解雇事件本訴裁判 原告側(三教授側)書面
 
準備書面(2003年9月24日)

 

 

 

 

 

 平成14年(ワ)第1028号
 原   告   田  尻   利 外2名
 被   告   学校法人津曲学園

準 備 書 面


                          平成15年9月24日


鹿児島地方裁判所 御中

                     上記原告ら代理人
                       弁護士  林     健 一 郎
                        同   井 之 脇  寿  一
                        同   森     雅  美
                        同   増  田     博
                        同   小  堀  清  直

平成15年4月4日付被告提出の準備書面(2)について、次の通り認否反論する。

一 第四について
1 同1のうち、
(1)(原口主査上申書の概要)の事実は争う。
(2)(民主主義の形を借りた暴挙)は争う。
(4)(科目不適合性)は争う。
(3)(公募科目の専断的変更)は争う。
(5)(委員会運営上での重大な諸問題)の事実は全て否認する。
(6)(教員選考規程違反)の事実は否認する。
(7)(副査の研究業績評価書の問題点)は全て否認する。
2 同2のうち、
(1)(6教授上申書の概要)の事実中、
「6教授が2月22日教授会を退席した」こと、「教授会での賛成票が17であった」こと、「選考委員会の5名の委員の中に元学部長田尻、次期学部長予定者■■■■教授、一般教育主任亀丸政弘らが参加していた」ことは認め、その余は否認する。
但し、6教授が上申書を提出したことについては不知。その指摘する疑義については全て争う。

二 第五について
1 同1(学長判断)については全て争う。
2 同2のうち、
(1)(大学問題調査委員会の設置)の事実中、
   「平成12年2月8日の被告理事会において『大学外部評価委員会の設置および大学問題調査委員会の設置』を決議していた」こと、「大学問題調査委員会には理事長、学長、大学事務局長のほか、外部委員として瀬地山関西大学教授と赤岡京都大学教授が出席した」こと、「第1回と第2回にはオブザーバーとして本学国際文化学の小林敬一教授も出席している」こと、「外部委員の2名には主として今回の公募人事の候補者についての業績評価、科目適合性という視点から調査に参加してもらうことにした」ことはいずれも不知。
  その余は争う。
 (2)、(3)、(4)の(第1回〜第3回大学問題調査委員会の開催等)の事実は全て不知。
 (5)(第4回大学問題調査委員会)の事実中、
  「第4回では、原告八尾および原口主査以外の教員、選考委員会4名が呼ばれて順次面接聴聞がなされた」こと、「原告八尾に対して選考委員会における主査と副査の根拠規程、役割の相違について認識があったのか否か、選考委員の交代について教授会での(事後)承諾手続がとられたか否か、主査の業績評価なしの委員会からの提案ということについて田尻委員長との事前協議があったのか否か、公募2科目を1科目とする提案方式についても事前の協議がなかったのか、教授会議事運営をどのように思っているのか、候補者との個人的面識の有無等について尋ねられた」こと、「原告八尾が教授会運営について何の問題点もないと答えた」ことは認める。
「原告馬頭に対しては副査になった経緯、主査と副査の役割の認識、主査との意見対立の理由、■■氏に候補者を絞った理由、主査が取り上げようとした候補を批判した理由、科目不適合についての意見、人事管理論を削った理由、第4回以降選考委員会を延長した理由、主査に対して意見をかえるように強要がなかったか等が質問された」ことは認める。
  「原告田尻に対し、人事選考委員に立候補した理由、委員長に選任された経緯、主査と副査の役割、候補者を絞った経緯と理由、人事管理論・労使関係論についての科目適合性はどのように議論されたか、選考委員交代の手続について等の質問された内容」については認める。
  亀丸及び■■委員に対する質問内容、回答については不知。
  その余は全て否認する。
 (6)(第5回大学問題調査委員会)の事実中、
  「原口主査、馬頭副査、田尻委員長の3名が再度呼ばれて面接聴聞をうけた」ことは認め、その余は争う。
 (7)(外部委員による候補者の業績評価について)の事実は不知。
(8)(調査報告書の概要)の事実は全て不知。
(9)(調査報告書における各委員の言動等の評価)の内容については全て争う。

