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本訴の争点@
1. 懲戒解雇事由は全く存在しないこと
(1) 原告田尻教授について
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1)平成11年度の経済学部経営学科の採用人事に関する教員選考委員会の委員長であったが、その委員会においては、
公募書類に記載された科目「人事管理論および労使関係論」のうち「人事管理論」を削除し、「労使関係論」だけでも採用を
可とする方向で審議がなされ、採用は「人事管理論および労使関係論」でなされたのにも拘わらず、候補者の業績は「人事
管理論」はもとより「労使関係論」についても科目不適合であり、経営学科の教授としては不適格である。
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2)第4回委員会で採用候補者と面接の上、投票をしたにも拘わらず、その結果を速やかに教授会に報告することなく、第8回
まで委員会を延長した。
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3)投票において、科目不適合を理由に
「否」 と投じた主査に対して、副査と交代すること、あるいは副査の書いた業績評価 書に連名することを迫ったなど、不当な議事運営を主導した。
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●田尻が採用候補者について、人事管理論を削除して審議したことなどないし、また不当な議事運営をなしたことなどない。
田尻は教員選考委員会の委員長として誠実に職務を遂行したもので、処分されるような理由など全くなかった。
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●選考委員会は、委員長である原告田尻を含めて全ての委員が上記公
募科目に相応しいか否かについて判断しており、 一科目だけを削除し
て審議したなどあり得ないことである。また、この選考について、被告は田尻が選考委員会の議事運営 を不当に主導したなどと述べているが、このような事実など全くない。選考委員会の構成員は教授4名、
助教授1名であり、 それぞれが独立して自己の判断によって採用候補者を評価し、意見を述べており、田尻が議事運営を不当に主導することな
どありようはずはない。結局、被告は教員選考委員会において適格とされた採用候補者を一方的に不適格であると決めつ
け、選考委員会が適格者と判断したことを理由に選考委員会の委員長を懲戒解雇にしたもので、このようなことは前代未聞
のことである。 |
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●大学に於いては、大学自治の観点から業績、論文等優秀であると最終的に決められた選考委員の判断こそ尊重されるべ
きであり、被告の専断を理由に懲戒解雇がなされるのであれば、委員会の存在は無意味であり、委員会において被告の意
思に反する意見すら言えなくなる。
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教授会に報告するのは選考委員会の最終的な結論であり、
第4回委員会で採決がなされたが、委員会において全員一致 で更に論文を検討することになったのであり、未だ報告する段階にはなかったのである。したがって、田尻が報告しなかった
ということは何ら懲戒の理由となるものではない。
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選考委員会において、主査は業績評価書を作成しないということであった。いかに反対であっても、主査としては委員会の決
議に従って業績評価書を作成しなければならないのに、民主的な手続に従おうとしなかった。選考委員会は主査に対し、業
績評価書を作成しないのであれば、副査と交代して欲しい旨要請したと
ころ、主査がこの要請すら拒んだため、副査が主査 に代わって業績評価書を作成したものである。
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(2) 原告馬頭教授について
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1)採用を可とする4名の意に添うべく主査報告に代わる業績評価報告書を作成したこと。
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2)その業績評価報告の結論は「採用候補者が本学の『労使関係論』
の担当教授に適任である」とするものであったが、実 際には採用候補者の業績は「人事管理論」はもとより「労使関係論」についても科目不適合であり、採用候補者はそれらを
担当する経営学科の教授としては不適格と言わざるを得ない。その結果、同人は「業績評価報告書(重要な公的文書)の虚
偽記載により教授会をあざむく評価書を作成した」
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全く処分理由にはならない。馬頭が業績評価報告書を作成したことが処分理由になるなどおよそ考えられない。教員選考委
員として自己の見解を述べ、委員の職責を忠実に行ったにすぎない。馬頭が同報告書を作成したのは、主査が前述の通り
業績評価報告書を作成できないと述べたためである。このように、「主査報告に代わる業績評価報告書を作成する」ことは審
議の経過においてありうることである。
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●これは名誉毀損も甚だしいものである。なぜなら、選考委員会において各委員は採用候補者の履歴、業績
すべてに基づ いてそれぞれの意見を述べ、適格であるとの結論を出したものであり、原告馬頭はその結論に従った業績評価報告書を作
成し たにすぎないからである。したがって、報告書の内容にはどこにも虚偽記載など存在しない。
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●不適格か否かの最終判断は教授会でなされるのであるか
ら、大学はこの判断を尊重しなければならない。それが大学の 自治である。教員選考委員会が自主的に判断したことをもって懲戒理由とさ
れるのであれば、もはや大学自治も民主主義 もない。また、大学に教員選考委員会が設けられている意味もない。
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(3) 原告八尾教授について
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1)選考委員会から上程された案件について教授会が行われた際の学部長であったが、委員会運営の不当性を指摘する多
数の教員の意見を無視して多くの疑義ある内容を含む委員会の報告を是とする形での議事運営を行い、教授会審議を誤っ
た結論に導いた。 |
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2)経済学部長として参加していた大学院開設準備委員会及び新学部
開設準備委員会において教学の一責任者でありな がら、一貫して経営問題に介入し、開設準備委員会の議長であった学長の指示に従わず、委員会の議事進行を妨げた。
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3)学長を補佐すべき学部長としての責務を果たさないばかりか、学園の方針として理事会で決定された新学部(国際文化学
部)の設置を否決した経済学部教授会の越権的審議を主導した。
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4)それら大学院、新学部増設の計画について、その誤謬が事実によって明らかになった赤字予測の恣意的なデータにもとづ
く文書を作成し、繰り返し学内外の多数者に送付した。
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5)このような的外れの予想に基づき、学長に私信を送り、辞職を督促した。
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教授会はすべての 出席者が対等の独立した地位にあり、これらの出席者の総意により最終決定がなされるのであり、学部
長としては適正に議事を運営し、最終的には採決によって結論を出すことになるのである。八尾はその職務を忠実に全うし
ただけであり、これが懲戒解雇処分理由になるなど 唖然とするばかりである。
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八尾が上記開設準備委員会の委員として学部新設などについて経営見通しなども含め、意見を述べることは当然のことで
ある。また、学長が開設準備委員会の議長であり、八尾が同委員会で自己の意見を述べたことはあるが、その指示に従わ
なかったり、議事進行を妨げたこ となど一切ない。
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国際文化学部の設置に伴う学則改正案が経済学部教授会では承認されなかったが、それは新学部設置に向けた具体案
が学則や慣例に反して大学評議会や教授会での意見を十分に踏まえることなく策定されたためである。教授会での学則改
正案の審議そのものは、学則の定めに従って行われたものである。このことをもって学部長であった八尾の議事運営が越権
的であるとし、これを懲戒解雇理由とすることは学則と教授会の存在意義を否定したものであり、学内民主主義の死を意味
するものである。 |
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上記新学部について、委員である八尾が入手し得たデータに基づいて経営見通しを検討し、それに関する意見を関係者に
伝えたのは、それを協議するための参考にしてほしいと考えたからである。八尾が資料や意見書を配布したのは、開設準備
委員や評議員などに対してである。八尾の見通しが誤謬であったことを示す資料は提示されていない。
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八尾は大学院と新学部の開設に関連して、学長に対し、手紙により
個人的に意見を述べたことはあるが、このことをもって 被告の八尾に
対する処分理由とすることは公私混同と言わざるを得ず、このような 処分が許されるとすれば、私信でさえ 出せないことになる。
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