鹿児島国際大学教職員組合の見解

 

 

津曲学園理事会による損害賠償訴訟について

学園理事会が南日本新聞社と八尾氏を「名誉毀損」で提訴
 津曲学園理事会は金井塚修、同康弘両弁護士を原告訴訟代理人として、4月22日付の訴状を鹿児島地裁民事部に提出しました。南日本新聞社と八尾氏に、「名誉毀損」に対し645万円を支払い、謝罪せよというものです。
 訴状によれば、昨年10月1日付南日本新聞朝刊で「復職の仮処分決定」のタイトルで、鹿児島地裁が「復職…を認める決定をした」「復職と…を命じた」と報道したことは、「雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に認める」と決定された地位保全決定の報道記事としては、法的に正確さを欠き、三氏の「復職」までも大学側に命じたとの誤った印象を強く読者に与える不適切な表現で,仮処分決定をめぐる誤報によって「原告の被った名誉権侵害は甚大なものである」としています。また昨年4月2日の夕刊で、この解雇処分が「理由の曖昧な解雇であるか」のように報じたのも学園の「社会的信用を貶めようとした」ものであるとしています。そして、それらによって学園が被った「精神的苦痛に対する慰謝料は金400万円を下らず、必要な弁護士費用は40万円を下らない」として、南日本新聞社に440万円の支払を求めています。
 また、今年2月17日付南日本新聞社朝刊で「私の論議 かごしま新世紀」欄に八尾氏の投稿記事(「『ボラン・システム』活用を 商店街の再生」)掲載にあたり、「鹿児島国際大学経済学部教授」の肩書きを使用したことは、懲戒解雇処分をめぐり裁判所で係争中であり、大学からこの肩書き使用は認められないと通告されていたにもかかわらず、あたかも教授の職に就いているかのように表現したことは、不正確であるばかりか、八尾氏が「復職」したかのような誤った印象を読者に与える不適切な表現で「肩書き詐称」であったとしています。本件誤報による名誉毀損についても「慰謝料は少なくとも金100万円を下らず、必要な弁護士費用は10万円を下らない」。「本件投稿記事については、被告両名は共謀による共同不法行為として連帯責任がある」と、南日本新聞社と八尾氏に110万円の支払を求めています。
 訴状は名誉回復の適当な処分として、南日本新聞紙一面全体の少なくとも4分の1のスペースを使って、「誤報」については南日本新聞社が記事を訂正する謝罪広告を、「肩書き詐称」については両名が肩書きの抹消と訂正する謝罪広告を求めています。

「解雇無効」の決定の事実に背を向ける理事会の対応
 理事会は「誤報」問題について、昨年10月4日南日本新聞社に対して謝罪と紙面の訂正、謝罪記事の掲載等を求めて内容証明郵便を送付しています。南日本新聞社は代理人弁護士を通じて「一旦雇用の関係を失った大学教授3人が、上記仮処分決定により貴大学との雇用契約上の地位にあることを仮に定められたもので、これを『復職』と表現することは一般人の認識に外れないものであり、誤報とは捉えられません」と回答し、「茶髪でクビダメ 元運転手の復職命じる 地裁小倉支部」と報道した例(1997年12月26日朝日新聞朝刊)を挙げています。
 今回の訴状は「一般人の認識に外れないもの」との弁明は「法的に不正確であることの自白に過ぎず、……他の新聞社の記事で自社の記事を正当化しようなどとは、そもそも、ジャーナリストの姿勢としては失当であり、主体性がないものとしか言いようがないものである」と非難しています。
 「肩書き詐称」問題でも、2月28日に南日本新聞社と八尾氏に「誤報」に抗議し、謝罪等を求めた内容証明郵便が送達されています。南日本新聞社は「投稿者の職業・氏名については、選定側では調査選別の基準外のものとして、投稿者記載のまま掲載しているものです」との回答をしています。ところが理事会は、訴状によれば「掲載責任に頬被りした、無責任な内容の回答」とし、両名に4月7日付の最終通告書を送りつけたが「被告南日本新聞社から前同様の不誠実な対応があったのみであった」ので、提訴に踏み切ったと述べています。

