仮処分裁判 債務者側(学園側)書面
 
八尾信光教授に対する懲戒理由書(乙24−1号証)

 

 

 

 

 
八尾信光教授 懲戒理由書

 本学(旧鹿児島経済大学;現鹿児島国際大学)の前経済学部長であった八尾氏には、学部長としての在職期間中に、学園改革事業および大学運営を妨害するなど、懲戒対象となるべき次のような言動があった。

 @大学改革事業に対する妨害
 八尾氏は学部長のひとりとして「大学院開設準備委員会」および「新学部開設準備委員会」に参列し、大学改革について意見を述べることができる立場にあったが、その席で自らの意見が多数の賛同を得られないとみるや、最高責任者である理事長および大学学長に対して、経営計画の見通しを批判する個人的意見を述べた書 簡多数を送りつけ、学園改革事業を妨害し続けた。
 特に1999年1月27日付けの理事長あての書簡において、新学部設置にかかわる文部省への第一次申請が すでに済んだ後に、「申請を取り下げるように」と迫っている点は、自らの立場をわきまえない越権行為であっ たと認められる。新学部開設準備委員会の一メンバーでありながら、委員会の全体的結論に基づく申請作業に 関して、それを中止するように理事長に個人的に訴えるという言動は、委員として無責任であるとともに、学 園に属する一職員としての権限を逸脱した行為である。この所行は、「職務上の権限をこえ、または権利を濫用して専断的な行為をすること」を禁じた、「津曲学園就業規則第38粂2号」に抵触する
 また、1999年3月8日に鹿児島大学で開催されたシンポジウム「21世紀の大学像を探る」に「鹿児島経済大学 経済学部長」として参加し、講師のひとりとして発言した八尾氏は、「私の勤務校である経済大学では、先が約束されていない新設や増設のために巨額の投資をしている」と述べて、学外者多数の前で学園事業計画を強 く批判している。このような発言は、「学園の不利益となるおそれのある事項を他に告げること」を禁じた「津曲学圃就業規則第38条3号」に抵触することが明らかである。

 A学長に対する名誉毀損
 八尾氏は大学改革事業について意見の異なる学長に対して、自分の意見を押し付けようとする言動を繰り 返 したが、それが容れられないとみるや、学内者および学外者に対して学長の名誉を毀損する行為をおこなった。すなわち、「学長は経営問題を無視しており、学園理事のひとりとして無責任である」、「学長のやり方は教授会を無視した非民主的なものである」、「学長は学者としては立派だが、経営者としては失格である」という よ うな発言を、大学評議会や経済学部教授会などの公の席で繰り返し、また、同一趣旨の文事を学長に執拗に送りつづけることによって心理的圧迫を加えつづけた。
 特に2000年9月21日付けで学長の知己である他大学の教授に対して送付した書簡において、「学長の計画は放漫で無責任なものであるから、適切にアドバイスしてほしい」と述べた後で、「本当は先生御自身が本学の学長になってくださるとありがたい」と書いている。
 「現学長の退任を願っている」というようなことを学外者に手紙で伝えるのは、学長の名誉を毀損する重大な背信行為である。さらに、2000年4月25日付けで学長に送付した書簡では、八尾氏は直接学長自身に対して辞 任を迫っている。すなわち、「先生は、この機会に御自身の判断で進んで勇退を決意された方がよいのではないかと思われます。一年後には、(今回の大学改革による)赤字が消費収支計算書にはっきりと現われてきますし、それ以後の計画によって、この赤字が破滅的な規模になるだろうということも、知られるようになってこざ るを得ないだろうと思われるからです。先生がそのような泥沼の中で、ポロボロになっていかれるお姿を小生 は 見たくありません。今の段階でもっと若い方に後の経営を託される方が賢明ではないかと思っております」と書いている。上司である学長に辞任を迫るということは、自らの職分を逸脱し、「私の意見を容れないのであれ ば、退職せよ」と言うのに等しい言動であり、学長の名誉を毀損する行為であるのみならず、強圧的に自らの願 望を押し付けるストーカー的行為でもある。
 以上の所行は、「規律を維持し職員としての品位を保つこと」及び「上司の職務上の指示に忠実に従うこと」を定めた、「津曲学圃就業規則第36条1号及び2号」に抵触する。

 B不適切な教授会運営
1999(平成11)年度の「人事管理論および労使関係論」の採用人事問題で紛糾した教授会において、「労使関係論のみで可」とする教員選考委員会報告に対して反対する教員多数があるなかで、八尾氏が学部長として委員会報告を是とする方向で強引に議事を運営したことは、過去の採用人事に関する事実誤認に基づいて正論 を封じる、という暴挙を行ったものである。
 八尾氏は2000年9月13日付けの学長への書簡でこの間題に触れ、「本学でも教員の採用や昇格について、 一教員に二つ以上の科目を担当させることを求めてはおりません。例えば、憲法・行政法の教員採用の際に は、憲法に関する業績によって、その助教授採用が認められています」と述べているが、この採用人事は「憲 法」の担当科目で公募して、採用を決定した後に行政法の担当をも依頼した、というのが正しい事実経過であ る。公募採用書類に書かれた担当科目内容が審査の過程で変更されるようなことがあっては、対外的に無責 任のそしりを免れないが故に、学内の昇格人事ならばともかく、採用人事ではあってはならないことであり、本 学でもそのような事例は過去一度もなかった。しかるに、八尾氏は、そのような事実誤認に基づく重大な瑕疵 を 含む教員選考委員会報告に対して、「採決をすべきではない」という一部教員の意見があり、また、研究業 績審 査に最も深くかかわった主査を含めて7名にものぼる教員が採決に参加するのを拒否して退席したにもか かわ らず、無理やり採決に持ち込んだ。これは、八尾氏が学部長としての権限を濫用したものであり、不適切 な議 事運営であった、と言わざるを得ない。
 この所行は、「権利を濫用して専断的な行為をすること」を禁じた、「津曲学園就業規則第38条2号」に抵触す る。