三 第六について
1 同1のうち、
(1)(懲罰委員会の設置)の事実は全て不知。
 (2)(懲罰委員会による告知聴聞)の事実は全て認める。
但し、原告八尾についての第1回弁明聴聞は実質上行われなかった。
2 同2(採用人事調査委員会の設置と審査、報告)の事実は全て不知。
同3(懲罰委員会の提言(処分案)と理事会での承認)の事実は全て不知。
同4(小括)は争う。

四 原告らの主張
1 原口上申について

(1) 原口主査の上申書は事実が歪曲され、きわめて信義に反するものとなっている。すなわち、同上申書によると、選考委員会は公募科目を専断的に変更したとか、主要科目である人事管理論を軽視し、労使関係論を担当できればよいと判断したことは明らかに委員会の権限逸脱行為であるなどと述べられている。
 (2) しかしながら、選考委員会において、採用候補者が公募科目に適格であるか否か、担当できるかを真剣に議論していることは同主査自身最もよく知るところであり、また人事管理論が主要科目などでないことも同主査が知らないはずはない。選考委員会が人事管理論を軽視した事実はなく、労使関係論を担当できればよいなどと判断してもいない。
   選考委員会は採用候補者について、労使関係論及び人事管理論も担当できるとして教授会に推薦したことは他の4人の選考委員も―致して認めており、このことは原告馬頭が当初の業績評価書に記載していることからも明らかである。このように、主査の上申書は真実に基づいていないのである。
 (3) 同主査は採用候補者の科目適合性について、「経営学の人事管理論・労使関係論」は通用せず、独立に評価できる論文が全くないとし、「経営学の中の人事管理論および労使関係論の担当者としては」教授はおろか助教授の職位にも該当しないなどと述べている。
   しかし、選考委員会において、応募者の中から採用候補者として業績で群を抜く■■教授に絞ることに同主査も全く異論を述べていない。そして、労使関係論についてはその業績を認め、当初は問題ないとしており、人事管理論について問題を提起していたにすぎない。同主査の意見書は事実が偽られている。
 (4) 同主査は採用候補者について、「経営学の中の人事管理論および労使関係論の担当者としては」適合性がないなどと述べている。
   上記の通り、同主査は選考委員会の中でこのような主張をしたことはなかったし、同主査の上申書は学問的にも誤っている。すなわち、労使関係論の学問的系譜は経済学の分野であり、経営学の中の労使関係論などという限定はできない。また、人事管理論は労使関係論の隣接科目であり、その研究領域は重なるものである。したがって、採用候補者の業績によって両科目を担当できるとする考え方は学問的にも正当なものであり、選考委員会でもその見解が多数を占めたのは当然ことであった。
   主査の上申書は、委員会での議論を正確に述べられていないだけでなく、学問的にも歪曲されているものである。

2 6教授の上申書について
    この上申書は、原口主査からの伝聞に基づいているだけで客観性がなく、しかも真実に基づかない事実を前提として原告らを非難しているものである。このような一方的な伝聞に基づく上申により処分されることなど到底許されるものではない。
   本件は、原告田尻や馬頭が選考委員として応募者の各業績を討議し、全員一致で絞られた採用候補者が適正であると議決し、その結果をもって委員長であった原告田尻が教授会に推薦したにすぎない。そして、学部長であった原告八尾はこれを教授会にはかり、採決に至っただけである。
   科目適合性があると判断したこと、ないしは採決したことにより懲戒解雇に処せられるなどおよそ考えられないことであり、このような処分が大学でなされたということはまさに恐るべきことである(原告八尾の場合は、新学部設置に意見を述べたとか私信を出したことも処分理由となっているが、これとて処分されるようなものではない)。