裁判所も「懲戒解雇は無効」と判断
 はたして、真実は理事会側のいうとおりでしょうか。昨年9月30日の鹿児島地裁の仮処分は、三教授とそれを支持する人たちの主張を全面的に認め、「以上のとおり、債権者らのいずれについても、懲戒解雇事由に該当する事実は認められないから、その他の点について検討するまでもなく、本件懲戒解雇は無効といわざるを得ない」と断言して、「雇用契約上の権利を有する地位」を仮に定め、教授であった解雇前と同じ額の給与仮払を命じています。しかも、「大学教授にとって,研究室を利用することは,十分な教育及び研究を行うために必要不可欠な,その身分に直結した権利の一つであると解されるから」という理由を挙げて、三教授に与えられた研究室を「それぞれ利用することを妨害してはならない」とまで命令しています。つまり、裁判所は三教授に対する懲戒解雇処分は無効であると判定した上で、とりあえずは三氏を大学教授として扱いなさいと命じているのではないでしょうか。大学・学園当局はこの裁判所の判断と決定を謙虚に受け止めるべきです。「懲戒解雇は無効」とした裁判所の決定に反して、いまだに解雇を「有効」だとして、三教授の教育研究の権利をことごとく妨害し続けている大学側の態度こそ問題にされるべきではないでしょうか。

組合執行委員会は八尾氏支援を決定
 八尾氏は2月28日付通告書、4月7日付最終通告書が送達された時点で、執行委員会に対応を相談に来ました。懲戒問題の弁護団に対応を一任したところ、「余りにもささいな問題」として無視することになりました。訴状は「今般、敢えて新聞紙上に虚偽の肩書きを掲載させて、表現の自由を盾に姑息にも自己の満足を図ろうとする被告八尾の行為は、許し難い背信行為であり、なりふり構わぬ品位のない確信犯的行為であると言わざるを得ない」と述べています。品位がないのは、どちらでしょうか?
 提訴された以上、南日本新聞社とともに、八尾氏も受けて立つことになりました。理事会と三教授や組合との間には、仮処分決定の解釈に大きな開きがあります。これは、6月上旬に延ばされた懲戒問題の団交での争点の一つでもあります。5月6日の執行委員会は、組合として八尾氏の裁判闘争を支援することにしました。この裁判の第一回口頭弁論が6月4日(水)午後1時10分より鹿児島地裁301号法廷で行われます。懲戒問題と合わせて御支援ください。

学園は解雇処分を撤回すべき
 組合は、懲戒解雇処分に関する団体交渉について、地方労働委員会にあっせんを求め、地労委は2月6日に団交をあっせん、理事会と組合とで誠実に話し合うことを求めています。これにもとづいて組合が団交を求めたところ、理事会はさまざまな条件をつけて3月24日に団交を行うと回答しました。組合は、とくに三教授の団交会場である鹿児島高校への三教授の立ち入りを拒否するという条件は問題であり、3月24日は予備交渉と位置付けて、この条件そのものについて交渉せざるを得ませんでした。その後、組合は、団交の開催を再三要求していますが、多忙を理由に6月には開催すると回答があっただけで、今に至るも実質的な話合いはできていません。
 そればかりか、理事会は、昨年11月に開始された本訴の中で求められている完成された被告準備書面の提出さえ再三にわたって引き延ばし、裁判長の督促があったにもかかわらず、まだそれを完結させていません。そのため、原告の三教授はいまだ反論をはじめることすらできません(被告準備書面が完結してから反論することになっています)。この裁判において、学園側は三教授に対する処分理由さえ、いまだに説明してはいないのです。今回の提訴のような些末なことにこだわるより、本訴において準備書面を完結させること、あるいは団交を開催することを優先すべきではないでしょうか。
 さらにいえば、争いの長期化は三教授とその家族に耐え難い苦痛を強いることになります。また、大学・学園自体が極めて大きな出費を必要とするだけでなく、大学・学園の評判を失墜させ、その経営を危うくすることになります。それに伴う費用や損失は、学生の納めた授業料などで支弁されるのではないでしょうか。理事会は、学園のために裁判所の決定などを尊重して、一刻も早く解雇処分を撤回すべきです。

組合ニュース(No.2-30)2003年5月20日