平成17年(ネ受)第518号

申立人  川 戸   佳 代
相手方  学校法人平安女学院

2005年 11月7日

申立人代理人
弁護士 吉 原   稔  

最高裁判所  御 中

 

上告受理申立理由書

 

第一、原判決には法令に解釈適用を誤り、判断遺脱、理由不備の違法があり、かつ、法令の解釈に関する重要な事項を含むので、上告を受理されたい。

 

1、原判決が、第三者のためにする契約、及び規範設定契約の成立をいずれも認定しなかったのは法令の解釈の誤りであり、本件では第三者のためにする契約、または規範設定契約の成立が認定されるべきである。

 

2、原判決は、「第3、当裁判所の判断」のPにおいて、

 2 当審における控訴人の主張についての判断

  (1) 控訴人は、第三者に給付請求権を帰属させる通常の第三者のためにする契約(真正な第三者のためにする契約)と、第三者に権利を帰属させない第三者のためにする契約との区別については、要約者から諾約者への出捐の有無が判断基準であると解されるところ、本件においては、要約者である守山市が補助金を支出し、出捐をしていることからも、第三者のためにする契約の成立が認められるべきである旨主張する。

   しかしながら、守山市や滋賀県が、その自治体外からも特段地域を限定せずに募集される個々の学生に対して、守山キャンパスで就学する具体的権利を付与することまでを意図し、それを内容とする第三者のためにする契約を締結する意思があったと解することは困難であり、控訴人主張の第三者のためにする契約が締結されたと認めることはできないことは、原判決の説示するとおりである。

   そして、一般に、補助金の交付は一定の行政目的を達成するための手段のとして行われるものであって、その際に結ばれる協定も、その目的を達成するための手段にすぎず、第三者に対して具体的権利を付与する旨の明示的な約定なしに、そのような権利の付与までを意図しているものとはいえないこと、特に補助金交付の相手方が大学を経営する学校法人である場合には、大学の自治にも配慮する必要があることに照らしても、守山市や滋賀県において第三者のためにする契約を締結する意思を有していたと認める事はできない。

  (2) 控訴人は、第三者のためにする契約の成否を判断するにあたり、諾約者である被控訴人の意思こそが重要であるところ、被控訴人は守山市から補助金を受けて守山キャンパスの創設を約束したのであるから、基本協定書(甲5)によって、守山キャンパスを創り、そこで学生を就学させる意思があったことは明白である旨主張する。

   しかしながら、第三者のためにする契約が成立するためには、要約者と諾約者双方の意思の合致が必要であることはいうまでもないところ、前記補助金の交付にあたり、守山市や滋賀県において控訴人主張の第三者のためにする契約を締結する意思があったと認められないことは、前記のとおりであるし、また、同様の理由により、被控訴人についても、個々の学生に対して、守山キャンパスで就学する具体的権利を付与することまでを意図し、それを内容とする第三者のためにする契約を締結する意思があったとは認め難いというべきである。

 

  と判示している。しかし、守山市の補助金交付の目的が、地方自治体の発展や住民の利益であるが、大学の校地、校舎を建設し、そこで学生を就学させる意思目的があり、そのことが補助金交付の主目的、第1次目的であって、それによって、地方自治の発展や住民の利益を図るものであり、それは、その主目的の実現によってもたらされる2次的利益である。

  補助金交付によって私立学校を開設するという内容の基本協定書により、キャンパスを守山市に創り、相手方が全国から学生を募集して守山キャンパスに就学させることを目的として締結(成立)したことは明らかである。その補助金交付目的が地方自治体の振興が主目的であったのか、若しくは守山キャンパスの建設か、いずれが主目的であったかについては、守山キャンパスの建設が主目的である。

  原判決P8は、「その自治体外からも特段地域を限定せずに募集される個々の学生に対して」とあるが、私立大学であるから地域の限定がないのは当然である。それどころか、国籍の限定すらないのであるから、「特段地域を限定していない」ことは第三者のための契約の成立を否定する理由にならない。

