2005年1月から2005年3月まで
    ドキュメント びわ湖守山キャンパス移転・統合・譲渡問題 全記録(7)

 2005年01月13日

「守山キャンパス就学権確認訴訟」

原告の川戸佳代さん、
大津地裁に「準備書面(3)」を提出


大津地裁原告側「準備書面(3)」(全文)

平成16年(ワ)第573号 就学する権利等確認請求事件

原  告  川戸佳代
被  告  学校法人平安女学院

準備書面(3)

2005年1月13日

大津地方裁判所 民事部合議係 御中

原告訴訟代理人弁護士   吉原 稔

第1
1.「大学の自治」「大学の決定権」について
(1)被告は「大学の自治」によって、校舎を統合するものと主張するが、大学の自治、大学の自律的決定権といえども、大学が学生の利用を拒否した場合、学生の守山キャンパスにおける営造物利用権又は、教育をうける権利を侵害した場合は、違法となるものである。
(2)国立大学の教授の遅刻、休講による損害賠償請求事件(埼玉地裁平成2年6月29日判決、東京高裁平成2年12月26日判決)について、大島佳代子は「大学と法」において、
    『大学の自治の主体は、大学における研究・教育の自由を公権力から擁護するという自治の存在理由からして、教授会がその中心たるべきものと解されている。学校教育法59条も「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と規定している。これと関連して、学生が大学の自治において占める地位がいかなるものかが問題となる。従来は、ポポロ事件最高裁判決にみられるように、学生は「営造物利用者」と捉えられていた。第一審判決が、「休講・遅刻の対応につき、学生の営造物利用権を侵害したとみられる場合に違法となる」と述べたのも、同様の立場に立つものと考えられる。』(p438)
    『本件第一審判決は、休講・遅刻につき第一次的に裁判所がその適否を判断することは大学の自治の理念にもとるとし、教授会等の対応が大学設置の目的に照らし著しく社会観念に反し、学生の営造物利用権を侵害したとみられる場合に違法とすべきと述べ、司法審査の対象としている。休講・遅刻(その対応も含む)が一般市民法秩序とどう関連するかについて判決は明言していないが、教授等の服務規律に関わること、本件が損害賠償請求事件であること等が勘案されたのではないかと思われる。問題はむしろ、休講・遅刻が学生の営造物利用権を侵害する場合とは、いかなる場合かである。教授等の休講や遅刻により、学生は当該講義を全部又は一部受けられないことになるが、それで学生が大学施設の利用を拒否されたといえるのか疑問がある。憲法23条が学問の自由を、そしてそのコロラリーとして大学の自治を保障していることの意義は、学問が国家権力等の権威から干渉を受けずに自由になされるべきであることはもちろん、国民の「教育を受ける権利」の保障にあたるといえる。本件では、営造物利用権の侵害ではなく教育を受ける権利の侵害と構成すべきであったと思われる。そのうえで、大学の自治に属することがらであっても、休講や遅刻によって、学生の教育を受ける権利が著しく侵害されたとみなされる場合には違法とすべきと考えるのが妥当であろう。』(p440)
    『本件一審判決は、「しかしながら、大学における学問の自由を確保するためにはいわゆる大学の自治が認められるべきことは多言を要しないところ、教授等の休講・遅刻について第一次的に裁判所がその適否を判断することは右の大学の自治の理念にもとるといわざるを得ないから、教授等の休講・遅刻等についての対応はまず教授会等の大学機関に委ねられており、裁判所は、その対応(作為もしくは不作為)が前記大学設置の目的に照らし著しく社会観念に反し、学生の営造物利用権(国立大学は公営造物である)を侵害したとみられる場合に違法と判断すべきことになると解するのが相当である。」』(p436)
  と判示している。
(3)本件は、守山キャンパスでの施設利用権と教育をうける権利を侵害されたものとして大学の自治、大学の決定権が及ばないものとして違法となる。
(4)大学院聖書神学専攻修士課程学生募集停止事件の東京高裁、昭和52年10月6日判決(時報870号p35)は、
 (2) 契約上の信義則違反について。
  「契約の一方当事者が契約内容をなす給付以外に一定の実質的重要性を有する利益を確実に供与するべき旨をもって契約締結を勧奨し、相手方はこれを信じ、これを重要な動機として右契約の締結に応じた場合には、右勧奨者は通常応諾者においてかかる信頼のもとに契約を締結するものであることを予想し、または予想しうべきものであるから、かかる信頼に基づいて契約を締結した相手方に対し、信義則上右利益が契約締結につき当初有していた目的を十分に達することができず、相手方が右契約に関してすでにした負担行為のできない実質的損害をこうむったものと認められる場合には、これが賠償をなすべき義務を負うものと解するのが相当である」
  「(神学科修士課程の維持・運営のために毎年相当額の赤字を計上している等といった、学生募集停止に関する大学側の理由は、一般的・対世的には合理的でありえても)控訴人のようにすでに被控訴人の言明に依拠し、修士課程への進学を期待して神学科に入学し、被控訴人との間に上記のような具体的信頼関係にたつに至っている者において、右言明に違背し修士課程における教育役務の提供を拒否することを正当化する理由としては十分なものということはできない。……被控訴人の本件学生募集停止は、控訴人に対する関係で正当な理由のない言明違背に該当するといわざるをえない」。
   本件原告は、上記判決(将来の大学院進学への期待)と違い、すでに在学しているものであるから生徒数が減少し財政的に困難をきたしているから、募集を停止しキャンパスを統合するという廃止・統合の理由は守山キャンパスにおける教育の提供を拒否する正当な理由にはならない。

2.本件「在学契約」の特殊性(第三者のための契約、規範設定契約)から大学の決定権に制約があること
(1)原告の請求原因とする「在学契約」は、「第三者のための契約」又は「規範設定契約」であり、それは守山市・滋賀県と被告との間に成立した補助金交付による事業遂行義務を基本契約とし、それに個別契約としての在学契約が締結されたものである。高等教育の受益者としての学生の在学契約はそのような就業義務に依頼して成立しているものである。
   従って、被告の守山キャンパスに就学させるという事業遂行義務は、滋賀県又は守山市によって解除されるとか義務を免除されることによってしか、消滅し免責されないが、滋賀県も守山市も解除も免除もしていない。それどころか、被告は滋賀県や守山市に対して、免責を求める交渉すらしていない。守山市長は市議会の答弁やホームページにおける市の意見表明の中で、「守山キャンパス現代文化学部の存続を願って統合を再考願いたいと申し入れているが、学院はこれを受け入れず一方的に統合を進めている」としている(甲29号証の1、2、3)。
   従って、被告の守山市や滋賀県に対する事業遂行義務が存在している以上、それを基本契約としてそれに依拠して成立している原告の在学契約上の守山キャンパスの就学請求権は、守山市や滋賀県が免責しない限り免責されるものではない。在校生に対して守山キャンパスの高槻への統合を説明しても、第三者のための契約、規範設定契約たる在学契約の内容として守山キャンパスの高槻への統合が認められ、守山キャンパスで就学させる義務が免責されるものではない。
(2)「補助金の交付を受けた者、受益者の債務については補助金の適正化に関する法律第3条が「法令の定め及び補助金の交付の目的又は間接補助金の交付又は融通の目的に従って、誠実に補助事業又は間接補助事業等を行うように努めなければならない」と定めている。本条は、あたかも訓示的規定の観があるが、本条こそ本法の全神経が集約されるものである。
   又、これをうけて11条は補助事業者の補助事業を行わなければならない義務を定め、その義務の範囲及びその基準を明確にしている。その5項は他用途使用を禁止している」(以上、原口恒和編補助金等適正化法講義p42)。
(3)地方自治体の補助金交付は形式的行政処分であるとの判例(札幌高裁、昭和44年9月17日行集20巻4号p459)、地方公共団体の補助金交付は行政契約、私法契約であるとする判例(名古屋地判、昭和19年12月26日、判時1178号p64)もあるが(現代行政法p199)、行政処分が私法上の又は、行政契約であるか否かに関わらず、補助金をうけたものに事業遂行義務が存在することは当然である。
(4)滋賀県の平安女学院補助金交付決定通知(甲15号証)の第3、(2)によると、「補助事業を中止又は廃止しようとする場合はあらかじめ知事に承認を受けなければならない」と定めているところ、被告に対しては滋賀県は、変更を承認していない。又、守山市と被告との補助金交付に関する協定書(甲7号証)には、事業廃止については触れていないが、これは全くこのことを予想していないからである。守山市平安女学院創設補助金交付要綱(甲12号証)第7条は、「学校法人は補助金の交付決定通知をうけた後において事業内容を変更しようとするときはあらかじめ市長に届け出て承認を得なければならない」としているが、当然この届出、承認はなく、この手続はとられていないから、被告の守山キャンパス存続義務は免除されていない。

