大学人の会ニュース 1(2005/08/15)
 

横浜市大大学院国際文化研究科博士課程『思惟と聯流』第2号(8月15日付)において,下記の掲載記事が掲載されました。


就学権訴訟が開廷 全国初のに九月末判決

 びわ湖守山キャンパスの移転・統合をめぐり,理事会の独断専行に抗議して平安女学院大学現代文化学部国際コミュニケーション学科四年の川戸佳代さんが大阪高等裁判所に提訴した就学権確認訴訟の判決が,九月二十八日に言い渡される。本誌は創刊号でこの問題をとりあげたが,今号では平安女学院大学と同じような状況に直面している全国の例をふたたび川戸佳代さんに報告してもらう。(編集部)

 平安女学院大学びわ湖守山キャンパス(滋賀県守山市)の移転・統合問題に抗議して学生が提訴した就学権確認訴訟の控訴審が,7月27日、大阪高等裁判所(大和陽一郎裁判長)で開廷し,同日、口頭弁論が終結した。判決は9月28日に言い渡される。

 この就学権確認訴訟は、全国でも初めてで極めて公共性が高い。
 昨今、私立大学の中には地方自治体の補助金によって設置されたキャンパスの統廃合が起きている。第2次大学新設ブームと言われる1996年から2002年までに開学した80校が平安女学院と同じように、自治体から多額の補助金を受けて「地域振興」の名の下に設置されているようだ。このようななかで守られなければならないのは学生の就学権である。平安女学院大学のように、教育を商品化し、ビジネスのごとく振る舞う大学が今後も出てくるであろう。このような大学は、短期的に「採算が合わない」と判断したら、学生の意向など無視してどんなことでも行うかもしれない。そうした場合、学生の学ぶ権利や就学条件はどこまで守られるのか。在学契約の趣旨はどこまで保障されるのか。審理が注目される。

 大学倒産時代が現実となった今日、キャンパスを廃止したのは平安女学院大学ばかりではない。しかしながら、ここで問題とすべきは平安女学院の学生を無視した対応が他の大学においては見られないということである。石川県の七尾市が約10億円の補助金を投じて設置された七尾短大は、募集停止をした。同大は、2003年に最後の在学生を同キャンパスから送り出した。北見市が約25億円を投じて1977年に設置された北海学園北見大学は、自治体の了承を取り付け、2006年3月末をもって北海学園北見大学を北見キャンパスから撤退させ、同年4月より札幌市内のキャンパスに移転させることを決めた。入学前に移転を知らされなかった在学生は、北見キャンパスで卒業まで就学することになっている。(川戸佳代)

始まった支援の署名 第一次〆切は今月27日

 山口県と萩市が40億円の補助金を投じて1999年に開学した萩国際大学は、民事再生を申請した。同大理事長は、「責任持って卒業まで面倒を見ることが社会的責任」、「学生や保護者には申し訳ない。学生が卒業するまではきちっと面倒をみる」と述べ、在学生には卒業まで同キャンパスでの就学条件が保障された。文部科学大臣も「教育的な観点に立った再生計画」の必要性について言及している。

 このように在学契約を遵守することは、私立大学としての責務であるということが浮き彫りになっている。学ぶ権利が認められなければ、在学生の就学条件(教育環境)が卒業までの期間さえ保障されないということになる。そのため、全国の大学関係者が「平安女学院大学びわ湖守山キャンパス就学権確認訴訟を支援する大学人の会」を結成した。同会は、8月から大学関係者のHPサイト等を使って署名活動を始めた。集めた署名は要望書とともに大阪高等裁判所に提出される予定で、広く協力を呼び掛けている。第1次署名は、今月27日が締切で、携帯電話からのアクセスも可能である。また、署名サイトでは全国の識者からのコメントも寄せられている。署名サイトのアドレスは次の通りである。(http://university.sub.jp/1/)(川戸佳代)