3、原判決は、「第三者のための契約」の成否を判断するにあたって、第三者のためにする契約の要約者たる守山市の意思しか斟酌をしていないが、第三者のためにする契約には、諾約者である相手方の意思こそが重要である。(諾約者)相手方が(要約者)守山市から、補助金を受けて守山キャンパスの創設を約束したのであるから、この基本協定書によって、相手方が守山キャンパスをり、そこで学生を就学させる意思があったことは明白である。

  相手方の主たる目的が、学生を守山キャンパスで就学させるということは基本協定書によって明らかである。また、相手方が負担した「学生を守山キャンパスで就学させる」という債務も協定締結時に明確であった。原判決は、このことを斟酌すれば第三者のためにする契約の成立を認定せざるを得なかったと思われる。守山市は「補助金を交付して守山キャンパスを開設し学生を就学させ、学生を通じて大学を核としたまちづくりとして自治体の発展に繋げる」、相手方は「自治体の補助金を受けて守山キャンパスを開設し学生(申立人)を就学させ、補助金に見合うように学生(申立人)を通じて地域に貢献する」という双方向の意思(利害)が合致して契約が成立したのである。

  原判決はP7において、

 『第三者に対して具体的権利を付与する旨の明示的な約定なしに』そのような権利の付与までも意図していたものとはいえない。

 というが、本件のような基本協定の中でわざわざ「学生を募集して入学させ、就学権を付与する」などどいう文言を明示する方が不自然であり、そのような文言を入れなくても、「学生を募集して入学させ就学させる」のは当たり前のことであるから、明文の文言は必要はない。入学定員や学部、学科名を定め、明示していることから、「学生を募集して入学させ就学させる」のは当然のことである。第三者のための契約は認定されるべきである。

  むしろ、基本契約書そのものが「入学してくる在学生のため守山キャンパスを建設し、就学の機会を与える」ことを明文化しているとみるべきである。

  それが第三者に権利を取得させる第三者のためにする契約であるかについて、原判決では、「そうではない」というだけで第1審判決と同様に、何の理由も示していないというべく、原判決は理由不備である。

 

4、本件在学契約は第三者のための契約であると認定されるべきである。

(1) 講学上、第三者のためにする契約が成立するためには、まず、契約当事者間に第三者に直接に権利を取得させる旨の合意がなければならず、要約者A、契約者B間の契約の内容が第三者に事実上の利益を与えるにすぎない趣旨のものである場合は、成立しない、とされている。

 本件で守山市と相手方、滋賀県と相手方との補助金交付に伴う契約は、守山市と滋賀県は、相手方が高校卒業生等の入学者に対して守山キャンパスで就学する機会をつくるために、守山キャンパスを建設するについて、その70%近い額の補助金を交付することに対し、相手方が守山キャンパスを建設し、そこで授業をし、教育の場所を開設することを明文の文書で約束したことによって、守山キャンパスの開設後に相手方の守山キャンパスの就学の勧誘に対し入学申込みをした申立人の申込みを承諾し、在学契約を締結し、その申立人が守山キャンパスにおいて授業を受ける権利を取得させるもであり、第三者に守山キャンパスでの就学権を付与させるものであるから、明確な第三者のための契約である。

 これは、単なる反射的利益では決してない。

(2) また、第三者のための契約は第三者が契約時に現存していなくても有効に成立するし、第三者が特定していなくても特定しうるものであればよく、受益の意思表示のときに現存し、特定していればよい。(契約法・品川孝次著P,392) 

(3) 来栖博士は、第三者のための契約には、第三者に給付請求権の帰属する通常の受益の意思表示を要する第三者のための契約(真正な第三者のための契約)と他人間の権利取得を生じない不真正な第三者のための契約とにわける。

 そして、要約者から諾約者への出捐がなされているかどうかを基準に真正な第三者のためにする契約か不真正な第三者のためにする契約かの判断基準としている。(民商法雑法39巻4.5.6号、P,519)

 第三者への給付が要約者の出捐に基づき諾約者より約束されたときは、真正な第三者のための契約であると推定し、要約者の出捐に基づかないときは不真正な第三者のための契約としていることから、本件契約は補助金交付という出捐がなされているため、第三者のためにする契約であることは明らかである。(第三者のための契約の法理・春田一夫著P,22) 

