裁判官が学園側懲戒事由を要約した文章

 
  田尻教授に対する学園側の懲戒事由(仮処分判決において要約された文面)

イ 債務者の主張
(ア) 債権者田尻について

本件教員選考委員会の委員長として審査を主宰したが,

@「人事管理論および労使関係論」という担当科目で公募されていたにも拘わらず 同委員会の審 査が行われる中で,原口主査から採用候補者についての科目適合性に疑問が呈せられるや,担 当科目中の「人事管理論」を削除し,「労使関係論」のみを取り出した形で審査を行うこととし,しか も,原口主査の反対にも拘わらず,教授会に対し採用候補者につき,「労使関係論」の教授として 推薦し,

A第1回委員会で候補者に面接のうえ,投票による採決を実施した結果,賛成4,反対1となり,教 員選考規程によれば採用を可とする結論になったため,このような場合,委員長としては,慣行的 にも,また規則に照らしても,速やかに委員会の審議結果を教授会に報告し,教授会の審議に委 ねる手続を採るべきところ,投票結果が全員一致でなかったこと,しかも反対票が主査の票であ り,その理由が科目適合性の点で不適格であるということであったことより,そのままこれを教授会 に報告すれば教授会が紛糾し,採用候補者の採用が危うくなることを恐れ,主査の反対をくつがえ す目的のもと,委員会審議の継続再開にふみきり,

B再審議にふみきった後の委員会運営においても,飽くまで科目不適合性を理由に反対意見を表 明する主査に対し,他の委員らと共に主査に対し「主査を降りるように」迫ったり,「副査の書いた業 績報告書に主査も連名するように」強要したりした。これらの行為は,本件就業規則38条2号に該 当する。

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
  馬頭教授に対する学園側の懲戒事由(仮処分判決において要約された文面)

(イ)債権者馬頭について

本件教員選考委員会の副査として審査を行ったが,

@上記(ア)の債権者田尻の不適切な委員会運営を支持し,特に原口主査に対する辞任や評価書 への連名の強要については,自ら,積極的,主導的に加担し,

A原口主査の意見を無視して,公募された担当科目が「人事管理論および労使関係論」であった にも拘わらず,候補者が「労使関係論」の担当教授に適任であるとする内容の研究業績評価書を 作成した。これらの行為は, 本件就業規則38条2号に該当する(仮に,候補者が「人事管理論」 はもととより「労使関係論」としても不適格であることを承知のうえで上記業績評価報告書を作成し たとすれば, 同条1号にも該当する。 ) 。

 
 

 

 

 

 

 
  八尾教授に対する学園側の懲戒事由(仮処分判決において要約された文面)

(ウ)債権者八尾について

a  本件教授会において,学部長として議長を務めたが, 副査が作成した業績評価書と主査が準 備した業績評価書とが,採用候補者の科目適合性をめぐって真向から対立していることが判明 し, 副査が作成した業績評価書に基づいて「労使関係論」のみで可とする本件教員選考委員会報 告に対し,「業績評価報告書が副査の作成したものであること」 ,「投票後にも委員会が継続され ていること」 ,「助教授から教授ヘの委員の交替が教授会の承認を得ていないこと」 ,「公募科目 が2科目から1科目に変更されていること」等,多<の根本的疑念が指摘されたにも拘わらず,同委 員会報告を是とする方向で議事を運営し,強引に投票に持ち込もうとしたため,主査を含む教員7 名が投票行為の不当性のみならず,この採用人事そのものの不当性を訴えて退席するなど紛糾 する中,投票を強行した。この行為は,本件就業規則38条2号に該当する。

b  @学部長の一人として「大学院開設準備委員会」及び「新学部開設準備委員会に参加し,大学 改革について教学的観点からの意見を述べる立場にあったが,その席上,債務者の経営問題に ついての独自の意見を繰り返し陳述し,自らの意見が委員会委員の賛同を得られないとみるや, 最高責任者である理事長及び学長に対し経営計画の見通しを批判する個人的意見を述べた書簡 を多数送りつけ,A 新学部 (国際文化学部)の設置に伴う学則改正案を教授会の協議に付し,一 部教員からこのような理事会決定事項については投票による採決は適正でないとの指摘があった にも拘わらず,投票による採決に持ち込んで学則改正案を否決することによって理事会決定事項 の変更を迫ろうとし,B上司である学長を非難し,又はその名誉を傷つける発言を大学評議会や 教授会で繰り返し,大学評議員や学外者(瀬地山敏 関西大学教授,赤岡功 京都大学副学長) に対し,同趣旨の書簡を送付した。これらの行為は,本件就業規則38条2号に該当するほか,同 36条1号,同条2号に抵触し,また,同38条3号に該当する。