高校の経費 2.3% 2.1% 2.0% -
※ 全入学生徒に占める市内生徒の割合は昭和45年以降では、平成9年度が38.2%で最高、昭和45年度が9.2%で最低となっている。

ウ 教育委員会手続きの経過

年 月 日
定例会・臨時会別
内      容
平成17年4月28日 平成17年第6回定例会 報告事項「守山市立守山女子高等学校を学校法人立命館へ移管することについて」を提出
平成17年5月10日 平成17年第7回定例会 議第12号「守山市立守山女子高等学校の移管にかかる覚書を締結されることについて」を提出し、同日議決
平成17年5月24日 平成17年第8回定例会 報告事項「平成18年度守山市立守山女子高等学校の生徒募集の停止について」を提出
平成17年6月28日 平成17年第9回定例会 報告事項「守山市立守山女子高等学校の移管に伴う設置者変更認可申請および審議概要について」を提出
平成17年7月28日 平成17年第10回定例会 議第21号「守山市議会の議決を経るべき議案につき意見を申し出ることについて」に高等学校を削除するための守山市立学校の設置に関する条例の一部を改正する条例案を提出し、同日議決
平成17年10月25日 平成17年第15回定例会 議第27号「専決処分につき承認を求めることについて」に守山市立守山女子高等学校の教育財産の処分の引き継ぐことの専決処分を提出し、同日議決

エ 議会手続きの経過
年 月 日 
経        過
平成17年10月13日 平成17年第6回守山市議会定例会(議案第70号「守山市立学校の設置に関する条例の一部を改正する条例案」)に平成17年9月16日提出し、議決
平成17年10月13日 地方自治法第237条第2項および同法第96条第1項の規定に基づき、平成17年第6回守山市議会定例会(議案第89号「財産の無償貸付けにつき議決を求めることについて」)に提出し、同日議決

オ 守山女子高校の学校移管にかかる経過
年 月 日 
経        過
平成17年5月30日 旧設置者守山市教育委員会、新設置者学校法人立命館から滋賀県知事、滋賀県教育委員会宛に、設置者変更認可申請書が提出
平成17年6月16日 県私立学校審議会において「認可を適当とし概ね了解する」とされる
平成17年10月12日 土地・建物貸付(仮)契約書(内容:土地3輩24,747平方メートル、建物14棟、設備一式)が守山市と学校法人立命館で締結
平成17年10月17日 県私立学校審議会が移管を認可
平成17年10月28日 県および県教育委員会が設置者変更等を認可

2 関係職員の説明

 監査対象事項について、請求人および関係職員の陳述等から次の事実を確認した。

(1) 監査対象事項(1)について
 請求人は、「平安女学院大学に支出した補助金の債権を放棄することは、市長の裁量権の範囲を逸脱する」と主張するが、関係職員は、「市長の裁量権の中で、移管計画を提案し、このことを実現するため、地方自治法に基づき所要の議案を市議会に提案し、審議を経て議決を得ているので何ら不当性、違法性がなく、裁量権を超えるとすることはあたらない」としている。
 請求人は、「返還請求を求めないことは、市の財産を一方的に損害させる」と主張するが、関係職員は、「返遼請求訴訟についても十分に検討した。ただ、学校法人の財産保全手続をとるためには、極めて高額の供託金が必要であること、裁判が長期化することによるキャンバス跡地の荒廃、学校法人の倒産と市の社会的責任の懸念、民間への売却による開発、資金難による全額返還の期待薄などを勘案すると無償譲渡により補助金返還と同等以上の効果が得られた」としている。

(2) 監査対象事項(2)について
 請求人は、「合理的正当な理由がなく、不当、不法な公金の支出である」と主張するが、関係職員は、「滋賀県への納付金債務は建物に対する補助に係るもので、守山市が建物を含めた跡地全部の寄附を受けるため、この債務を学校法人平安女学院から継承したものである。市議会で歳出予算、県議会で歳入予算の補正予算の議決を得、滋賀県、学校法人平安女学院、守山市の三者で協定を締結しているので、地方自治法に基づく所要の手続きを踏んでの処理であり違法性はない」としている。

(3) 監査対象事項(3)について
 請求人は、「財産の無償処分は違法である」と主張するが、関係職員は、「地方自治法上の手続きに基づき市議会の議決を得ているので違法でない」としている。
請求人は、「財産の処分は、不正、不当であり、市長の裁量の範囲を逸脱している」と主張するが、関係職員は、「市長の裁量権の中で立案したもので」直ちに執行していれば裁量権の逸脱と批難されるが、地方自治法に基づき市議会で財産の無償譲渡についての議決を得て、所要の手続きを踏んで民主的に進めており裁量権を逸脱したものでない」としている。