 原判決は、この点の主張に対し、そのことを摘示しながら(P7)、

「守山市や滋賀県が具体的権利を付与することを意図し、第三者のために契約をする意思があったとまで解することは困難である」というだけで、この主張を排斥する理由を示していない。この点でも判断遺脱理由不備である。

(4) なお、第三者のための契約の成立要件として、第三者の権利を取得させるとともに付随的な負担を負わせることもできると解される。

 例えば、第三者Cが諾約者Bに対して300万円を支払えば、BCに不動産の所有権を移転するという要約者、諾役者間の契約がこれである。(契約法・品川考次著P,394)

 本件在学契約は双務契約であるから、入学者が第三者として入学金などを支払うという負担を負うことは当然である。

 

(5) 原判決はP9において

 (4) 控訴人は、本件在学契約は第三者のためにする契約という形式における規範契約(規範設定契約)でもあり、また、第三者のためにする契約の成立が認められない場合でも、規範設定契約は認められるべきである旨主張する。

   しかしながら、控訴人主張の第三者のためにする契約が成立したとは認められないこと、補助金の交付にあたり、守山市や滋賀県においても、被控訴人においても個々の学生に対して、守山キャンパスで就学する具体的権利を付与することまでを意図し、それを内容とする契約を締結する意思があったとは認められないことは、いずれも前記のとおりであるから、控訴人主張の規範契約(規範設定契約)の成立も認められないというべきである。

 という。

  しかし、本件在学契約は、第三者のためにする契約という形式における 規範契約(規範設定契約)でもある。すなわち、

「規範契約が個別契約の両当事者若しくはその団体の間で設定されないで、規範契約の一方の両当事者が局外者と規範設定契約を締結する場合には、変形的な規範設定契約が存在することになる。この場合にも一つの規範設定契約は存在するが、それは所謂第三者のためにする契約(Beteiligter)である。」(約款性の理論・米谷隆三P,243)

 また、第三者のためにする契約の成立が認められない場合でも、規範設定契約は認められるべきであるのに、原判決はこの点についても判示せず審理不尽である。

 

(6)、本件の「在学契約」の性質からも「第三者のための契約」、又は規範設 定契約が認められるべきである。

 (1)一審判決は「当裁判所の判断」1,(1)P,17において、

「被告の2001年度(平成13年度)の大学案内(甲1)には,「守山,高槻,京都を拠点に,総合学園として発展。」「全施設バリアフリー,人にやさしい先進の学習環境を整備」「湖畔の四季と多彩なイベントが彩るキャンパスライフ。」との記載があり,守山キャンパスの施設の絵や写真,守山キャンパス周辺の風物や行事が紹介されており,2002年度(平成14年度)の大学案内(甲3)では,Campus Life編と題する頁には,守山キャンパスでのクラブやサークル活動の様子やメディアセンター,学生会館,カフェテリア等の施設の様子の写真がキャンパス周辺の名所の写真等が掲載されており,現代文化学科に入学した学生は守山キャンパスで紹介されたような学生生活を送れることを期待させる内容となっている。

  と判示している。

  これは、相手方が申立人などの入学者に対して守山市で就学させることを意図して入学募集を行ったことを示している。さらに、上記の大学案内(甲1号証)では、卒業後の就職活動をあっせんする事などが紹介されている。このことは、相手方が守山市のキャンパスで申立人などの入学者を卒業まで就学させ、卒業後の就職あっせんを約したものであると解することが出来る。つまり、相手方が作成した大学案内(甲1号証)で、相手方が入学志願者に対し、卒業まで守山キャンパスで就学させる事を核とした学生生活を送らせることを意図して、申立人を入学させたのであるから在学契約の施設利用権は守山キャンパスに限定される。

 また、2002年大学案内(甲3号証)のなかの「GoGoサクセス」GENKI通信 CampusLife編と題する頁には、「Lake Side Campus Lake Biwaの風を感じて」とある。これは、びわ湖近くの良い環境を教育サービスの“売り”にしたものである。

