第1回口頭弁論 傍聴記(2)

 

 
第1回口頭弁論(守る会ニュース2003年4月21日,No.3より)

第1回口頭弁論


 1月20日午後10時から、第1回口頭弁論が開かれました。原告の3人の先生は、支援者の拍手の中、法廷に入りました。被告・学園側も菱山学長、野村事務局長らが被告席にすわり、傍聴席には、管理職が勢揃いで、法廷の傍聴者席は原告側支援者も合わせて満員で、立ち見がでるほどでした。原告側弁護士として、増田・小堀・井之脇・森の4先生が出席されました。被告側弁護士は、仮処分のさいの地元鹿児島の弁護士さんは「解任」されたらしく、金井塚という弁護士親子二人(菱山学長の「友人」とのうわさ)が担当し、この日は息子の方が出席していました。

 原告側はすでに提出してあった訴状について、簡単な説明をしました。
当日は、原告を代表して、田尻先生が意見陳述をおこない、被告側は、菱山学長が陳述をおこないました。田尻先生は、 (1)問題とされている採用人事について、大学の「選考規程」にもとづいて運営されたこと、応募者の中で最良最適な人材であったこと、 (2)八尾先生が将来計画に策定する委員会委員として意見をのべ要望・質問をしたのは当然であること、 (3)委員会の審議・運営に問題があるというのなら、まず教授会・評議会の下に調査機関を設置し、事態の究明にあたるべきであったのに、理事会が教育・研究に直接介入したこと、 (4)大学教員に対する懲戒処分であるにもかかわらず、大学教員の身分を保障した教育基本法・学校教育法およびユネスコ勧告などの精神に反して、必要かつ慎重な手続きがとられなかったこと、 (5)教授会や委員会における発言や判断がただちに懲戒処分の対象になるとすれば大学内の言論の自由・学問の自由が失われること、を静かではあっても心にこもる口調で意見陳述されました。

 一方、登場した菱山学長(証言台にたとうとしたら、傍聴席の管理職が礼をしたのが印象的でしたが)は、 「専門性が学者にとって命」とのべて、そこから「専門性、専門分野での科目適合性」に話をすすめ、これをないがしろにしたら国際的競争にさらされている大学は生き残れないとし、 「基礎理論の面で重なるからなどという、詭弁ともとれる欺瞞的な結論を専門家としての責任のない者の多数決で押し切るようなこと」 (学長は今回の人事をこう理解しているのでしょうね)では何の実績もあげられないし、国際競争にも勝てないと指摘しました。さらに、大学において死命を決する課題は「教員組織の中に科目適合性を有する専門的人材を擁するか否か」だとして、原告の行為は「科目適合性の否定、専門性、アカデミズムの否定」で「大学に対する、学問に対するもっとも悪質な背信行為であり、無責任で重大な非違行為だ」と、ひどく大上段にかまえた悪罵を投げつけてきました。最後に、自分は京都大学で大学の自治を学んできたが、原告の「主査に対する恫喝や怒声・暴言や多数決の強要等の行為の連続」は「大学の真の意味の自治を破壊する行為」だと、これまた、すごい表現で、原告を論難しました。

 学長の意見陳述は、やたらと「専門性」 「アカデミズム」をふりかざすものでした。かえって、それが非常に視野の狭い学問論・大学論のように聞こえましたし、専門的な研究者がどうしても足りない中で奮闘・努力している地方大学の教員集団にとってはあまりにエリート主義(旧帝大意識)に思えました。 「法哲学や法社会学という基礎法学の分野の定年間近の先生に憲法・民法・商法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法等の授業ができるか」と学長は「科目適合性」を得意げにいわれましたが、高名な法社会学者・渡辺洋三先生は東大定年後、私立大で憲法を講義されていましたし、憲法学者・小林直樹先生はかつては東大教養学部の法学(専門は法哲学)担当だった(やはり、あまり詳しくない学問分野についていうと、さすがの「アカデミズムの権威」もぼろがでるようですね)。 経営学を専門とする先生が「経済学」を教えていることはないのかな? まあこういう話は、大学の中ですればいい話で、裁判所で、懲戒解雇の正当化のためにいうような話ではないでしょう。

 その日に被告側からの答弁書が提出されました。増田先生のところにも事前にとどいていなかったようで、次回はこの答弁書に対する反論などが行われることになります。それに、仮処分決定に対する異議申し立てが12月25日付けで鹿児島地裁に提出されていることも判明しました。この「異議申し立て」は、民事保全法26条によりなされたもので、本案をあつかっている鹿児島地裁の同じ合議部で審査されることになると思われます。原告の「訴状」(11月19日)、被告の「異議申し立て」(12月25日付け)、「答弁書」(1月20日付け)はいずれも「守る会」事務局にありますので、お読みになりたい方はどうぞご連絡ください。
国際大教職員組合、津曲学園理事会との団体交渉を求めて地方労働委員会に斡旋を申請 鹿児島国際大学教職員組合は、3先生懲戒解雇処分の自主解決を目指して津曲学園理事会に団体交渉を申し入れましたが、理事会は組合員名簿などの提出を求めてこれを拒否してきました。この回答を不当労働行為と考えた教職員組合は、昨年11月29日、鹿児島地方労働委員会にあっせんを申請しました。 この申請は12月3日「津曲学園争議あっせん事件」として受理されました。現在あっせん員による事前聴取が行われており、2月6日(木))あっせんが行われます。 教職員組合は、係争の1日も早い解決のために、団体交渉による自主解決を、あくまで追求しながら支援の活動を続けています。1月19日には組合主催で街頭署名を行いました。また昨年から取り組んでいる3先生生活支援カンパは、500万円を超える額に達しています。