(4) 監査対象事項(4)について
 請求人は、「びわ湖守山キャンパスを学校法人平安女学院から無償譲渡を受けて学校法人立命館に無償譲渡するのは、守山市が介在した作為で、不正、不当である」と主張するが、関係職員は、「三者が揃ったのは、平成17年5月17日の学校法人立命館との覚書の締結の日のみで、ほかには一切ない。学校法人平安女学院と学校法人立命館のことは民民間のことで、知り得る立場にない」としている。

第4 監査委員の判断

 監査結果に基づく事実認定を踏まえ、請求人の主張に対し、慎重かつ厳正に合議した結果、一致した結論は次のとおりである。

1 監査対象事項(1)について

 守山市補助金等交付規則第14条第1項に「市長は、補助事業者等が、補助金等を他の用途に使用し、その他補助事業等に関して補助金の交付の決定内容またはこれに付した条件に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取消すことができる」とあるが、一般に長は、事由が認められるときであっても、必ず当該交付決定を取り消さなければならないものではなく、補助目的達成の可否について補助関係の全過程を通じて総合的に判定し、補助金等交付の所期の目的を達成することが困難となったと認められるときに初めてその取消権を行使すべきものと解するのが相当でる(名古屋高裁平成5年2月23日判決、判例タイムズ859号260頁、小滝敏之「全訂版・補助金適正化法解説」240頁等参照。)。そこで、学校法人平安女学院に対する補助金等の交付決定に守山市補助金等交付規則第14条第1項所定のような事由が認められるときであっても、長は、直ちに当該交付決定を取り消し、補助金等の返還を求めるのではなく、学校法人平安女学院の自主的判断に委ねることも選択肢であったと解することができる。

 本件請求は、補助金返還請求権の行使を怠っていることの違法確認である以上、要件として、同請求権を具体的に発生させる事実の存在が認められなければならないところ、補助金等交付決定が取り消されたものではなく、補助金返還請求権が未発生であり、補助金返還請求権が存しないことから返還を求めるための措置としては、請求要件を欠いているため不適法である。

 しかしながら、請求人は取消権を知り得る立場になく、広義に解釈すれば、取消権および返還請求権を不可分一体とみなし、補助金返還請求権があるとも解することができる。

 前述の事実と経過にあるように、平成16年の市議会定例会、全員協議会の場において補助金の返還を求めていくべきと考えていること、この姿勢が抑止力になることの説明を繰り返す一方、学校法人平安女学院に対しては補助金返還のための協議の申し入れを再三にわたり行い、学校法人平安女学院からは補助金返還の意思がない旨の回答を得ていることが確認できる。こうしたなか学校法人平安女学院から守山市に対しびわ湖守山キャンパスの無償譲渡の申し出がなされたと見ることができる。
 その内容は、平成17年5月17日付け平女院法発第0501号の学校法人平安女学院から守山市への無償譲渡の申し出および平成17年8月24日付け守女移第5号の守山市から学校法人平安女学院への申し出の承諾によると、学校法人平安女学院が守山市に対してびわ湖守山キャンパスの土地、建物の寄附を行い、守山市は学校法人平安女学院に補助金返還請求を行わないとする合意が行われたと認めることができる。

 学校法人平安女学院から寄附された資産の評価額33億580万8千円は、学校法人平安女学院への守山市の補助金額25億6,537万7千円、滋賀県の補助金額8億円の合計額33億6,537万7千円とほぼ同額である。寄附は弁済のように債権債務の消滅を目的とする行為ではないから、寄附により直接補助金が返還されたとすることはできないとしても、この寄附により、滋賀県および守山市の補助金相当額が事実上補填されたと見ることはできる。