3.在校生の就学権の確保が最優先されるべきことについて
(1)経営の状況が悪化した高等教育機関の対応として在学生の就学機会の確保が最優先されるべきことについては、「国の高等教育の将来像」(中間報告)平成16年12月20日中央教育審議会は第2章、2、(1)において(甲30号証)、
○ 今後、少子化の影響等により、在籍者数が大幅に減少して経営が困難となる機関も生ずることが予想される。中には、様々な手立てを講じてもなお経営が好転せず、学校の存続自体が不可能となる場合もあり得るでであろう。そのような際には、特に在学生の就学機会の確保を最優先に対応策が検討されるべきであり、そのために関係機関の協力体制を作っておくことが必要である。
○ また、平成16(2004)年の私立学校法の一部改正によって学校法人に対し財務情報の公開が義務づけられたこと等を踏まえ、各高等教育機関においては、学習者保護の観点からも、財務情報の積極的な公開に努めることが重要である。
  として、在学生の就学機会の確保と学習者への説明義務を強調している。
  更に、前記中教審中間報告は、
「2 高等教育の中核としての大学
○ 大学は教育と研究を本来的な使命としているが、同時に、大学に期待される役割も変化しつつあり、現在においては、大学の社会貢献(地域社会・経済社会・国際社会等、広い意味での社会全体への発展への寄与)の重要性が強調されるようになってきている。当然のことながら、教育や研究それ自体が長期的観点からの社会貢献であるが、近年では、国際協力、公開講座や産学官連携等を通じた、より直接的な貢献の役割を、言わば大学の「第三の使命」として捉えていくべき時代となっているものと考えられる。
○ 特に、人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとって、優れた人材の養成と科学技術の振興は今後の発展のための両輪として不可欠なものであり、この両者に占める高等教育の重要性にかんがみれば、高等教育の危機は社会の危機でもある。今後の我が国が活力ある発展を続けるためには、高等教育機関の側が自らを厳しく変革しつつ社会の発展に寄与するとともに、高等教育の受益者は学生個人のみならず社会全体であるという視点を明確に踏まえ、社会の側がこれを積極的に支援するという双方向の関係の構築が不可欠である。
○ このような観点から、高等教育がその社会的使命を十分に果たすことを前提としつつ、公財政支出の在り方及び民間資金を活用した支援の在り方について、幅広く社会の合意形成を図るとともに、産業界等による学生の採用時期・方法の工夫や適切な評価に基づく処遇など、高等教育の発展を支える各方面の取り組みを促すことが必要である。
○ 大学等の設置認可及びその審査の過程は、申請者と大学設置・学校法人審議会との「対話」を通じて、相応の時間をかけて、設置構想の実現可能性や信頼性を確保し、その内容を充実させる手続であり、高等教育の質を担保するための本来的な制度としての意義を有している。また、高等教育の質の保証は事後評価のみでは十分ではなく、事後評価までの情報の時間的懸隔に伴う大学等の選択のリスクを学習者の自己責任にのみ帰するのは適切でない。一部の外国にみられるような、学費の対価として安易に学位を取得させる非正統的な教育機関(いわゆる「ディグリー・ミル(またはディプロマ・ミル)」)の出現を抑止して学習者保護を図るための方策としても、一定の事前評価は必要である。
○ サービスという観点からみた場合、学校教育には、他のサービスとの関係で一般性と特殊性がある。特殊性とは、情報の非対称性、利用者が「学生」であること、単なる知識・技術の取得とは異なる(師弟関係や友人関係を含めた)学習環境の必要性、サービス享受後の効果に永続性があること、サービスの提供とその効果の検証に一定期間を要すること等を指す。
  学校教育が一般的にはサービスとしての市場性を有することに留意しつつも、「高等教育の質」に関しては、市場万能主義に依拠するのではなく、教育サービスの質そのものを保証する観点を重視していく必要がある。
  大学は、その設置形態の如何を問わず、大学としての社会的責任を深く自覚することが必要である。」
としている。
(2)ユネスコは、1998年10月の世界高等教育会議(加盟国162カ国)において、「ユネスコ世界宣言、21世紀の高等教育、展望と行方」を採択した。その宣言において、「学生達を高等教育の革新における主要なパートナー及び責任ある当事者とみなさなければならない。このことは、教育の水準に影響する諸問題、カリキュラムと教育方法の改準と評価、そして強度な枠組みの実行及び方針の作成と機関の運営に関わる者として学生をとらえるべきである(第10条)として学生を教育管理的視点でのみ位置づけるのではなく、単なる教育消費者的におくのではなく、教育の主体者、当事者として扱うこと求めている(私立大学の未来・改革と展望p44、甲31号証)
   又、「宣言の優先行動の枠組み」は、「学生を高等教育における関心の中心にすえ、その当事者の一員として認めること、学生は制度上適切な組織において、かつ現行の制度取り決めの枠内で機関の教育水準(教育過程および教育方法規準を含む)の革新及び政策決定を含まなければならない」(同書p47)と述べている。
(3)又、近畿私大三団体による「国庫助成の大幅増額を求める協同アピール」においても、「学生、父母、地域協議会や産業界など大学が教育研究活動を行う上で関わる第三者への説明責任を強く求められる」としている(甲32号証)。 被告が主張する入学者の減少が理由とならないことは、ことに在学生にとっては、当然のことである。

4.「在学契約、学校教育契約」の消費者保護の側面
  在学契約は、サービス提供契約の一種で無名・双務・有償の契約である。
  「わが民法典は、義務者が債権者に対して役務ないし役務を要素とする給付をなす義務を負う契約類型として雇傭契約、請負契約、委任契約及び寄託契約を定めるのみである。しかし、役務給付を目的とする契約はこれらにとどまるのではなく、今日の経済社会では、これら以外に重要な機能を果たしている役務給付契約が少なからずみられる。医療契約や弁護士、税理士選任契約などは、既述の如く、委任ないし準委任契約に含めることができるが、在学契約、英会話教室受講契約、エステティックサロンで美容指導を受ける契約、珠算塾、学習塾の入塾契約、スポーツジムでトレーニングを受ける契約などは、(準)委任というよりも、物品の提供や施設の利用などを含むサービスの提供であり、民法典には規定がない。
   これらの契約はサービス供給契約と総称することができよう。
  二 サービス給付と民法の適用
   サービス給付を目的とする契約もまた一般的には双務、有償契約であるから、契約の成立や効力に関する規定の多くが適用されうる。申込みと承諾による契約の成立(民521条以下)や同時履行の抗弁権(民533条)、危険負担(民526条)、契約解除に関する規定(民540条以下)がそれである。もっとも、特定商取引法の適用を受ける指定役務提供契約や指定継続的役務提供契約では、消費者保護のために契約締結の前及び締結後に一定の事項を記載した書面を交付しなければ、給付義務者は一定の不利益を受ける。その限度で契約当事者には契約の自由な締結に制限が加えられているとみることができる。同時履行の抗弁権も契約の両当事者に一般に認められるが、エステティックサロンや英会話教室との間のいわゆる継続的役務提供契約では、しばしば事業者が顧客に報酬の前払義務を負わせている。また予定されたサービスが一部給付された後でなされた解除は、告知としての性質を帯びるが、実際上給付内容がどれだけ実現したが、解約手数料が合理的であるかなどが精算にあたって問題となろう。
   民法では、売買に関する規定が性質の許す限り他の双務契約に準用されることになっているが(民559条)、提供されたサービスないし役務に瑕疵があった場合は、売買に関する瑕疵担保責任の規定(民570条)が準用されうるかが問題となるうる。しかし、サービスないし役務は、物ないし形あるものではないため、瑕疵担保規定を準用して処理すべきではなく、不完全履行責任(民415条)の問題とするのが妥当であろう。約束されたサービスが約旨に反しまたは不十分な場合は、顧客はそれに応じた代金の減額を請求でき、場合によっては(義務者にその能力がある場合)追完を請求することも可能である。義務者がそれに応じない場合や義務者に約束されたサービスを提供する能力ないし資力がない場合は、顧客は解除できる。また顧客が給付不完全により積極的な損害(瑕疵惹起損害)を被ったときは、債務者に故意、過失がある限り、損害賠償請求を認めるべきであろう。」(半田信吉、契約法講義p470)

5.
(1)確かに、女子大学が18歳以上の人口減少で学生の獲得競争が激化している傾向はある。それについて、同志社女子大学では「実学志向で学生を獲得する方向(薬剤師プランナーの資格取得を売りにして)や、京都橘女子大学のように「京都橘大学」とし共学化することを目指している(甲33号証)。本件被告も、守山キャンパスにおいて実学指向や共学化を目指すべきであり、国内で最も人口急増地である滋賀県南部地域での大学の成功は、守山キャンパスの高槻への移転でなくても実現できるものである。
(2)滋賀県勢要覧(平成16年版、甲34号証)によれば、滋賀県の人口は平成15年10月1日で136万人で昭和30年から増加に転じ、60年から平成10年まで年間1万3千人増加し、最近の人口増加率は全国で最も高い水準にある。特に、湖南地域は全国一の人口増加率である。近畿府県の人口の将来予測では、滋賀県は平成22年には144万人、平成32年には150万人であり、全国及び近畿他府県は平成32年には人口を減らしているので、滋賀県のみは人口増加が予測されている。しかも0歳から14歳迄の人口の予測は他府県と比べても減少が少ない。滋賀県中期計画(平成15年10月、甲35号証)は、2010年の人口を144万人と予測している。平成42年には人口が増加し続ける唯一の県であるとされている。又、全国と比較しても年令の構成は若いとされている。
   又、平成14年度版「滋賀の青少年」(甲36号証)によれば、滋賀県の大学進学率は平成5年から平成14年にかけて全国平均より5パーセント程高い(平成14年で49.6パーセント、全国平均44.8パーセント)。大学進学者の19パーセント(1398人)が滋賀県にある大学に進学している(同書p25)。
   又、滋賀県内における平成14年9月1日現在の高等教育機関は、
          国立大学    2校
          県立大学    1校
          私立大学    4校
          私立短期大学  4校
  の合計11校であり、県内大学の収容率からみた教育設備水準も全国の上位に位置するようになっている(p193)。
   このように、湖南地域の人口増加、若年人口の増加、大学の数等からみて、守山キャンパスの統合をしなくても定員割れは解消される可能性は大きいものである。

6.新聞のニュースにもあるとおり、大学祭に毎年1万人もの市民が参加するという信じられない状況があるということである(甲37号証の1、2)。
  守山市民には「大学のない街」から脱して「大学による街づくり」への期待があり、このことが信じられないような大学祭への多数の市民の参加となっている。
  又、新聞によれば大学祭に参加した市民から統合を惜しみ残念だとする声があった(甲38号証)。
  被告は、市民の多額の血税によってできたこの大学についての市民の「自分たちの大学」という期待を一顧だにせず、切り捨てようとしている。

7.なお、被告は守山キャンパスを就学場所とする現代文化学部の来年度の学生募集を停止している。
以 上


 関連事項/関連リンク

この事実に関する資料

大津地裁原告側「準備書面(3)」

 

 

 2005年01月13日

「守山キャンパス就学権確認訴訟」

原告の川戸佳代さん、
大津地裁に「準備書面(4)」を提出


大津地裁原告側「準備書面(4)」(全文)

平成16年(ワ)第573号 就学する権利等確認請求事件

原  告  川戸佳代

被  告  学校法人平安女学院

準備書面(4)

                               2005年1月17日

大津地方裁判所 民事部合議係 御中

  原告訴訟代理人弁護士   吉原 稔

第1 被告準備書面(2)の主張についての認否

1 被告は、上記書面において、「学生・保護者への対処により統合についての合意が成立した」と主張するが認否する。

  被告が主張するような説明会がもたれたのは、一部認めるがそれは被告としての当然のことである。しかし、原告を含むびわ湖守山キャンパス学生会より平成16年9月28日付で「守山キャンパスの高槻統合についての確認書」が提出され、「高槻統合は、大学存続のためにはやむを得ない決定であると判断し合意する」との約定が成立した事実はない。

  まず、「びわ湖守山キャンパス学生会」なるものは、守山キャンパスの成立時に学校主導によりつくられたものであって、学生によって自主的に結成されたものではない。

  又、この確認書なる文書は、竹内一夫教授によって作成されたものであって、作成日の9月28日には、フィールドワークの単位取得のため9月22日から9月30日迄の間アメリカに滞在していた学生自治会長「*****」が不在であったのに、その名で作成されたものであって(甲39号証の4、5)、真正に作成されたものではない。原告が戸田に9月30日に確認書の作成をしたのかと聞いたら、*****は「知らなかった」と答えた。又、本件確認書を提出するについて、学生大会を開いて学生の総意をきいた事実もない。

