仮処分裁判 債務者側(学園側)書面
 
田尻 利教授に対する懲戒理由書(乙24−2号証)

 

 

 

 

 
田尻利教授 懲戒理由書

 1999(平成11)年度の「人事管理論および労使関係論」の採用人事に関する「教員選考委員会」(田尻教授、 原口教授、馬頭教授、○○教授、○○助教授の5名で構成。ただし○○助教授は、第4回委員会以降、○○教 授に交代)の委員長であった田尻教授には、委員会運営に関して、また、経済学部教授としての見織に関し て、懲戒対象となるべき次のような事由がある。

 @採用科目について公募書類の記述と異なる審査方法を進めたこと
 本採用人事は「人事管理論および労使関係論」という担当科目名で公募された。しかし、教員選考委員会の 審議のなかで「人事管理論」が削除され、「労使関係論」のみを取り出した形で事査が行われている。このよう な形で採用科目の内容が変更され、しかもそれの決定が選考委員会内だけの審議で行われたことは、本学 (旧鹿児島経済大学;現鹿児島国際大学)の採用人事においてはかつてなかったことである。このような変更 を 行うことは、公募形式の採用人事では「社会に対する不公平」という結果を引き起こすものであり、あっては なら ないことである。なぜなら、そのような変更は、採用科目を見て公募に応じた者に対しても、また、それを見 て応 募を締めた者に対しても、不公平な扱いになることは明らかであり、対外的に無責任というそしりを免れな いか らである。田尻氏は、学内の昇格人事でとられていた特例的扱い(担当科目を一科目に限定すること)を 採用 人事でも踏襲できるものと錯誤して、その観点から委員会を運営したのであるが、その結果、最も適当な 応募 者が排され、適当でない応募者が採用候補者となった可能性が非常に高い。これは、大学の利益を損な うもの であり、また、教授会に対する責任を全うしえない重大な過失雲ある。

 A不適切な委員会運営
 教員選考委員会においては、第3回委員会までに採用候補者を1名にしぼり、第4回委員会で候補者との面 接 および投票による採決を実施した。採決結果は「賛成4、反対1」であり、本学教員選考規程によれば「採用 可」 とする結論となった。しかし、投票の後で、反対1が主査の票だったことが主査自身から表明され、その理 由に ついて「科目適合性の点で不適格である」という説明がなされた。
 教員選考委員会で投票による結論が出された場合、慣行的にも規則に照らしても、委員長は速やかにその 審議結果を教授会に報告し、教授会の審議にゆだねなければならない。
しかるに、田尻氏は、投票結果が全員一致でなかったことにより教授会が紛糾することを恐れ、また、主査の 反対をくつがえすことができるとの期待をもって、審査の再開にふみきった。すなわち、ひとりに絞った採用候 補 者の論文をさらに追加して読み、再審査することによって統一的な見解に達するように企図し、第8回委員会 ま で審故を延長した。このような議事運営が、「一事不再議」のルールに違反するものとして、また、教授会に 対し て委員会議事の実情を素直に伝えようとしない専断的行為として、糾弾されなければならない。
 しかも、再審査にふみきった後の議事運営において、あくまでも反対の意志を表明する主査に対して、賛成 者 が連合して、主査の原口氏に「主査を降りるように」と迫ったり、「副査の書いた業績審査報告書に連名する よう に」と強要したりしたことは、大学に籍を置く有織者にふさわしくない、礼を欠いた不穏当きわまる行為であ っ た、と言わざるを得ない。

 B経済学部教授としての見識の欠落
 大学設置審議会の考え方によれば、「経営学科」設立に関する条件として経営学原理、経営史、経営管理 論、会計学など六つの学科目を置くことになっているが、そのひとつ「経営管理論」に属する授業科目として必 置6科目、準必置3科目が挙げられている。そして、その必置6科目のひとつとして「労務管理論(人事管理論、 モティベーション論)」が含まれている。これに対して、「労使関係論」という授業科目は、必置科目でも準必置 科 目でもなく、経営学科設立条件には直接関係がない。
 本採用人事は、「人事管理論および労使関係論」の担当者を求めたものであるが、教員選考委員会では、 主 査を除く委員多数の合意をもって、経営学科必置科目である「人事管理論」を削除し、逆に、必置でも準必 置で もない「労使関係論」で採用しようとした。このようなことは、基本講座が充実している学部・学科ならともか く、経 営学科を充実しなければならない本学の現状では到底考えられない。田尻委員長が、経営管理論の専 門家で ある原口主査から「労使関係論」で採用することの不適切さを示唆されたにもかかわらず、あくまでも 「労使関 係論」のみでの採用人事を強行しようとしたことは、両氏に大学の学科編成上の基本的能力と視点が 欠けてお り、経済学部教授としての資質と適格性がそなわっていないことを示すものである。