 なお、この資産評価は、不動産鑑定士の専門的知識、経験および技法等を駆使した鑑定に基づくものである。土地の平方メートルあたり評価額28,800 円は、土地取引や資産評価をするにあたっての土地の適正な価格を判断する客観的な目安である公示価格で近傍の地価公示「守山9−1(古高町)」の平方メートルあたり 34,200 円から、評価時点、地域要因、個別要因等を勘案して類推できる価格であり、適正かつ妥当なものと判断できる。また、建物の評価額21億9,545万3千円は、平成17年3月1日時点において再調達することを想定した場合に必要とされる適正な原価の総額、すなわち再調達原価から耐用年数による減価修正した価格であり、平成12年2月14日に学校法人平安女学院から提出された実績報告書の建設費22億6,475万4,871円に、耐用年数60年に対する経過年数5年間の減価償却費を減じた価格20億7,602万5千円、また滋賀県が補助金返還額の計算に用いた残存価格19億1,942万3,357円と比較しても大きな差異がなく、土地と同様に適正かつ妥当なものと判断できる。
 こうした土地、建物の無償譲渡により、守山市の損失に成らんとしていた学校法人平安女学院への守山市の補助金額25億6,537万7千円という支出について、社会的な相当性が認められる処理がなされたもので、経過については守山市議会定例会、全員協議会に逐次説明がなされており不当性は認められない。
 また、施策の実施については、地方公共団体の広範な裁量に委ねられており、その判断は、経済的見地のみならず、広く社会的、政策的見地から総合的になされるべきである。更に判断の基準について、長は地方自治の本旨の理念に沿って、住民の福祉の増進を図るために地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担う地方公共団体の執行機関(地方自治法第148条、149条参照)として、住民の多様な意見および利益を勘案し、決定を行なうものであって、その決定は、事柄の性質上、当該地方公共団体の地理的・社会的・経済的事情および他の行政政策との関連等諸般の事情を総合的に考慮した上での高度に政策的な判断を要するものであるから、公益上の必要性に関する判断に当たっては、第一次的には地方公共団体の長の裁量に委ねられていると解される。公益上の必要性に関する判断については、違法性が問題とされている場合、裁量権の逸脱又は濫用があったか否かは、目的、性質および状況等を総合的に考慮し検討することが必要であると解される(奈良地裁平成15年2月26日判決)。

 そこで、学校法人平安女学院から守山市へのびわ湖守山キャンバスの土地、建物の寄附の申し出に対し承諾を行い、守山市は学校法人平安女学院に補助金返還請求を行わないとしたものであるが、市長は、学校法人の財産保全手続をとるためには、極めて高額の供託金が必要であること、裁判の長期化によるキャンパス跡地の荒廃、学校法人の倒産と市の社会的責任の懸念、民間への売却による開発、資金難による全額返還の期待薄などを総合的に検討し寄附により補助金返還と同等以上の効果が得られたと政策判断され立案されたものであると認められる。この立案については、補助金返還請求権が未発生により地方自治法第96条第1項第10号の権利の放棄に該当せず、市議会の議決は必要としないものである。しかしながら平成17年第2回市議会臨時会において、議員自らの発意により、びわ湖守山キャンパス跡地の教育機関での利用を条件に守山女子高等学校を学校法人立命館へ移管することに関する決議が提案され可決されている。こうしたことから違法若しくは不当なものでなく、請求人の主張には理由がないものと判断する。

2 監査対象事項(2)について

 滋賀県の補助金については、滋賀県補助金等交付規則第19条および平成10年9月30日付け滋地振第378号通知の交付条件3(4)において財産処分の制限が付されているなか、学校法人平安女学院がびわ湖守山キャンパスを守山市に無償譲渡するに伴い、滋賀県の学校法人平安女学院に対する債権について債務を守山市が継承し、滋賀県が承諾した経過が認められる。

この納付金債務は建物に対する補助に係るものであるが、上記の監査対象事項(1)のとおり、学校法人平安女学院からの土地・建物を含めた寄附により、滋賀県および守山市の補助金相当額の資産を守山市が単独で取得するに至ったものであることから、この債務を学校法人平安女学院から継承することは当然の帰結と判断できる。

 この滋賀県への納付金6億1,749万9千円については、地方自治法第218条第1項および同法第96条第2項の規定に基づき、平成17年第5回守山市議会臨時会(議案第60号「平成17年度守山市一般会計補正予算(第5号)」)に平成17年8月23日提出し、同日本会議において議決され、同日付けで学校法人平安女学院と守山市との連名から滋賀県へ滋賀県平安女学院大学施設等整備費補助金に係る財産処分に伴う処分制限財産の残存価額に対する補助金相当額6億1,747万8,493円の債務引受の申出書が提出されたものである。以上は、正当な手続きがなされており、地方財政法の趣旨に沿った運営がなされるものであり違法または不当ではない。