  甲39号証によれば、この文書が理事で現代文化学部長であった竹内一夫教授の下で作成された学生の総意・真意を述べたものではないことが明らかである。

2 仮に上記書面が真正に作成されたものであるとしても、学生自治会には、原告を含む個々の学生の在学契約上の権利についてを処分する権限はない。これは、労働組合法上の法的根拠と法人格をもった労働組合ですら、個々の労働者の固有の権利について、処分権はないことからも当然である。

  『なおとうぜんのことながら、組合は、個々の組合員から特別の授権がある場合をのぞいて、使用者との協定により、組合員の賃金債権につき打切りその他の処分をする権限は有しない。室井鉱業所豊徳炭鉱事件判決は次のごとく判示した。

  「労働組合は本来組合員の労働条件等を維持改善することをその目的とし、その労働協約を締結するの権限もこの目的の範囲内に限るべきであるところ、組合員が労働協約にしたがって就労した結果、既に具体的に個々の組合員に帰属している賃金債権を処分するが如きは右目的の範囲内に属しないのであるから、労働組合と使用者との間の契約によって個々の組合員が使用者に対してすでに取得している賃金債権につき、放棄その他の処分をなすが如きは、個々の組合員が自らこの処分を特に労働組合に委任したという別段の授権があれば格別、そうでない限り労働組合はかかる処分をなす権限を有しないと解するを相当とし、従って前記認定のように前記協定が締結されたからといって申請人等のうち前記組合に所属していた者の被申請人会社に対する未払賃金債権には何等の消長をきたすものではない」』(現代労働法講座4、団体・交渉、p221)

  権利能力なき社団ですらない学生自治会に、在学生の在学契約上の権利についての処分権はないことは、明らかである。本件では請求の趣旨から「原告を含む在学生」を「原告」と訂正しているのもその趣旨である。

3 又、被告は統合に反対しているのは原告だけであるというが、そうではない。原告を含む在校生315名が平成16年12月24日の段階でも反対の署名を維持しているし、12月24日の第2回弁論でも統合に反対する4名の在校生が期日に傍聴をしているのは、そのことを示している。

以 上


 関連事項/関連リンク

この事実に関する資料

大津地裁原告側「準備書面(3)」

 

 

 2005年1月24日

川戸佳代さん

大津地裁に「陳述書2」を提出


陳述書2(全文)

平成17年1月24日

陳述書

大津地方裁判所 御中

川戸 佳代

1 前回の陳述書を提出させていただいてから3ヶ月が経過いたしましたが、その後びわ湖守山キャンパスの高槻キャンパスへの統合に向けた動きは着々と進められています。総務課の職員が守山キャンパス内の備品に番号の書いたシールを貼っています。これは備品を高槻キャンパスへ持ち出すための用意ではないかと思われます。びわ湖守山キャンパスは滋賀県と守山市から助成金をいただいて開設されたということですから、県や市の了解を得ずに勝手に備品を持ち出してよいのでしょうか。

2 キャンパス統合に向けた動きは、いよいよ各学生に対しても向けられてきました。1月11日、私が所属するゼミの学生は、担当教員から「キャンパス統合後の通学交通費調べ」という用紙を渡され、25日までに提出しないと高槻キャンパスへの交通費補助が受けられないという説明を受けました。その用紙には、「通学交通費は、統合前と統合後の差額が、支給されます。下記の確認をお願いします。正しい場合は、確認欄に日付を記入し、捺印またはサインをしてください。なお、支給額は通学定期10ヶ月分相当額です。」という説明があり(この下線部分はこの用紙の通りです)、「統合前の通学経路」と「統合後の通学経路」の箇所には、学生の住所によって異なる金額が記入されています。これは学院からの学生に対する強要です。学院は学生の一人一人に捺印あるいはサインをさせることによって、一人一人の学生が統合に合意したという事実を作ろうとしています。学生は高槻キャンパスに統合される場合に支払われる交通費のことと理解して捺印あるいはサインをするでしょう。提示された交通費に納得いかない学生は、学生サービス課に行くように言われました。実際に学生サービス課に行った学生は、学生サービス部長に個人的に説得を受けていました。このことは、高槻キャンパスへ行きたくないのに行かなければ卒業はできないということを意味し、統合に合意するように迫る脅迫めいた行為であると思います。学期末でレポート提出や試験準備のために忙しく、さらに三回生にとっては就職活動を間近に控えた大事な時期に、交通費支給という名の下に、学生をこのような立場に立たせることは許しがたい行為であると思います。交通費の補助を25日までに提出しない学生に対しては、学生の自己責任とするつもりでしょうか。それでは、まるで学院から提示された交通費補助額を了承しなければ大学を辞めてくれて結構という印象を与えます。

このことで学生には混乱が生じています。高槻キャンパスに通うことになるのなら他の大学を選んでいた学生もいるはずです。実際、多くの学生が4月から高槻キャンパスに通うことに対して不安を抱いています。しかし、なかには4月から高槻キャンパスに通うことを拒否して、他大学・専門学校に編入を決めた学生もいます。それは、びわ湖守山キャンパスが守山市にあるから入学したからです。たとえ学院が寮費などを補助すると言っていても、自宅から通学できるからびわ湖守山キャンパスに入学した学生にとっては大きな苦痛です。そのなかの一人は、他大学の編入時に支払う入学金を自分がアルバイトをして貯めたお金を当てるそうです。このような犠牲を払ってまでも高槻キャンパスに通うことを拒否している学生のことを、学生数減少による経営困難を統合の理由として挙げている学院はどのように考えているのでしょうか。数少ない学生の一部が他大学へ移ってしまうことによって、さらに学生数を減らすという事実を学院はどのように考えているのでしょうか。せっかく入学してきた学生をなぜ大切にしないのでしょうか。

3 学生に対する教育サービスの質を疑うようなことがここ数ヶ月の間に起こっています。たとえば、秋学期が始まって2,3週間経ってから、私が受講している専任教員(教授)よる授業(英米文学U)が休講となり、2週連続で休講になったあと、新しい非常勤の講師に交代してしまいました。秋学期の始めに私たちは、途中で先生が変わるなんて聞いていませんでした。新しい非常勤講師の先生を紹介されるとき、病気が理由で先生が交代すると聞かされました。しかし、先生の自宅に電話してどうしたのかときいたら、先生は突然自宅謹慎になったと話していました。新しい非常勤講師の授業内容は前の先生が行っていた授業内容とは全く異なるため、すでに購入していたテキストは不要になりました。シラバスは受講科目を選択する際に重要なものですが、この講師はシラバスに書かれている内容とはまったく異なる授業を行っています。

また、秋になって急に定年退職の年齢が下げられたということで、今年度で辞める専任教員がいます。私のゼミ担当教員もその一人です。この教授は統合について学生に対する説明会で説明した教員です。来年度はゼミを担当できないと知らされた私たちゼミ生は、ゼミ選択時にそのようなことは知らされていないことから、今の時期になってそのようなことは無責任であると抗議したため、来年度は非常勤で担当することになったようです。しかし、専任教員と非常勤講師では、ゼミ生の卒論指導や就職指導には大きな差(たとえば指導時間など)があるはずです。さらに、もう一人、統合の説明会の場で統合の白紙撤回を学生が求めた際、「できません」と言い切った教員が4月から他大学へ移ると聞かされました。このように、学生に対して統合を押し付けてきていた教員自らは来年度高槻キャンパスで教えないという矛盾をどのように理解したらよいのでしょうか。これでは学生に対して責任が無さ過ぎます。学生にとって教員が途中でいなくなるということは大きな損害です。このように学生の学習環境が次々に失われていきます。教職員は他の職場に移ることができます。しかし、学生はそんなに簡単に他の大学に入ることはできません。

4 私は「平安女学院大学守山キャンパスを守ろうの会」の代表として提訴しています。現時点においても、高槻キャンパスへの統合に対して反対しているのは私だけではありません。三回生のメンバーのなかには、原告になることによって就職活動などに影響が出ることを心配したり、裁判に関わることを親から反対されているなどの事情があることから、私が代表として提訴に踏み切りました。学院はいかにも私以外の学生が全員統合に納得しているような言い方をしています。しかし、国際コミュニケーション学科二回生の学生の陳述書にもありますように、統合に対していまだに納得できない学生もたくさんいます。

5 去る1月21日、学院は創立130周年を迎え、記念式典が京都宝ヶ池プリンスホテルにて盛大に行われたそうです。経営困難と言って統合を強行しようとしている学院のこのような出費に対してわたしは納得がいきません。経営困難な大学にそれを知らずに入学してしまった学生は、大きな犠牲を払うことになるのです。経営困難という理由は、授業料を払う私たち学生にどのような関係があるのでしょうか。

6 統合予定とされる4月まであと2ヶ月前になってもびわ湖守山キャンパス内はきれいに清掃され、施設は維持管理されています。それは、私が入学した当時と同じです。しかし、大きく異なるのは、キャンパスに入る人が厳しくチェックされ、講義棟の出入り口には、「学生以外入校禁止」というたて看板が立てられているなど、市民に開かれた大学とは全くかけ離れていることです。キャンパス内ではもう市民の方々と話す機会は無くなりました。私たちが追い出された後、このキャンパスはいったいどうなるのでしょうか。「大学機能を残すことができるのならば、なぜ学生をびわ湖守山キャンパスで卒業させてあげられないのか、学生がかわいそう」という教職員の声も聞かれます。

7 「平安女学院大学びわ湖守山キャンパスを守ろうの会」は、これまで、文部科学大臣、滋賀県知事、守山市長に署名を提出してきました。しかし、「学生の気持ちを真摯に受け止める」というだけで、これまでどこにも助けていただけませんでした。学生会執行委員からは「忙しいから」と跳ねつけられたこともありました。誰にも守ってもらえないとしたら、学院が決定した統合を学生は黙って受け入れ、従わなければならないのでしょうか。もしびわ湖守山キャンパスでもう学ぶことができない場合、私は高校を卒業して大学に進学したことを一生後悔するでしょう。
 びわ湖守山キャンパスで学ぶ学生がこのキャンパスで卒業できるように是非よろしくお願いいたします。

以上


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陳述書2(全文)

 

 