 相手方は、申立人が入学を希望する際に、守山市という琵琶湖近くの良い環境で学べるということを大々的にアピールしていた。同頁には、「ぷちアンケート 平安女学院大学を『色』にたとえると何色?」と在学生に対して聴衆した意見を記載した「白」という箇所には、「新しくできたばかりで、これから学生と教職員で作り上げていくので何色にもなれる。(TK)」とある。これは、在学生が守山キャンパスという2000年に新設された施設で、教職員と共にキャンパスの歴史を作り上げていくことができる、とアピールするものであり、新設の守山キャンパスに入学すれば教職員と楽しく過ごせるというものである。つまり、相手方が申立人などの個々の入学者に対して、守山キャンパスで就学させることを前提条件にして入学募集・案内を行っていたということを意味している。

 

(7) さらに、2001年大学案内(甲1号証)の「キャンパスカレンダー 湖 畔の式と多彩なイベントが彩るキャンパスライフ」と題する貢には、「市 長メッセージ」として当時の守山市長甲斐道清氏の言葉が紹介されている。

「少子高齢化社会の到来、国際化という大きな時代の流れのなかで、琵琶湖を望む豊かな地、守山で学び、これからの社会をリードする人材として、活躍されることに期待を寄せています。」

  とある。これは、守山市が申立人などの入学希望者に対して、琵琶湖を望む豊かな地である守山の地で勉学に励み、卒業後は社会をリードする人材として、活躍することを期待していたことを証するものである。このことが大学案内(甲1号証)という、相手方が入学者を勧誘するためのパンフレットに記載していることからも、在学契約に第三者のための契約が及んでいる事を明示してるいものであると解する事ができる。

 

(8) 在学契約には消費者契約法が適用されるから、相手方が入学募集案内のために作成した冊子(甲1、甲2、甲3号証)によって相手方も申立人も拘束される。つまり、相手方と申立人が、20024月守山キャンパスへの入学の際に締結した在学契約には、守山という地域を限定する要因があり、申立人には守山キャンパスで就学する権利(教育を受ける権利)がある。

  この点について原判決はP9において、

 (5) なお、控訴人は在学契約には消費者契約法が適用される旨の主張もするが、同主張も、本件において第三者のためにする契約が成立したとは認められないとする上記判断に何ら影響を及ぼすものではなく、控訴人のその余の主張及び当審提出の証拠(甲46ないし53)も、いずれも同判断を左右するものとはいえない。

 としているが、理由不備である。

(9) 教育理念、建学の精神については、私立大学の社会的責任に関する研究報告・私立大学社会的責任(USR)研究会著P,15(甲45号証)、「私立大学における建学の精神と行動規範」とされる頁に、

 「私立大学は、それぞれが「建学の精神」を掲げ、学生募集及び教育・研究活動を実施している。この「建学の精神」は私立大学の運営上の方針であり、私立大学の存在価値そのものであるが、言い換えるとそれは学生・父母・社会という様々なステークホルダー(利害関係者)に対する契約そのものであり、私立大学の社会性そのものであると考えられる。まさしく企業理念にがいとうするものであり、「建学の精神」を具体化するために教職員に求められるのが行動規範であると定義することが出来る。」

  とある。建学の精神は、在学契約そのものであり、それは、運営上の方針や私立大学の存在価値を示すものであり社会的責任でもあるとされている。

(10) 相手方が入学募集をした時(2001年)には、高槻キャンパスに現代文化学部も設置されていなかった。高槻キャンパスは図書館や食堂などの施設が一般に開放されていないことから地域に開かれたキャンパスと言うことはできない。高槻キャンパスの近隣住民は風習が違うから守山市の持つ風土、文化、歴史などの地域性を代替えできるはずがない。このようなことから、相手方が守山キャンパスを限定して入学募集を行ったことは明らかである。

 

(11) このように、市長や学長、在学生や教職員の言葉を大学案内等に掲載することによって相手方は、入学希望者に対して約束をしていることになる。そのなかには、琵琶湖近くの守山市という良い環境に位置する守山キャンパスで学べるということが個々の在学契約の教育を受ける権利のなかに含まれる一番の利益と位置づけて入学募集(広報活動)を行っているのだから、原告が守山キャンパスで就学する権利(教育を受ける権利)があることは容易に確認できる。

 