 住民監査請求においては、請求人が違法・不当と主張する財務会計上の行為について、なぜそれが違法・不当であるのか、その理由あるいは事実を具体的に示さなければならないと解され、違法の理由が単に請求人の倫理観や一般論等に照らし違法・不当であるとの主張にすぎない場合は、財務会計上の行為を違法・不当とする理由とならないものである。請求人は、一方的に市の財産に損害を与える、合理的理由がないとして不当、不法の処分がなされた旨主張するが、事実確認のとおり、本件処分等については、市議会の議事、議決を経る等所定の手続きを遵守して決定に至っていることから違法若しくは不当な公金の支出に当たるとは認められず、請求人の主張には理由がないものと判断する。

 なお、本件請求については、滋賀県への納付金の、支出差止めを求める請求が含まれていることから、地方自治法第242条第3項の規定による暫定的停止勧告の適否について検討する必要があると認め、必要な調査検討を行ったが、本件請求の納付金について、不当、違法であると思料するに足る相当の理由がなく、また、適法な手続きを経て予算措置されたものであることから、本件請求に係る監査結果を決定するまでの間に納付金の支出に係る暫定的停止勧告をする必要はないと判断した。

3 監査対象事項(3)について

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第24条により、大学に関すること、私立学校に関すること、教育財産を取得し及び処分することは、地方公共団体の長の職務権限とされている。
 私立学校法第59条には、国又は地方公共団体は、教育の振興上必要があると認める場合には、別に法律で定めるところにより、学校法人に対し私立学校教育に閲し必要な助成をすることができる旨規定され、また、上記規定を受けて、私立学校振興助成法第10条には、国又は地方公共団体は、学校法人に対し、補助金を支出し、又は通常の条件よりも有利な条件で貸付金をし、その他の財産を譲渡し、若しくは貸し付けることができる旨規定されている。また、地方自治法第232条の2で、普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができると定められており、助成が認められているものであり、違法とは解されない。
 また、手続き上は、びわ湖守山キャンバス跡地を学校法人立命館に無償譲渡することについて、地方自治法第237条第2項および同法第96条第1項の規定に基づき、平成17年第6回守山市議会定例会(議案第86号「財産の無償譲渡につき議決を求めることについて」)に平成17年9月16日提出し、同年10月13日議決を得ていることから違法性はないと解され、請求の理由がないものと判断する。

 請求人が主張する裁量権については、前述の監査対象事項(1)のとおり、目的、性質および状況等の総合的な検討を要するところである。市長は、市が取得した平安女学院大学びわ湖守山キャンパス跡地を学校法人立命館に無償譲渡することにより、守山女子高等学校の立命館守山高校への移管が成立し、将来の校舎耐震化経費の負担増や年間経費の削減が図れ、更に当初市が平安女学院大学に期待していた「大学を核としたまちづくり」の地域貢献を立命館大学に継承できることから、市の発展、地域の活性化に寄与できるものと高度な見地から総合的に政策判断し立案したものであり、違法若しくは不当なものではないから、請求人の主張には理由がないものと判断する。

4 監査対象事項(4)について

 守山市議会では、平成8年第1回および平成14年第1回の定例会において、守山女子高校に対し、市立高校としての意義を問われる質問がなされている。また、平成15年の事務事業外部評価に関する報告書においては存在意義を問われる意見が出されている。こうした意見を踏まえ、市長は水面下で将来の高校経営の方針を模索していたと思料するが、歴史ある守山女子高等学校を廃校とせずに高等学校教育を継承される移管方策が賢明であると政策判断し、意思決定においては、市教育委員会および市議会の賛意を得て進められたと認められる。

 住民監査請求は、地方自治法第242条に基づき普通地方公共団体の住民が、当該地方公共団体の執行機由又は職員による違法・不当な財務会計上の行為があると認めるとき、監査委員に対し監査を求め、当該地方公共団体の被った損害の補てん等を図ることを目的とするものであり、本件請求は、守山市の監査委員の職務権限を超えることから、住民監査請求の対象とならないものと判断する。

5 結論
 以上述べたとおり、本件措置請求のうち、学校法人平安女学院に補助金25億6,000万円の返還を求めるための措置および6億2,000万円を学校法人平安女学院に代わって滋賀県に支払うことを停止するための措置ならびにびわ湖守山キャンパス跡地の学校法人立命館への無償譲渡契約を取り消すための措置を講じることを求める部分については、これを棄却し、学校法人立命館、学校法人平安女学院双方の支援関係を調査し、明らかにするための措置を講じることを求める部分については、請求要件を欠き不適法であり、これを却下する。