 2005年01月26日

原告側学生 「陳述書」2



2005年1月26日

陳述書2

大津地方裁判所 御中

私は、平安女学院大学びわ湖守山キャンパス,国際コミュニケーション学科2回生の学生です。昨年、突然の「びわ湖守山キャンパス撤退、高槻キャンパス移転」という学校側からの一方的な決定から、慣れ親しんできたキャンパスでの順調だった学生生活が奪われることに対して精神的にとても苦痛を感じてきました。私達学生の、守山キャンパスで学んで卒業したいという、ただそれだけの願いも訴えも理事会の方々に無下に扱われ、さらに苦痛に感じてきましたが、ようやく、キャパス移転について納得はいかないものの、理事会側が移転後に最善の環境で学習させてくれることを信じて、なんとか気持ちを整理し高槻キャンパスで学業に励もうと思いはじめました。しかしそれすらも裏切るように、移転後も学びたいと思っていた教員の人数は減り、楽しみにしていたゼミの数は昨年のゼミ数の半数以下になりました。これが最善の学習環境といえるでしょうか。ゼミ数の削減や教授が少なくなっていっていることに対しての不安や怒りを感じているのは私だけではなく、多くの学生が思ってはいても学校側には言えずにいるだけです。キャンパス移転だけでも、私達学生からすればとても納得しがたいものなのに、その上学業まで制限されてはどうすればよいのでしょうか。他大学への編入も考えられますが、大学進学時に考えに考えて決めた私はそんな簡単に編入を考えることはできません。ですが、学校側にこんなにも理不尽な態度をとられ続け、それでも信じていってよいのか不安でいっぱいです。

私は大阪に住んでいるので高槻キャンパスになったら通いやすくなりますが、あらゆるものを失うことになります。私は、守山キャンパスで守山市の小学校のボランティア活動を1回生の頃からしてきました。守山キャンパスだからこそできたことです。しかし、今年4月からは高槻キャンパスに移転していますので活動が大変しにくい状況になります。でも、私はキャパスが高槻になってもボランティアを卒業するまで続けていくつもりです。2年間で築いた守山市の小学校との関係を可能な限りつづけていきたいと思っています。

先日の裁判での学校側の準備書面などを読んで、学生に対する思いやりの無い態度が昨年から全く変わっていないことに対してものすごく残念に感じ、また、とても悲しく思いました。

私はただ、守山キャンパスで勉強し卒業したいというそれだけのことを望んでいます。

以上



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「陳述書」2

 

 

 2005年01月28日

「守山キャンパス就学権確認訴訟」

原告の川戸佳代さん、
大津地裁に「準備書面(5)」を提出


大津地裁原告側「準備書面(5)」(全文)

平成16年(ワ)第573号 就学する権利等確認請求事件

原  告  川戸佳代

被  告  学校法人平安女学院

準備書面(5)

                               2005年1月28日

大津地方裁判所 民事部合議係 御中

  原告訴訟代理人弁護士   吉原 稔

第1 請求の趣旨の訂正

1,請求の趣旨を以下のとおり訂正する。

 「1.原告は被告に対し、原告が卒業するまでの間(卒業最短修業年限)被告の設置するびわこ守山キャンパスにおいて就学する権利(教育を受ける権利)があることを確認する。

  2.被告は原告に対し、原告が卒業するまでの間(卒業最短修業年限)びわこ守山キャンパスにおいて就学させねばならない。」と訂正する。

2,訂正の理由

  原告が在学する期間であっても、留年すれば最長8年間になるが、最短で卒業する期間を「卒業最短修業年限」と称している(乙第14号証P2下から2行目)ので、その期間とすると、原告は現在3年生なのであと1年となる。

第2 被告平成17年1月24日付準備書面(3)の主張についての認否及び反論

1,同書面 P2において、

・7行目 「・・・全学を挙げての被告学園の財務分析、(・・・がスタートした)」となっているが、少なくとも学生はこの事に関わっていない。

・9行目 「全学のあらゆるセクションから問題点や改善策が提出された」とあるが学生には全く関わりなく行われた。

2,同書面 P,3において

@ 被告は、経営が悪化した原因は守山キャンパスの入学者数が減少傾向であっ

 ためとしているが、2000年(平成12年)に守山キャンパスを開校していながらわずか2年後の2002年(平成14年)には高槻キャンパスに大学(短期大学を存置して、別に4年制の生活環境学部をつくった)を置くなどしている。

 経営が困難であるのならば、高槻キャンパスに多額の経費を必要とする新たな学部をつくらずに、守山キャンパスの学生募集に最善をつくすのが当然である。

  教職員の給料カットを行うほどの財務状況ならば、高槻に短大を存置しながら、新しく高槻に4年制の学部を作り、高槻キャンパスに新学部(生活環境学部)設置に伴って教員の採用など行っている。さらに、新学部用の書籍の購入も含め設備の拡充のために新たな支出をしているのは矛盾している。

 統合するまでに、留学生の受け入れなどコースの改変、学科の名称変更等を試みる事無くその努力を怠って統合を決定している。

  被告はシュミレーションを行ったというが、いかなるシュミレーションが行われ、経費がどのように使われたのかは知らないが、守山キャンパスの廃止を前提とした新聞の全面広告や電車の中刷り広告などを行い、守山キャンパスの閉鎖を前提に、高槻キャンパスでの募集のみ行っているが、守山キャンパスが開学してから守山キャンパスへの学生募集で、このような大規模な募集広告やキャンペーンが行われた事実はない。宣伝不足のため守山市内に在住する人でさえ、当初は平安女学院大学がどこにあるのか知らなかったほどである。原告も入試の際に守山市で迷った覚えがある。

A 同P3 21行目において

 「平成16年3月9日開催の常務理事会で平成17年度より高槻キャンパスへの統合移転を最終決断し、同月11日の理事会で協議され、承認された」と主張するが、3月9日に統合決断が出ていながらも4月に新入生に対して事前説明を全くせずに学生を入学させている。

  きわめて詐欺に近い悪質な行為である。

 又「赤字赤字」といいながら、財務諸表を学生や県、守山市に対して全く明らかにしていない。

3,同書面 P,4 において

@ 1行目において

  統合する以外に女子大を共学化するなどの検討がなされていない。

 もともと守山キャンパス(在学生471人、内1年生から3年は313名)より高槻キャンパスの大学生数(生活環境学部の3年生で219名)の方が明らかに少ないのに、なぜ人数の多い守山キャンパスの学生の負担を強化するような高槻への統合という事態を選択したのかが明かでない。

  「学生会執行委員に対して何度も説明を行い折衝をしている」というが、全学生が説明会に参加できる機会はたったの2度だけである。5月の説明会と7月30日の説明会(事実上の夏休みに入っていて、既に卒業単位取得のために必要なビジネスインターシップなどの研修を始めている学生もいる中であったので100人しか参加者がなかった。)であったが、それには理事長・学長の出席は無く、責任ある説明はされていない。 

A 10行目において

「・・・被告学園は、対処してきた。」とあるが、未だに通学費の差額の補助の支払い方法及びその時期さえ明示されていない。それどころか、本年1月11日の授業の時に「1月25日までに通学の差額金額を署名押印して申告せよ、それがすぎれば通学費の差額の補助金は出さない」として、学生に事実上の移転の同意書面を求めるという「踏み絵」を求めている。

B 18行目において

「高槻キャンパスの施設・設備の拡充」とあるが、未だに拡充されていない。

 現実に、高槻キャンパスにおいてさえ学生の学習環境が奪われている。教員のリストラや、希望をなくしたことによる退職により、文部科学省の認可により完成年度(開学から4年生が卒業するまでの4年間)までは辞めてはいけないのに、完成年度までに9名、完成年度の翌年には特に5名の教員が、今年度は途中で2名が辞めているが、異常な事態である。それにより教育サービスの著しい低下が生じている。

C 22行目において

「大学のイメージ・・・・就職活動などへの協力、努力」とあるが乙第1号証の1〜4によると、守山キャンパスの在学生には滋賀県内出身者が約6割いる。これらの多くは自宅から通勤できる滋賀県内に就職を希望しているが何らの対応をしていない。

4、同書面 P,5 「学生会の了解」について

  学生会は全学生により組織されているものであるが、学生会執行委員は7人である。この執行委員が7月7日から全学生の意見を聞かずして一方的に統合を進めていた。あたかも学生会によって合意が得られたように受け取れるが、確認書に目を通し合意をしたのは学生会執行委員7名のみである。  

  この確認書が10月4日に掲示され、その後2、3日の間、学生会の掲示板に「夏休み中の学生会の活動に関する経過報告」と題され、この確認書が貼られていた。原告を含め他の学生も大勢見ているものと一致する。

  このことから被告の言う「竹内教授が学生に頼まれてサンプル(草案)を起案したもの」ではないことは明らかである。

  学生会執行委員は学生部(竹内教授理事・中沢教授)にコントロールされている。

  5月18日の統合の説明会において、守山キャンパスは年間2億円の赤字だと担当教員から説明を受けている。それ以外の財務状況の説明を受けていない。7月30日に行われた説明会において入学者数の減少傾向を示すものを説明されたが、それ以上に詳しく説明を求めても何の説明も無かった。

  高槻キャンパスに統合したからと言って、定員割れを起こさない根拠はない。

 高槻キャンパス新学部設置(平成14年)は守山キャンパスが定員割れを起こす中での設置である。

第3 被告は「統合しても充実した高度教育を実施する」、というが、甲第40,41、42号証のように、統合された後の高槻キャンパスでは、守山キャンパスでの授業が削減される。単に校舎がかわるだけではない。学びたいと思っていた教員の人数は減り、楽しみにしていたゼミの数は昨年のゼミ数の半数以下になった。ゼミ数の削減や教授が少なくなっている。これでは最善の学習環境とは到底言えない。

第4 

(1) 仮に本件における守山市及び滋賀県の被告に対する補助金交付に伴う契約(基本契約)が私法上の契約として「負担付贈与契約」である(被告が守山キャンパスを建設し、相当期間そこで学生を就学させる義務を負うという負担を付して、守山市と県が補助金を贈与する負担付贈与契約)と構成した場合、負担付贈与契約には民法553条により双務契約の規定が適用される。

  本件の場合、贈与は先履行されているので、補助金を交付され学校が建設され、就学が開始されたあとは、もっぱら被告が負担を遂行する事業遂行義務を有することとなる。

(2) この事業遂行義務という負担を免れるのは、守山市と県との合意によって事業目的に反する用途への転用または事業の廃止、(補助金の用途の他目的使用や事業の廃止)をするには、交付要綱や交付決定の交付条件によって知事又は市長との協議による承認以外には免責されることはない。  これは双務契約において、一方の負担する義務についての約定解除権を被告が基本契約に置いて自ら制限放棄しているものに他ならない。

