学園側「答弁書」にみる八尾教授の懲戒事由
3 申請人八尾に関するその他の懲戒処分事由について
(2)懲戒事由について
@ 大学改革事業に対する妨害
申請人八尾は,学部長のひとりとして「大学院開設準備委員会」および「新学部開設準備委員会」に参加し, 大学改革について教学的観点からの意見を述べる立場にあったが,その席において上記委員会の審議事項と
は関係のない,被申請人の経営問題についての独自の意見を繰り返し陳述し,自らの意見が委員会委員の賛 同を得られないとみるや,最高責任者である理事長および大学学長に対して,経営計画の見通しを批判する個
人的意見を述べた書簡多数を送りつけ,学園改革事業の妨害を図った。
特に1999年(平成11年)1月27日付理事長宛書簡(乙 59−2)において,新学部設置にかかわる文部省への 第一次申請手続が終了した後においても「申請を取り下げるように」と迫っている点は,一学部長としての立場
を弁えない越権的行為であると共に,自ら新学部開設準備委員会の委員でありながら,委員会の全体的結論 に基づいてなされた申請手続についてこれを取り下げるよう個人的に理事長に求める極めて無責任かつ専断
的行為であり,これら申請人の行為は,就業規則38条2号に該当する。
A 理事会で決定された新学部(国際文化学部)の設置について,これに伴う学則改正案を平成10年の第6 回経済学部教授会の協議に付し,一部教員からこのような理事会決定事項については投票による採決は適正
でないとの指摘にも拘わらず,投票による採決に持ち込んで学則改正案を否決することによって理事会決定事 項の変更を迫ろうとした(乙69)。
即ち,上記学則の改正とは,上記理事会の決定に基づいて大学に置く学部について,それまでの経済学部と 社会学部の二学部に国際文化学部を加えるだけの極めて形式的変更であったが,旧学則の規程上学則の改
廃は教授会の協議事項とされていた(乙32−1,38条4項1号,乙32−2)ことを利用して,事実上理事会の決定 事項を変更しようとしたものである。
なお上記旧学則の規程は,かつて大学が鹿児島経済大学と称して経済学部のみを置く単科大学であった頃 の規程がそのまま残されていたものであって,その後大学が社会学部(現福祉社会学部),大学院等を設置し
て総合大学となった以上,学則の改廃という全学的事項については全学的管理機関である大学評議会の協議 事項に変更されるべきものであったものであるが,申請人は偶々旧学則の条文がそのまま残されていたことを
奇貨としてこれを経済学教授会の協議に付し,しかも自らも否決する側に参画して上述(1)のM記載のような投 票結果を導いたもので,申請人のかかる行為は就業規則38条2号に該当する。
因みに社会学部教授会においては,一応旧学則の規程に則り,学則の改正案として協議には付されている が,実質的内容は理事会決定事項とのことでその報告と承認という形で終わっている。
B 大学改革事業に対する申請人個人の意見が容れられないとみるや,学長はじめ学内者および学外者に 対し,以下のとおり上司である学長を非難し,あるいはその名誉を傷つける文書を送付した。
i 学長に対して:「学長は経営問題を無視しており,学園理事のひとりとして無責任である」,「学長のやり方は 教授会を無視した非民主的なものである」,「学長は学者としては立派だが,経営者としては失格である」という
ような発言を大学評議会や経済学部教授会で繰り返し,また同一趣旨文書を学長宛執拗に送りつけ(その数 は計41通に上る,乙58−1〜41),特に2000年(平成12年)4月25日付で送付した書簡(乙58−24)は,「先生
は,この機会に御自身の判断で進んで勇退を決意された方がよいのではないかと思われます。一年後には(今 回の大学改革による)赤字が消費収支計算書にはっきり現れてきますし,それ以後の計画によって,この赤字
が破滅的な規模になるだろうということも,知られるようになってこざるを得ないだろうと思われるからです。」と まで記載してある。
ii 評議員に対し:2000年4月17日付文書(乙72)により,学長見解に対する反論という形で,学長に送付した書 簡及び申請人八尾が作成した「新設された国際文化学部の財政収支について」と題する前記と同様趣旨の文
書等を送付した。
iii 学外者(瀬地山敏 関西大学教授,京都大学前学長,同名誉教授),(赤岡功 京都大学副学長,京都大 学大学院教授)に対し:平成2000年9月21日付で前記と同旨の文書(乙75−1)を送付し,特に瀬地山教授に対
しては「現学長に適切にアドバイスしてほしい」と述べた後で「本当は先生御自身が本学の学長になってくださる とありがたい」などと記載している(乙75−2)。
これら申請人八尾の行為は,大学人としてはもとより,一般の市民としても他者の迷惑を顧みることのない非 常識かつ不条理なものであって,就業規則38条2号に該当する外,同36条1号「学園の名誉を重んじ規律を維
持し職員としての品位を保つこと」,同条2号「上司の職務上の指示に忠実に従うこと」に抵触し,又38条3号「学 園の不利益となるおそれのある事項を他に告げること」に該当する。
因みに,申請人八尾は1999(平成11)年1月8日付けの理事長に対する書簡において,「新学部と大学院の設 置によって生ずる年々の赤字は6億円以上であり,学園全体の財政収支も6億円程度の赤字になる」(前掲資
料乙59−1参照)と述べ,また,2000(平成12)年4月 25 日付けの学長に対する書簡においても,「大学院経 済学研究科と国際文化学部だけでも,完成年度までに60億円近い学園資金の持ち出しが生じ,その後もこの2
部門だけで年々6億円程度の赤字が発生する」「一年後には,上記の赤字が消費収支計算書にはっきりと現わ れてきますし,それ以後の諸計画によって,この赤字が破滅的な規模になるだろう」(上掲資料乙76参照)と述
べている。
しかし,平成14年3月19日付け本学園作成の「大学・短期大学部合計平成14年度消費収支試算表」および 「大学平成14年度消費収支試算表」によって明らかなように,平成12年度決算において大学・短期大学部合計
による消費収支差額(黒字)は277,643,000円,大学だけでは504,081,000円であり,平成13年度決算(見込 み)において大学・短期大学部総計による消費収支差額(黒字)見込みは 596,238,000円,大学だけでは
363,978,000円となっている(資料乙77参照)。これによって明らかなように,大学院や新学部の設置,また, 短期大学の改組転換等の改革によって,本学園の財政は赤字に転落してはおらず,むしろ,短期大学の財政
赤字によって発生することが予想された学園経営の危機的状況を回避することができたのであって,申請人八 尾の見通しは全く的はずれのものであったことは明かである。
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