(12) 相手方の作成する大学案内や入学募集要項等には、相手方と守山市、又は滋賀県によって守山キャンパスに設置された現代文化学部に入学した者(申立人)が、途中から高槻キャンパスで学ぶということは全く明記されていないことから、相手方が一方的に決めた統合は、申立人と相手方が締結した在学契約に違反する。また、相手方が自治体と締結した基本契約の内容からしても、申立人が入学(在学契約を締結)したときには、卒業最短修業年限期間は申立人を守山キャンパスで就学させる意図があったことは歴然としているし、明白である。さらに、入学前に予告がない限り在学契約締結時に入学者(申立人)が就学途中で別のキャンパスに収容される可能性を予する事は、不可能である。

 

(13) 相手方と守山市、又は滋賀県が締結した契約は、現代文化学部の入学合格者(申立人)を受益対象とする第三者のためにする契約である。そのことは、相手方が運営する私立学校には通学圏が限られていない事など相手方の作成する入学募集要項に記載されている入学資格の条件を満たして入学した者であることが理由となる。申立人は、入学しているのだからこの条件を満たしているため第三者のためにする契約の受益対象者である。守山市が、補助金を交付した段階において、私立学校が通学圏を限定していないことは、当然承知であったことは容易に推察できるから、守山市は現代文化学部の入学者のために契約を締結したことは明白である。相手方と守山市、滋賀県が設置者として守山キャンパスを創設したことによって、守山キャンパスで教育を受ける権利を広く一般に与えたのである。第三者のためする契約は、不特定多数に契約するものであって受益の意思表示の時に特定すれば良いのだから、在学契約を締結した入学者(申立人)が受益対象者というべきであり、申立人が相手方の行った入学試験に合格して入学したことによって教育を受ける権利を享受したことは容易に確認できる。相手方は、申立人を入学させたことによって守山キャンパスで教育を受ける権利がある者を特定したのであって、第三者のためにする契約は申立人が入学し守山キャンパスで学生生活を送ることによって効力を持つのであるから、申立人には守山キャンパスで教育を受ける権利がある。

 

(14) 守山キャンパスが守山市三宅町に位置することによって守山市民、滋賀県民の受ける「利益」とは、距離的観点から教育を受ける権利を優先的に享受できること、地域に開かれたキャンパスということで開放された施設(守山キャンパスの図書館や食堂など)を利用できること、さらに、守山キャンパスを中心として近隣のまちの振興に繋がる可能性を受けたことである。守山市の掲げる「大学を核としたまちづくり」は、守山キャンパスの近隣住民と学生(申立人などの在学生)との繋がりが無ければ振興しない。つまり、守山市の住民の利益とは、守山キャンパスで学ぶ学生(申立人)がいなければ成立しないのである。このことから守山市や滋賀県が大学誘致という形式で相手方の守山キャンパスを開設することを条件に補助金を交付したことは明白である。また、守山市内にキャンパスが位置していなければ、守山市が補助金を約25億円という市の財源の二十数パーセントにもあたる税金を支払うはずはない。高槻キャンパスに現代文化学部を置いているのに、守山市が補助金を交付するということも考えられないのだから、守山市は、守山市三宅町250番地に相手方が守山キャンパスを開設することを条件として補助金を交付したのである。また、自治体と基本協定を締結しておいて相手方が実際に入学募集しなかったり学生を就学させないということはあり得ないことである。それならば、補助金の交付条件とは異なるし基本協定は成立しない。在学契約が存在しなければ自治体の振興には繋がらないという事を意味している。つまり、自治体と相手方が交わした基本協定をはじめとする契約は、在学契約が存在しなければ成立しないとも言うことができるのであって、申立人には守山キャンパスで教育を受ける(就学する)権利がある。

 

(15) 「カリキュラム」とは、文部科学省が「現代文化学部」という教育分野に従って一定の教育課程を守山キャンパスで入学者に対して履行することを認可したものであるから、被告は守山キャンパスに入学した原告に対して、その債務を履行させなければならない。