(3) 本件在学契約は、第三者のための契約又は規範設定契約としての守山市及び滋賀県と被告との間に交わされた契約を基本契約として、それに付随してそれを契約の内容として設定された個別契約であるから、被告が守山キャンパスで就学させる義務を免れようとすれば、基本契約において、その義務を合意により解除するか、滋賀県と守山市から免責される必要があり、それがなければ、個別契約としての在学契約の就学義務も免除されない。本件では基本契約において、自ら課した約定解除権の制約上、解除も免責もできないものである。

(4)被告の学校法人平安女学院寄附行為(乙第38号証)p7附則

(経過措置)によると、

「平安女学院のキリスト教科は改正後の寄附行為4条1項の規定にかかわらず、平成12年3月31日に当学科に在学しなくなるまでの間、存続するものとする」としているが、学科の廃止であっても、今のキリスト教科を専攻した学生が在学する間はキリスト教科は存続するとするのは当然のことである。

 本件はその当然のことを求めているのである。


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この事実に関する資料

大津地裁原告側「準備書面(3)」

 

 

 2005年01月28日

原告側学生 「陳述書」1



2005年1月28日

陳述書1

大津地方裁判所 御中

私は、高校時代に電車に乗り通学していました。でも、電車に乗ると人に酔い気分が悪くなり遅刻してしまうことから、電車に乗らないで通学できる高校へ途中で転校しました。その学校の進路指導の先生は、「電車で通わんでいい学校へ進学しなさい」と守山市にある平安女学院大学の受験を勧めてくれました。学生数が1学年100人ほどの女子だけの小さな学校ですが、色々な人と仲良くできることが私にとって大きな意味を持ちます。全学生数が400人ほどなので、ほとんどの人の顔は知っています。教職員はとても親切で、先生の研究室におしゃべりに行ったりして、私は一日の長い時間を学内で過ごしていました。

私は、三回生になったとき、「卒業まであと2年頑張ろう」と決意していました。そこへ突然「統合」の話が出てきました。私は最初「うそやろー」と思っていました。はじめ統合するかもしれないというような感じから、いつの間にか統合決定になっていました。

私はこの学校が大好きです。それを学校の経営がうまくいかないからと追い出されるのは勝手すぎます。「高槻やったら通えんこともないやん」と言う人もいますが、そういう問題ではありません。私は一度高校を途中でやめているので、「この大学だけは続けるぞ!!」と決めていました。キャンパス内の建物の配置などにも満足し、いまはどこに何があるかもわかるほど慣れて、あと少し(2年間)だと思っていたのに、高槻に行くということが許せません。私は、このびわ湖守山キャンパスが気に入って入学したのです。ここで働く職員さんや守衛さんや食堂の職員さんは、地元の人たちなので大好きです。

私は、統合が決まってからの大学のやりかたに腹が立ちます。「決まったことやし、卒業したかったら従え」という感じの対応で、教員に相談に行っても、教員は給料をもらって雇われている身なので何も言ってくれないし、助けてももらえませんでした。統合の話が出てから今まで本当に嫌な気持ちで過ごしました。この一年を返してほしいです。私はもう一年ここのキャンパスに通えることを強く望みます。今は、自分の家を急に奪われて住むところが無いのと同じ気分です。

学校はお金が無いし、あと3年間も運営できないと言うわりには、4月から高槻に学生が通うための交通費を補助したり、宝ヶ池プリンスホテルなどという豪華なホテルで創立記念日のパーティーをやったり、先端技術センターにするなどと言ったりして、「お金があるやん」と思います。もし、高槻にキャンパスがなかったら私たちはどこへ行かされていたのでしょう。沖縄や北海道に行けとでも言われたのでしょうか。または、学業を諦めて働けとでも言われたのでしょうか。経営が無理だとわかっていて今春一回生を入学させたのは矛盾しています。責任をとって、今の一回生が卒業するまで、借金を作ってでも存続させるのが筋だと思います。下級生もどんどん辞めていくので辛いです。契約違反です。経営に失敗しているのは学校なのだから、学生に迷惑がかかることはおかしいことです。そのことを当然のように、学校は偉そうにしていることに腹が立ちます。統合することを理事会とかだけで決めるのはおかしいし、学生の意見はまるっきり無視して統合を強行に進めている学校はおかしいです。

私は三回生ですから、卒業まであと一年です。学校からは、最初の説明会のときに、統合によっていろいろな授業が取れるなどのメリットがたくさんあると聞かされました。でも、私たち三回生は高槻に行くときは四回生で、授業はあまり取れません。保護者に対しての説明会では、統合は「給料が高くても良い先生を保ち教育の質が落ちるのを防ぐため」などのさまざまな言い訳をしておいて、あげくの果てに、「このまま進めば学校自体がつぶれて、君らの行き場が無くなるよ」と脅すような状態でした。私の大好きな先生と過ごせるなら統合も仕方ないと思っていましたが、先生はどんどんと辞めていきます。さらに学校は新しい守衛の女の人数名を雇っています。中庭もきれいに整備したりしています。私は「えっ!お金あるやん!」と思いました。説明会で学校が言っていたことと矛盾していることがたくさんありすぎて、何を信じればいいのか分かりません。経営困難というわりには、私たちの授業料などのお金の使い方が間違っているのではないかと思います。 

私は、大学がここにあるから頑張ってこれました。最後までここで勉強したいです。守山キャンパスは本当に素晴らしいです。この良さをいつまでもいつまでも残したいし、下級生にもここで学んで卒業してほしいです。私たち学生が卒業するまでこのキャンパスを守ってください。お願いします。

以上



 関連事項/関連リンク

この事実に関する資料

「陳述書」1

 

 

 
 2005年01月31日

「守山キャンパス就学権確認訴訟」

第3回口頭弁論が開催



1月31日 第3回弁論

 被告側は私だけが統合の中止を求めている学生であると主張していますが、私以外の多くの学生も守山キャンパスの存続を強く望んでいます。その中の2名が陳述書3、陳述書4を大津地裁に提出しました。


 関連事項/関連リンク

この事実に関する資料

川戸さん「裁判日記」

 

 

 2005年02月14日

「守山キャンパス就学権確認訴訟」

原告の川戸佳代さん、
大津地裁に「準備書面(6)」を提出


大津地裁原告側「準備書面(6)」(全文)


平成16年(ワ)第573号 就学する権利等確認請求事件

原  告  川戸佳代
被  告  学校法人平安女学院

準備書面(6)

2005年2月14日

大津地方裁判所 民事部合議係 御中
  原告訴訟代理人弁護士   吉原 稔

第1 本件在学契約が第三者のための契約であるかについて

1 第三者の為にする契約が成立するためには、まず、契約当事者間に第三者に直接に権利を取得させる旨の合意がなければならず、要約者A、契約者B間の契約の内容が第三者に事実上の利益を与えるにすぎない趣旨のものである場合は、成立しない。

  本件で守山市と被告、滋賀県と被告との補助金交付に伴う契約は守山市と件が、被告が高校卒業生に対して守山キャンパスで就学する  金をつくるために、守山キャンパスえお建設するについて、その60%近い額に補助金を交付することに対し、被告が守山キャンパスを建設し、そこで授業をし、教育の場所を開設することを明文の文書で約束し、守山キャンパスの開設後に被告の守山キャンパスの就学の勧誘に対し入学申込みをした学生の申込みを承諾し、在学契約を継続し、その学生が守山キャンパスにおいて授業を受ける権利を取得させるものであり、第三者に守山キャンパスでの就学権を付与させるもであるから、明確な第三者のための契約である。

これは公法上の利用関係における琵琶湖という公有水面における遊漁権(琵琶湖でブラックバスを釣る権利)のような単なる反射的利益では決してない。

 又、第三者のための契約は第三者が契約時に現存していなくても有効に成立するし、第三者が特定していなくても特定しうるものであればよく、受益の意見表示のときに現存し、特定していればよい。(品川孝次著、契約法P392) 本件との類似事案で、

 日の出町谷戸沢廃棄物広域処分場 記録問題請求訴訟の東京地裁八王子支部平成8年2月21日判決は、住民が第三者として公害防止協定に基づく廃棄物処分場のデータ等の閲覧謄写請求権の有無について、

「@ 第三協定の第12条(4)では、「乙(原告組合)は、処分場に関する資料の閲覧等について、周辺住民から要求があったときは、甲(原告日の町)

を通じて資料の閲覧又は提供を行わなければならない。」と定められている(乙一の1)ところ、反訴原告は、右協定はいわゆる第三者のためにする契約であり、契約当事者でない「周辺住民」である反訴原告が、第三者として資料の閲覧等を請求できると主張するのでこの点を検討する。

A 民法五三七条にいう、いわゆる第三者のためにする契約とは、契約当事者が、自己の名において締結した契約によって、直接に第三者をして権利を取得させる契約をいうところ、第三者協定が原告らと第三自治会との三者間で締結されたことは当事者間に争いがなく、第三者協定の第一二条(4)は、協定当事者以外の第三者である。「周辺住民」から要求があったときは、原告組合は、原告日の出町を通じて資料の閲覧又は提供を行わなければならないものとし、「周辺住民」に資料の閲覧又は提供の請求権という権利を取得させていると言えるから、第三者協定の右条項部分は、「周辺住民」を第三者とする、第三者のためにする契約であると解することができる。」 と判示している。

本件在学契約との比較でいえば、「住民が要求したときは、資料の閲覧提供を行わなければならない」として、第三者のための権利の付与を「しなけれならない」と規定しているのに対し、在学契約は「住民」と限定はしていないが、広く全国から応募する学生が入学金を払って「就学する権利を付与する」そのためにキャンパスを建設するという約旨を明文で規定していることでは「約旨性」は在学契約の方がより明確であり、第三者の特定性については、一般住民であるのに対して、入学申込者として在学契約の方が特定性があり、一般住民が無償による要求であるのに対して在学契約は入学金を払って在学契約を結という有償性があり、どの判断基準をとっても、日の出町事件よりも、在学契約の方が第三者の為の契約を認めやすいといえる。

 なお、第三者のための契約の成立要件として、第三者に権利を取得させるとともに付随的な負担を負わせることもできると解される。

 例えば、第三者Cが諾約者Bに対して300万円を支払えば、BはCに不動産の所有権を移転するという要約者、諾約者間の契約がこれである。(品川孝次著、契約法P394)

 本件在学契約は双務有償契約であるから、在学者が第三者として入学金を払うという負担を負うことは当然である。

2,本件在学契約は第三者のためにする契約という形式における規範契約(規範設定契約)である。すなわち、

※2「規範契約が個別契約の兩當事者若しくはその團體の間で設定されないで、規範契約の一方の兩當事が局外者と規範契約を締結する場合には、變形的な規範契約が存在することになる。この場合にも一つの規範契約は存在するが、それは所謂第三者のためにする契約(Vertrag zugunsten Dritten)という形式における規範契約である。この第三者のためにする契約という形式における規範契約は概して双方的規範契約と類似的に扱われ得るものである。かかる規範契約における所謂局外者(AuBenseiter)なるものは何等規範契約に關與しないものであるが、これは利害關係る者であり、規範契約の適用範圍内に入る關與者(Beteiligter)である。」