 カリキュラムのなかには、守山市役所をはじめとして様々な地元企業や事業所で実習活動する科目も有している。ボランティアワークやビジネスインターンシップ(企業実習)は、卒業単位科目である。原判決では、現代文化学部の募集について、「その自治体外からも特段地域を限定せずに募集される」とあるが、「国際コミュニケーション学科」の卒業単位取得のために必要な「ビジネスインターンシップ」や「ボランテイアワーク」の科目は、たとえ学生が全国(あるいは世界)から来ようとも、守山キャンパスにおいて学業に従事する学生がこれらの科目の単位を取得しようとした場合、その実習先の多くが守山キャンパスを中心とした地域となるのは当然のことである。また、これらの実習がたとえ夏期休業中のような期間に行われたとしても、事前・事後指導および実習中の指導を行うためには、キャンパスが立地する守山を中心とする地域に実習先がおのずと限定されてくるは当然のことである。このような活動は、地域と連携する大学の特色であり、さらに、学生の活動を通じて補助金を受けた地域が活性化されるためにもキャンパスが立地する地域性がこれらの教科内容に影響を与えるものであるから、本件在学契約には守山キャンパスで就学することが含まれている。

 

第二、本件在学契約における合意からも守山キャンパスにおける就学 権は認められるべきであるところ、原判決はその解釈適用を誤って いる。

 申立人は一審判決P4において摘示するように、

 「学生が在籍する以上は、当然に教育関係法規及び行政処分(認可及び補助金交付決定等)の法規に、学生である原告も被告も双方拘束されるものであるという在学契約の附合契約性から、守山市と被告との合意、滋賀県と被告との補助金交付決定の合意及び文部科学省の設置認可の法的拘束力によって被告が守山キャンパスを存続させることは在学契約の内容となり、被告の義務となった」

 と主張した。これに対し原判決が「理由」として引用する一審判決はP22において

 「また学生が学校に在籍する以上は、教育関係法規及び行政処分(認可及び補助金交付決定等)に、学生である原告も被告も双方拘束されるものであるといえるが、原告から被告への法的に履行請求を認めうる法律関係が成立しているとはいえない。むしろ、在学契約の附合契約性によって、学生の個々の同意がなくても、大学が定める規定・規則、理事会や教授会の決定にも、学生が拘束され得るともいえる。公法上の営造物等の利用は、私的な契約関係に基づくものではないし、侵害されたときに損害賠償(国家賠償)が認められるかの問題と、本件での私的な在学契約に基づく履行請求が認められるかの問題とを同列には論じることはできない。

  原告と被告との間の在学契約に基づく本件請求2は理由がない。」

 と判示した。しかしながら、仮に第三者のための契約又は規範設定契約が認められなくても、在学契約の内容から守山キャンパスの就学権が認められるべきなのに、これを否定した原判決は法令の解釈適用を誤ったものである。

 

第三、原判決には最高裁判所の判例と相反する判断がある。

(1) 電信送金契約についての最高裁昭和43年12月5日第一小法廷判決(判例時報545号P50,民集22巻13号876P)は第三者のためにする契約か否かを判断している(本事件では第三者のための契約ではないとする)が、その判断を本件在学契約に引き比べれば、

  嵬声的な第三者たる送金受取人のためにする約旨の存否」については、相手方が締結した、守山市及び滋賀県との協定書第4条、第5条、また、交付要綱において、「入学してくる在学生のために守山キャンパスを建設し、就学機会を与える」との明文と同様の約旨がある。

◆‖荵絢圓里燭瓩砲垢觀戚鵑任覆い箸糧歡蠕發虜拠の第1の「仕向銀行と被仕向銀行との間の契約においては送金受取人に着説の請求権を与える意思がない」ことについては「入学志願者が相手方の実施する入学試験に合格し、相手方が申立人に入学手続きをさせる」ことによって就学させる意思は明白である。

 「送金受取人は撤回の可能性を残しておきたい」ことについては、本件では、守山市、滋賀県、相手方が既に入学した申立人の入学を断るという撤回の可能性を残すことはあり得ない。

ぁ‖茖欧痢崛般瓩掘廚亮莪慣行は民法第538条の第三者の権利確定の規定と矛楯することについて、本件では「組戻し」類似の慣行もないから矛盾はない。

(2) 以上のように本件は最高裁判例の判断からも第三者のための契約の成立は認められるものであるのに、原判決は最高裁判例と実質的に異なる判断をしたものである。