第2、守山キャンパスを廃止する権限がないこと

1,被告が主張する大学の自治による守山キャンパスの廃止、高槻キャンパスへの統合が大学の自治、大学の自主的決定権の行使であるとの主張は、在学契約における給付内容の一部解除であるとの主張であると理解しても、被告にはそのような解除権はない。

また在学契約には原則として民商法び適用がある。つまり、民商法による実体的規制を受けるということである。民商法の世界ではもちろん、契約に拘束されるというのが、一般原則である。民商法のもとで、契約の当事者の一方が、契約を破棄(解除)できるのは、法律に特別の定めがある場合か、原則として相手方に契約の不履行など契約を破棄(解除)されてもやむを得ない事情がある場合に限られている。

本件のように「大学の自治」による裁量によって契約を破棄(解除)できることにはならないのである。

高校や大学などの校舎、学科の廃止にあたっては、生徒、学生が選択して入学した学校である事が明確であるため、当然のこととして、在校生、在学生が卒業した後に、学校、学部、学科などの廃止手続をとることが広く行われている。それが常識である。現に被告でも、キリスト教学科の廃止は在学生が卒業した後に行っている。

2,行政法の領域においても、公の営造物の廃止についての裁量権の濫用、権限の逸脱がある場合は違法である。

 大阪地方裁判所に係属した高石市立東羽衣保育所廃止取消請求事件に提出された龍谷大学法学部教授甲村和之教授の意見書によると、

※3

ウ これらの判決・決定を踏まえて、行政法学では、公の施設の利用の権利、公の施設の廃止と住民・権利利益の関係が活発に検討されるようになる。そして、この問題については戦後当初の行政法学説を代表していたといってよい原・前掲書の改訂新版である『公物営造法(新版)』(有斐閣法律学全集、一九七四年)は、四七一〜四七三項で「公共施設の廃止」について詳細に検討し(関連した検討が二五四〜二六一項でもなされている。)、結論として、次のような新しい見解を提示した。

 「たとえば、鉄道・軌道・道路・病院等の公共施設についても、これらの施設が社会公共の福祉のための給付行政として行われ、本来授益的性質をもつものであるが、少なくとも、これらの施設の利用が住民の日常生活と密接に結びついているものである限り、鉄道・軌道等の廃止、道路の路線の廃止、病院の統合による特定の病院等の廃止によって、従来の利用者の日常生活が著しく不便になり、あるいは具体的な生活利益が侵害されるような場合には、利用者は法律上保護される利益の侵害として、その廃止処分を違法として、その取消を求める訴えの利益を有するものということができるであろう。」(四七三項)

 原田尚彦『地方自治の法としくみ(全訂三版)』(学陽書房、二〇〇一年)も次のように説く。

 「公共施設をどのように設置し配置するかは、原則として地方公共団体の政策的判断に委ねられている。個々の住民に、特定の施設の設置やその存続を要求する権利が当然に認められるわけではない。……しかし、今日、自治体住民は住民の生活必須施設を少なくとも住民のシビル・ミニマムを保障できるよう配置すべき法的責務を負うから、施設の廃止等によって特定の住民の生活が著しく困難となり生活権の侵害を招くような特段の事情がある場合には、例外的に、当該住民に施設の存続を求める法的権利が承認される余地があると解される」(一九八項)。

 以上の見解は、公の施設・公共施設廃止処分取消訴訟の訴えの利益・原告適格を中心にして述べられているが、住民・利用者の法律上保護される利益が違法に侵害されている場合、裁判所はその取消を命じ得るとするものである。

 オ 以上のような最近の行政法学の通説的な立場によれば、公の施設の廃止については、その入所者・利用者の権利と関係づけて考察しなければならないということができる。

 ところで、ウ、エに紹介した諸学説は、公の施設の利用形態の違い、すなわち、いわゆる自由利用・一般利用の公の施設、利用のつど許可・特許を得る公の施設および継続的な利用者がいる公の施設という違いを十分に意識して、その廃止について考察していることは必ずしもいえないように思われる。諸学説は、主に前二者つまり現に継続的な利用者にない公の施設を念頭におき、その廃止により住民の利用権が侵害されるのはどのような場合か、という問題について述べているといってよいであろう。そのため、諸学説は、「従来の利用者の日常生活が著しく不便になり、あるいは具体的な生活利益が侵害されるような場合」(原)、「利用者のなかでも、生活上の特段の利益を有する者に着目して」(塩野)、「特定の住民の生活がいちじるしく困難となり生活権の侵害を招くような特段の事情がある場合」(原田)などと、訴えの利益・原告適格あるいは廃止の違法性が認められる場合をかなり限定しようとしている。

 ところが、本件では、保育所という公の施設を現に利用しているものがいる場合に当該保育所を廃止することは、利用中の者の権利の侵害になるのではないか、ということが問題となっている。言い換えれば、継続的な利用関係にある公の施設の廃止の当否が争われている。具体的にいえば、控訴人X1については平成一七年三月三一日まで、同X2については平成一七年三月三一日(B)および同一九年三月三一日(C)まで各児童を在籍させること、つまり本件保育所を利用することが契約上認められている(このことは原判決)も承認している。)。そのような本件保育所の利用契約の存続期間中の廃止は、利用者である原告らの本件保育所を利用する権利(保育所選択権)の侵害に当たるのではないか、という問題が本件の核心である。

 このような場合の公の施設である保育所のはいしについては、その利用権・保育所選択権という具体的な権利の侵害があるかどうかをみて、その違法性の認定をしなければならない。

 3 結論

 本件では、控訴人らの児童は現に本件保育所に入所・利用しており、しかも、それは契約上今後さらに数年間認められている控訴人らの権利である。そのような保育所の廃止は、「保護者が選択した保育所で保育を受ける権利」の侵害であり、違法であるというほかない。

 北海道大学教授亘理 格の意見書は、

「その際、平成九年法改正による保育所利用関係の転換は保護者の保育所選択権を保障したが、このことは保育所の廃止に対して如何なる法的意味を有するかという問題を、検討の中心に据える。

 ここでまず考慮すべきであるのは、保育所入所時における選択権が保障されていたとしても、保育所の廃止により直ちに当該保育所利用の権利ないし資格が失われてしまうとすれば、入所時における保育所選択権は権利としては極めて薄弱な権利保障に止まってしまうということである。ところが、上述のように、平成九年の児童福祉法改正は、要保育児童の保護者に保育所選択の権利を保障することを全面に掲げて保育所利用関係の転換を図ろうとしたのであり、その趣旨を徹底させるために、申込書には希望するする保育所名を記載するとともに、当該保育所を媒介とした代理申込みを可能とし、また、各市町村には、「その区域内における保育所の設置者、設備及び運営の状況」等に関する情報提供を義務づけることにより、保護者が個々の保育所の運営状況や保育条件に関する客観的かつ十分な情報を基に適切な保育所選択を行うための前提条件の整備に意を尽くしたのである。そして、平成九年改正を先導するとともに改正後の運用に当たる行政実務の理解によれば、以上の諸条件の下で保育所設置者と保護者との間に形成される保育所利用関係は双務的な「利用契約関係」と把握されているのである。

 そうであるならば、保育所設置者である市町村が保育所を廃止しようとする場合、当該市町村には、現に保育期間中にある児童及びその保護者の意志を最大限尊重する義務が課せられているとの結論が、ごく自然に導かれるはずである。

 保護者が当該保育所での就学時までの保育継続を希望する場合は、天災事変等により当該保育所の施設が利用できない状況になった場合や市町村財政の急激かつ極度の逼迫により保育所運営の財源が一刻の猶予もない程度に払底しかねない状況にある場合等のように特段の事情がない限り、当該保育所における保育利用関係を維持すべき義務が当該市町村に課せられていると解すべきである。

 このように保育所利用関係を利用契約関係として据えるならば、設置者である市町村が保護者の保育所選択を尊重し、その選択にかかる保育所での保育期間にわたって保育所実施を最大限確保すべく義務づけられることは、一層の説得力をもって妥当する。換言すれば、利用契約上の権利として、児童の保護者には、特段の事情がない限り就学時までの保育所りよう継続を求め得る地位が保障されていると言うべきである。

 これに対し、本件では、保育所入所時において、就学時までの保育期間の途中における保育所の変更を可能とする旨の契約条項があらかじめ合意されているわけではないし、また、法律若しくは条例で、保育期間中の保育所変更を可能とする旨の規定があらかじめ定められているわけでもない。また、念のため付言するならば、本件保育所を廃止する旨の本件改正条例は、保育所入所後の保育期間の途中で制定された事後事項であるから、保育所入所時に保護者の保育所選択意志を尊重して決定された当該保育所における保育の実施という合意内容を、かかる事後立法である本件条例の規定により一方的かつ遡及的に変更し得るものでないことは、言うをまたないところである。そして、以上のことは、平成九年改正後の保育所利用関係を利用契約として把握する場合には、なおのこと強く妥当とする。何故ならば、当該保育所における保育の実施という契約内容を本件条例の規定により変更するということは、事後立法によって契約内容を一方的かつ遡及的に変更することを意味するわけであるから、そのようなことは契約法の原則に真っ向から反することであって、本来許されないことなのである。

 結論 以上述べたことを踏まえて、本意見書の冒頭に示した第一の論点(平成九年の児童福祉法改正によって、保育所入所のあり方が従来の措置制度から要保育児童の保護者に保育所選択の可能性を保障した申込みに基づく入所制度へと転換が図られたことが、市町村の設置した保育所の廃止に対して何らかの制約を課することになるか、という問題)については、第一に、改正後の保育所利用関係は依然として利用契約関係ではないと仮定したとしても、個々の保育所の運営状況や保育条件に関する客観的情報を基に保護者が行った保育所選択の意志は入所後の保育所利用関係の継続時においても最大限尊重されるべきであることからすれば、保育所を設置した市町村には、特段の事情がない限り、当該保育所の意志を尊重すべき義務が課せられると考えるべきである。

 また、第二に、改正後の保育所利用関係が利用契約関係であるとの前提に立った場合には、以上のことは一層強あてはまるのであり、それ故、保育所を設置した市町村には、契約締結時において契約の相手方である保護者が想定していた契約締結の目的及び本質的契約条項に矛盾するような契約条件ないし契約条項の変更をなし得る地位は認められないと言うべきである。

 公の施設のように、100%公金によって設置され、その管理運営は条例によって管理され、執行機関がその廃止について、広範な裁量権を有するとされる公法営造物の利用関係の分野ですら、有力な行政法学者の各解説及び最高裁判例が、継続的な利用関係にある公の施設の廃止の当否が争われる場合、住民、利用者の法律上保護される利益が違法に侵害されている場合、訴えの利益、原告適格を認めている。

 田村共助は、公立保育所の利用契約の存続期間中の廃止は利用者である原告の保育所を利用する権利(保育所選択権)の侵害にあたり違法であるとしている。

 県・市による補助金交付という公法関係を前提とする純然たる私法契約である本件在学契約において、継続的な利用関係にある施設の廃止は在学契約における「就学権の違法な侵害」にあたるには当然である。

3,仮に被告において在学契約の守山キャンパスが廃止が、解除権の行使としても、それは信義則に違反し、権利の濫用であり、無効である。

 そもそも、被告は原告の入学を勧誘するについて、広告に平安女学院は創立130年を迎える伝統のある私学である。(このことは京都駅の地下通路の巨大広告等で被告は大宣伝をしている)その長い歴史と伝統を誇る学校法人が(県と守山市の補助を得て)守山キャンパスを開設したとして、そのキャンパスでの就学を勧誘したことから、入学しようとして申込みをした原告は、まだか自分が卒業する前の在学期間中に守山キャンパスが廃止されるなどとは夢にも思わなかった。

 半永久的に存続するものと期待していたのであり、解除により就学権を奪い、期待権を侵害した。

 守山市と滋賀県から多額の補助金の交付を受け、守山キャンパを建設し、就学させるとの約束しながら、わずか5年で廃止したのは、守山市と滋賀県からの補助金のタダ取りをしたことになり、守山市と滋賀県の存続への期待を裏切った。特に補助金として多額の税金を負担した守山市民と滋賀県民にとっては、守山キャンパスが建設され大勢の学生が滋賀県内県外から在学し「大学を核としたまちづくり」を目指し、それに希望をたくして市民からも大いに歓迎されている。学園祭にも1万人を越える信じられないほどの市民が訪れているが、その市民の期待をも裏切った。

又、被告は守山市が約束した守山駅から守山キャンパスの正門前に一本で通じる市道をつくる約束を守らなかったというが、守山市は既に市道の開拓に着手し、一部着工している。完成すれば歩道にベンチをおいて「大学プロムナード」ともいうべき道路にする予定もあったのに、すべて夢と消えた。

 守山キャンパスへの入学者が1回生に入学後、2回生の入学者が減少したことから、財政的に困難となることを知りながら、高槻キャンパスに4年生に学部を作って多額の経費を消費した。

 私学には私学の経営を維持するために特有の基本金という制度があるところ、その基本金を年々増額しているから、直ちに倒産廃校ということにはならない。

在学中に廃止しなくても、在学生が卒業した後の年度の入学生の募集を停止すれば否応なしに廃止しうるのであるから、原告ら在学生との関係では卒業するのを待てばよく、在学中に廃止するべきではない。現に被告自身、キリスト教学科の廃止は専攻学生の在学中は廃止をしていない。

 以上の理由から、在学中に廃止解除することは、信義則に違反し、権利の濫用であり、違法無効である。

 電信送金契約は第三者のための契約か否かについての最高裁昭和43年12月5日第一小法廷判決は、

※4

 本件在学契約に引き比べれば、上記判例でいう、

「明示的な第三者たる送金受取人にためにする約旨に存否」については、守山市及び県との協定書及び交付要綱において、入学してる在学生のために守山キャンパスを建設し、就学機会を与える」ことが明文の約旨があり、又、第三者のための契約でないとの否定後の根拠の第1の「送金受取人に直接の請求権を与える意見がない」ことについては「在学生が入学手続をとることによって入学させ、就学させる意見は明白であり、「送金受取人は撤回の可能性を残しておきたい」ことについては、本件で、守山市、県、被告が最後まで期間の可能性を残しておきたいことはあり得ない。

 第2の組戻しの取引慣行は民法538条の第三者の権利確定の規定と矛盾することについては、本件では「組戻し」類似に慣行もないから、そのような矛盾はなく、 第3の小切手契約との均衡も失することもない。

 本件は講学上も判例上も初の事例であるが、従来の判例の判断基準に徹しても、本件を第三者のための契約とすることについては、何ら論理的な不合理性は見あたらない。むしろ、従来の減縮されたケースでは最も自然に認定しうるケースである。



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 2005年02月24日

「守山キャンパス就学権確認訴訟」

原告の川戸佳代さん、
大津地裁に「準備書面(7)」を提出


大津地裁原告側「準備書面(7)」(全文)


平成16年(ワ)第573号 就学する権利等確認請求事件

原  告  川戸佳代
被  告  学校法人平安女学院

準備書面(7)

                               2005年2月24日

大津地方裁判所 民事部合議係 御中

  原告訴訟代理人弁護士   吉原 稔

第1 被告平成17年2月21日付準備書面(4)についての認否

1 被告は「被告は『守山市、滋賀県からの補助金交付につき、何らの私法上の契約、約束をしていない』『補助金交付は純粋な行政行為であり、私法上の合意による契約と性格を異にする』」と主張する。

  地方自治体の補助金交付決定を行政処分とみるか、私法上の契約とみるかは判例上も見解が分かれているが、本件の守山市による補助金交付は、基本契約書が締結されているので、私法上の契約であることは明かである。

  被告は「滋賀県や守山市に対して地方自治法・・・・上などに定められた条件を尊守すること以外に、何らの義務を負担することはない」というが、基本契約書によって守山キャンパスを建設するという約束をしたことが、守山キャンパス建設の義務の負担であり、かつ、補助金交付の「条件」そのものが、守山キャンパス建設の義務の内容をなすものである。

2,被告は「基本契約書は補助金交付という行政行為の前提としての確認行為であり、私法上の拘束力を有しない」というが、そもそも守山市の補助金交付に際して基本契約書を取り交わしたことにより、私法上の契約としての拘束力を有する被告が守山キャンパスを建設し、就学させる義務が成立したのである。

 基本契約書においては、守山キャンパスを建設し、学生を就学させることを取り決め、かつ、現代文化学部、現代福祉学科、国際コミュニケーション学科をつくり、その定員を取り決めをしているし、これで必要にして十分である。

  守山キャンパスにおけるこれ以上の大学の事業や入学する学年の処遇などは被告がいう「自主決定権」「大学の自治」に基づいて決定をし、それを内容とする附従契約としての在学契約を締結することになるのである。

  この基本契約書は守山キャンパスにおいて就学させること、そこで2つの学科をもつ現代文化学部を創設して、その授業を行うという基本的事項を取り決め、このことを約束しているものであり、この基本的事項について、被告がそれを実現し、継続して供給するという義務について法的拘束力をもつものである。

2について

  被告の引用する大阪地裁判決は入学金、授業料に関するものであるが、そこでいう在学契約の内容として、学校がA文部科学省の定めた一定の基準に従って教育施設を提供し、Bあらかじめ設定した教育課程に従って授業を行うという内容である。

  被告は「Bの義務こそ重要であり、Aの義務は従属的なものである」といい、「前記判例等は設置場所を特定固定して提供しなければならないことを要求しているものでない」というが、本件では守山キャンパスを建設し、そこで就学させることを守山市、滋賀県に約束し、それを基本契約として在学契約を締結したものであるが、就学場所を守山キャンパスと特定するAの義務こそ主導的なもので、Bの義務はAの義務を前提にし成立するものである。提供する授業等の教育内容が基本的に同一であれば、別の場所で(高槻キャンパス)提供しても、義務違反にならないというものでは決してない。

  高槻キャンパスへの統合は通学上の不便や、授業内容の変更からみても守山キャンパスにおける就学義務に代替できるものではない。

  「守山キャンパスを高槻キャンパスに統合しても教職員や設備はそのまま移動させる」というが、そうではなく、被告はこれを機会に高槻キャンパスにおいても徹底したリストラを行っている。

3,P4、2(2)につき

(1) 被告は「統合後といえども施設を提供しないわけではない」と主張するが、原告は大学設置基準を満たす守山キャンパスを選択し入学しているものであり、仮に高槻キャンパスが大学設置基準を満たしていたとしても、原告の施設選択権を侵害するものである。

  統合することにより、原告の通学時間が増えることで、自宅学習をする時間や睡眠時間などが減少することになり身体への負担が生じる。就学場所が変わる事によって生じる生活環境への侵害行為であり、教育条件が低下し学士としての学位取得にも支障をきたす行為である。

(2) 学校環境については、富山県立山町立立山小学校廃校処分事件で、

  「統合小学校へ就学する場合、通学はバスによるにしても冬期の豪雪時の遅刻、不参は避けがたいものであり、また、児童の緊急事態に際しての保護者である右抗告人らとの連絡、応急措置上の不都合、或いはバスによる交通事故の危険等が予想され、これは一種の教育条件の低下というべく、それが統合小学校への就学によって得られる諸々の利点を考慮しても、なお右抗告人らにとって回復の困難な損害といわねばならない。」

と判示している。(名古屋高金沢支決、昭・51・6・18・判事842−70『教育六法・P,1049』)

(3) 学生会について

   在学生は被告の設置する学生会に必然的に入会させられているものであって、学生が積極的に入会しているものではなく、学生会に学生の自治は存在しない。そもそも被告のいう学生会とは学生会執行委員7名のことであるが、執行委員は学内選挙によって選ばれる者ではない。仮に学生会執行委員に何らかの責任があったとしても、同人らは「個別対応をしてほしい」と被告に要求していることから自らの責任を放棄したといえる。

(4) 契約職員に至っては統合について被告から一切説明を受けていない。また、高槻キャンパスで雇用されるかどうか知らされていない。

 もし仮に教職員が全員そろって高槻キャンパスに行くならば、新年度における配属先の情報開示をすべきである。

   昨年末、定年退職の規定が変わり原告のゼミ担当教員や教科担当教員などが、65歳以上であることによって退職させられることになっている。しかしながら、74歳である山岡理事長は自ら特任教授になり学長選挙も行わずして学長に就任した。これは矛盾する行為でワンマン経営者の権利の濫用である。

(5) P,5において

 被告は十分に説明してきたとしているが、被告の言う移転についての状況変化については、「高槻キャンパスに通うことになる」というだけで、「びわ湖守山キャンパスの教職員をそのまま高槻キャンパスに移動させるものであり、備品、文献、図書、教育・研究資料などもそのまま移転させるものであって、高槻キャンパスにおけるカリキュラムや、授業内容に変容を来たすことはない。」という説明は一切ない。ましてや被告は、原告らが入学するにあたって大学案内や入学募集要項への記載を含め統合について一切告知説明を行っていない。

(6) 高槻キャンパスにおける新学部(生活環境学部)設置の際に、被告が文部科学省に提出した設置認可申請書には、「教員の移動だけで済む」等と書かれている。学生に負担をかけないとしているのに対し、守山の学生を高槻に通わせるという大きな負担をかけて統合するのは矛盾している。

 さらにこの設置認可申請は2001年に行われており、原告が入学したのは2002年であるから原告が2001年に入学希望している時期と同時期である。このことは、高槻キャンパスに新学部を作ることを申請したときには、守山キャンパスの学生を高槻キャンパスに移動させることは全く被告は考えていなかったこと、むしろ、守山キャンパスの学生は高槻キャンパスに移動させることはないと文科省に言明していたことを示している。

第2、仮に被告に就学場所を変更する(解除する)権利があったとしても、信義則に違反し、権利の濫用である。

  この点について企業閉鎖を理由とする従業員の解雇の事案において、組合つぶしという不当労働行為による違法な意図のある企業閉鎖は、

 「労働組合の健全な発展を保護することは、現在の社会的経済的秩序の要請である。従って、企業主体の有する企業廃止の自由といえども、社会的秩序の要請する制約に当然服す」るものである。「労働組合潰滅を決定的原因として企業を廃止することは企業廃止の濫用として許されず、現在の社会的秩序に著しく背反する。従ってかかる解散決議は憲法第28条、労組法7条1号3号に違反する『廃止の自由の濫用』であり、同時に『公序良俗に違反するものとして、無効である』」

 としている。 (労働法辞典P1064)


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 2005年03月1日

守山市議会、

市長 「現状では、補助金返還の手続きに踏み込まざるを得ない」と述べた。




存続は現状では困難との認識 平女大の統合問題で守山市長

 滋賀県守山市三宅町の平安女学院大びわ湖守山キャンパスが、4月から同大高槻キャンパス(大阪府高槻市)に統合される問題で、守山市の山田亘宏市長は1日、守山キャンパスの存続は、現状では困難との認識を示した。大学側に対し、キャンパスに学生がいなくなる段階で、交付した補助金の全額返還を求める考えを再度、表明した。

 同日開会した3月定例議会で、山田市長は「再三にわたる存続要望に応じてもらえず、4月からの高槻への統合方針は変わらない状況にある」と説明。「現状では、補助金返還の手続きに踏み込まざるを得ない」と述べた。また「財産保全だけが問題解決ではない」とも述べ、統合後のキャンパスの利用方法を探る意向を示した。

 市は守山キャンパスの開学に際し、補助金25億6500万円を大学側に交付した。統合を巡っては、同大学生が大学側に対し、同キャンパスでの就学権確認を求めて係争中。

京都新聞(3/01)


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 2005年03月2日

守山市議会、

市長 「補助金の返還を求める手続きに踏み込まざるを得ない」と表明した。4月以降、キャンパスに学生がいなくなったのを確認した上で法的手続きを取ると表明。




平安女学院問題/補助金全額返還請求へ
守山市長、議会で方針

  平安女学院大学びわ湖守山キャンパスの統合問題で、守山市の山田亘宏市長は1日の市議会で、学校法人平安女学院(京都市)に対し「補助金の返還を求める手続きに踏み込まざるを得ない」と表明した。4月以降、キャンパスに学生がいなくなったのを確認した上で法的手続きを取る。

  同キャンパスが00年4月に開学した際、守山市が25億6500万円、県が8億円の補助金を学校法人に出している。

  大学側が同キャンパスを大阪府高槻市のキャンパスに統合するとした4月が間近に迫る一方で、市と大学との間で敷地の利用計画についての話し合いは進展していない。こうした現状に、山田市長は議会後の取材に対し、「現時点で、もはやキャンパスの存続は難しいと判断せざるを得ない」との認識を示した。

  さらに、「補助金の行方は市民の心配事。返還は当然だ」として、25億6500万円の補助金全額を返還請求する方針を明らかにした。

  キャンパスの開学から5年間で、波及効果として地元へ「還元」された額をどう算定するか、については大学と市の当事者間で決めるのではなく、司法などの判断を仰ぐ構えだ。

  また山田市長は、「単に補助金を取り返しただけでは、大学を誘致した際の『教育を通じて、人の育成と元気な街づくりをする』という当初の目的は達成されない。今後も何らかの形で教育施設の充実に取り組む」とも話した。

  すでに県は昨年12月の県議会で、補助金返還を検討する考えを明らかにしている。

  学校法人側はこれまでの朝日新聞の取材に、統合後のキャンパス敷地に「学生のいる学園機能を残す」と説明し、補助金返還には応じない考えを示している。

朝日新聞(3/02)


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 2005年03月3日

「守山キャンパス就学権確認訴訟」

第4回口頭弁論が開催 (弁論の終結)



 弁論の終結が裁判長より言い渡されました。次回、5月23日(月)13時15分から法廷で判決が下されます。このことについて、私としては3月までに判決が下されることを期待していました。しかし、「前例の無い裁判なので大津地裁が先例を出すことに慎重になっているのではないか」というのが私の弁護士の見解です。
 被告席には今日も弁護士1人しかいませんでした。学院は被告となっていることを認識しているのでしょうか。こんな疑問を私は抱きました。勝手に統合を決定し、そのまま強行に押し進めようとする学院側の入学者に対する責任の無さの表れであると感じました。
 10月26日に提訴して以来、被告側から大津地裁へは準備書面が4回提出されました。その内容は、当初から変わっていません。原告側は準備書面を7回提出しました。その内容は、守山市及び滋賀県が被告との間に締結した基本契約の下に在学契約が締結されている(「第三者のためにする契約」である)ことから統合は認められない、という根拠を主張したものです。このように前例の無いケースであるため、5月23日の判決が今後全国の大学等において参考になると考えると、提訴に踏み切って良かったと思っています。

 
 判決の言い渡し(2005年5月23日)の際には、是非傍聴して下さいますようお願いします。一人でも多くの方が判決に関心を持ってくださることを願っています。


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川戸さん「裁判日記」

 

 

 2005年03月4日

「守山キャンパス就学権確認訴訟」

第4回口頭弁論の終結に関する新聞報道



平安女学院大移転訴訟:地裁で結審/滋賀

 平安女学院大びわ湖守山キャンパス(守山市)の移転問題で、同キャンパスの学生が学校法人平安女学院(京都市)に、在校生卒業まで守山市で授業を行うことなどを求めた訴訟が3日、大津地裁(稲葉重子裁判長)で結審した。

毎日新聞(3/04)


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 2005年03月18日

平安女学院本部、
守山キャンパスに学部分室を設置する計画を明らかにした。

滋賀県知事、「学生がいなくなった段階で、補助金の全額返還を求める」



平女大、守山に学部分室を設置 市や県「補助金返還求める」

 平安女学院大のキャンパス統合問題について、学校法人平安女学院(本部・京都市)の山岡景一郎理事長は18日、統合後の守山キャンパスに学部分室を設置する計画を明らかにした。

 山岡理事長の説明では人間社会学部の分室を設置し、守山キャンパスの管理に充てる計画といい、4月以降については「産官学、学と学とが共同するような、新しい大学づくりを進めている。1年以内にできると思う」と話した。

 一方、守山市の山田亘宏市長は「市は、そのようなことを望んでいないし、説明も受けていない」としている。

 平安女学院は、守山キャンパスに「先端技術センター」の設置を計画しているが、大学誘致に際し、大学側に25億6500万円を交付した守山市と、8億円交付の県は「学生がいなくなった段階で、補助金の全額返還を求める」としている。

京都新聞(3/18)


『守山に大学分室』 平安女学院大

 平安女学院大びわ湖守山キャンパス(守山市三宅町)で学ぶ現代文化学部の卒業式が十八日、守山市民ホールで開かれ、二学科の学生百四十五人が卒業した。四月に同大高槻キャンパス(大阪府高槻市)に統合されるが、山岡景一郎理事長は式で「いろいろな研究を行う『研究科』を一年以内に設置する」と話すとともに、守山キャンパスに四月から大学の分室を置くことも明らかにした。

 守山キャンパスは二〇〇〇年四月開校。守山市は「大学を核としたまちづくり」を目的に約二十五億六千五百万円、県も施設整備などで八億円の補助金を交付した。しかし、大学側は学生の定員割れなどを理由に昨年三月、守山からの撤退を市などに伝えていた。

 守山キャンパスには現在、一−三回生計三百十八人が在籍するが、全員が高槻キャンパスに移ることになっている。

 山田亘宏・守山市長は式終了後、「四月一日に学生がいなくなったのを確認した上で、県とともに補助金の全額返還を要求したい」とあらためて表明した。県もすでに、国松善次知事が補助金の返還を求める方針を明らかにしている。


中日新聞(2004/3/19)


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 2005年03月19日

平安女学院大 びわ湖守山キャンパスで最後の卒業式

山岡理事長、「4月には守山キャンパスの新しい構想を明らかにする。補助金の返還請求はないと思っている」とコメント



卒業式:平安女学院大 移転のびわ湖守山キャンパスで最後の式典

 ◇4月から大阪・高槻へ移転−−思い出胸に145人巣立ち

 守山市三宅町の平安女学院大(高田宏学長)びわ湖守山キャンパスの卒業式が18日、隣接する守山市民ホールであり、現代文化学部145人の卒業生や保護者らが式に臨んだ。同キャンパスは00年オープン。今回が2度目の卒業式だが、4月からは高槻キャンパス(大阪府高槻市)への移転・統合を決めており、同市では最後の卒業式となった。

 式では、卒業証書の授与や高田学長の式辞などに引き続き、卒業生代表の佐藤理沙さんが「友人との思い出が詰まったキャンパスがなくなるのは残念だが、高槻キャンパス学生と同じ仲間意識を持ってほしい」と在校生に語りかけた。現在の在校生310人は、4月から高槻キャンパスで授業を受けることになる。

 同キャンパスを巡っては、誘致時に約25億6000万円を補助した守山市が、移転・統合を行う4月以降、補助金の全額返還を求める方針を表明。4月からは学長に就任する山岡景一郎理事長は式辞で「この地にふさわしい学園機能を模索している。1年以内に実現すると思う」と引き続きキャンパス運営に意欲を見せたが、来賓の山田亘宏市長が「そういう風になるかは別」とけん制する一幕も見られた。

 式終了後、山岡理事長は取材に対し「4月には守山キャンパスの新しい構想を明らかにする。補助金の返還請求はないと思っている」と話した。

毎日新聞(3/19)


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